02 君に優しくない世界なんて要らないよ
「君たちは、本当にジュリウスとロミオなの?」
私は彼らに再度問いかけた。彼らは、困ったように顔を見合わせた。
「それが、俺たちの名前か」
ジュリウスに似た彼が、そう言った。それを聞いた私は、思わず目を見開いた。
ジュリウスとロミオではないのなら、彼らは一体何者なのか。
そういえば、極東では、神機の精神体が神機使い(ゴッドイーター)の姿で現れたことがあったという、おとぎ話のようなものを聞いたことがある。しかしながら、その話に出てくる精神体は、持ち主に似ても似つかなかったらしい。
じゃあ、彼らは何者なのか。いつぞやの、ギルの台詞を思い出す。彼は、「神機兵に次ぐ戦闘マシーン」について話していた。私の目の前にいる彼らと繋がりはあるのだろうか。まさか。まさか。
「……君たちは、何、なの?」
誰、ではなく、私は、「何」と聞いた。仕方無いなあ、と言いたげに、ロミオに似たそれは、話し始めた。
プロジェクト名「レミニセント」。
ジュリウスとロミオに似た彼らは、それによって産み出された。
第一部隊の隊長が藤木コウタ隊長ではなく、リーダーこと、名前も分からぬ前隊長だった頃、似たようなプロジェクトが行われていたそうだ。その頃のプロジェクト名は、「ノスタルジア」。とあるミッション中に帰らぬ人となったエリック・デア=フォーゲルヴァイデに似た人工知能戦闘マシーンを擬似的に造り上げたとされる。
それは、ごく一部にしか公開されていない情報だった。彼の妹のエリナにさえ、兄の戦闘記録やプライベート、兄の全てをコピーしたそれの話は聞かされていなかった。
レミニセント、ノスタルジア、追憶。
本人たちが言うには、ジュリウス・ヴィスコンティ、ロミオ・レオーニに似た彼らは、エリックのそれを基に、更に改良を重ねて造られたものらしい。しかしながら、モデルであるジュリウス、ロミオの記憶は、そのまま移されることは無かった。それは、不可能だったから、だそうだ。
非人道的な行為。ましてや、それをブラッドが――かつての彼らの仲間が属する極東に送ってくるなんて、フェンリル本部は頭がおかしい。
今尚(なお)闘っているジュリウス、眠りについたロミオ、そして彼らを基に造られた者。全てを蔑(ないがし)ろにしているとしか、私には思えなかった。
私たちは神機使いだ。しかしながら、人間だ。いくら人間とはかけ離れた戦闘力、身体能力を持っているとは言え、心は捨てていない。私たちは道具じゃない。
世界は、私の大切なものをどれだけ奪うのか。大切なものをどれだけ利用すれば気が済むのか。
「大丈夫か?」
凄い顔してるぞ、と、ロミオに似た彼が私に声をかける。
大丈夫なわけがない。大丈夫なわけが、ないのだ。
帰投用のヘリは、真っ直ぐに、本拠地へと向かっていた。
title)レイラの初恋