しかし黙ってはおけない。一人で、いや、一人と一振りで抱えておくには大きすぎる感情をどこに吐き出せばいいというのだろう。抑圧された感情はいつか爆発して取り返しのつかないことになる。その前に何らかの手を打たねばならないというのに、怖さが先行してどうにも動けなくなってしまう。
嘘を吐くコツは、本当のことを混ぜて話すこと。そうすれば、どこからが本当でどこからが嘘なのかわからなくなってしまうからだ。
フィクションは、私と鶴の箱庭を作るのにもってこいのツールだった。空想という名の綺麗な嘘が、私たちを守ってくれる。抑圧された感情を少しずつ吐き出しながら、私と鶴はお互いを守ることができる。
――「気付いてくれる奴だけが気付いてくれればいい」
鶴はしばしば、そう言っていた。結局のところ、私たちはこの抱えきれない感情を吐き出したくて仕方ない。どうやら私たちは、どこかの誰かに私たちの話を聞いてほしいみたいだ。
「……ね? どっからが私の本当で、どっからが鶴の嘘か、分かんなくなっちゃったでしょ? それに、もしかしたら鶴じゃなくて私が嘘を吐いてるのかもしれないし、二人とも本当のことを話してるかもしれない。どっちも嘘かもしれない。そんなの、分かんないよね。それでいいの。だって、自分の一番痛いところを曝け出してしまったら、死んでしまうから」