すぐに忘れるんだ
「もう覚えていないのか」
鶴は寂しそうに言った。ああ、また私は忘れているんだ。
夢の世界は記憶の整理を行う場所。寝ているときに夢を見るあの感覚と同じ場所なのだと、鶴は言っていた。だから私はあまり覚えていられない。人間は、見た夢の内容をほとんど覚えていないのだ。
「……俺は全部覚えているのになあ」
彼は、私の手を握りながら言った。彼のそれは、私の存在を確かめるような優しい手付きで、私の手や指を弄んでいる。まるで、行かないでくれと彼が言っているようだった。
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