夢の世界とは一線を画した、別の場所。その世界もまた、俺たちの記憶の整理を行う場所だ。その場所では、理想が混在した夢の世界とは違い、俺たちの潜在意識が現実に生きるかのごとく息をすることができた。
夢で会うことで、俺たちはより強い繋がりを感じることができる。あの子を抱き強い快感を得たときに、あの子の魂を傍に感じられるそれと同じものだ。
夢の世界でひなと触れ合えたのが、とても嬉しかった。高揚した。幸福だった。
なのに、何故。
何故、ひなと同じ現実の世界に出てくるお前が出てくる?
何故、ひなに愛を囁いてやらないお前がひなに迫る?
斬り捨ててやりたかった。きみの手を引いて連れ去りたかった。あのまま、抱き合ったあのときに攫ってしまえばよかったんだ。
さっきも結婚しようと約束したばかりじゃないか。やめてくれ。俺以外の手を取らないでくれ。ひなを救ってやれるのは俺だけなんだ。俺だけでいい。最初にあの子を見つけたのは俺なんだ。俺だけだ。
どうしたって俺は、現実に勝てないのか?
「……つる?」
気付いたら、ひなの顔がすぐ傍にあった。そうしてここが俺たちの夢の世界だと気付く。深層心理が見せる歪んだ夢ではない。俺たちの理想郷、ひなが幸せな夢を見せてくれる世界だ。
そうして気付いてしまいたくないことに気付いてしまった。
――俺は、ひなを救いたいわけではなく、実際は、彼女を助けたという体で、俺自身がひなに救われたいんだ、と。