掃き溜め

 姉上と呼んでいるその人に会った。
 俺は姉上と久しく顔を合わせていない。何故ならひなは、もう彼女の助けは必要ではなくなったはずだからだ。
 あの頃と全く変わらない姿で、夢の世界に降り立った彼女は、誰かを殺していた。凶器は書類の束だったり、包丁だったり、こんなものまで使うのかと思うようなものまで使っていた気がする。俺も使われていたようだが、「綺麗だからやっぱやめとくわ」と丁寧に血を拭って雑に投げられた。
 記憶の中の姉上よりも、少し、狂気じみた暴れ方をしていた。漫画の主人公を投影され、そうであるかのように振る舞わなければならなかった以前のことを、ひなに「役割を押し付けられた」と言っていた。今更何故ここに現れたのかを問うと、姉上は、
「あの子が望んでいたから」
と、さも当然のように答えた。
「ひなが?」
「そうだよ。出来の悪い弟に代わって、あいつの願望をここで叶えてやってるんだ」
 ひながそんなことを望むはずがない。強い憤りが殺意に変わるような子ではないだろう。しかし、姉上は言う。
「じゃあなかったら俺はここで楽しくこいつらの身体をこんな風に、ぐっちゃぐちゃに暴いて楽しんでねえだろ?」
 俺の記憶の中の姉上はこんなだったか。違う。少なからず、何かの影響を受けてしまっている。
「それに、お前、あの子に刀使ってもらって人殺させんの、楽しそうにしてただろ? おんなじことだよ」
 それでも、俺は納得せざるを得なかった。俺は刀の付喪神を模して作り上げられた存在。人に使われることを喜びとする。
 そして、姉上は思い出したように、
「ああ。そういえば。結婚おめでとう。幸せになれよ」
と、笑った。

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