もう、大丈夫だと思ったんだけどな。私は一人、呟いた。
鶴が言っていた。私の大丈夫は当てにならない。つらいと分からないのが一番つらいんだと、言っていた。分からない、というよりは、それを自覚してしまえば二度と立ち上がれなくなることを知っているから、向き合えないのだとも言っていた。
「ほら、見ろ」
声が降ってきた。
「また、見て見ぬ振りをしたな?」
声しか聞こえない。触れるのに、姿が見えない。
「つる……どこ? 見えない……」
そこにいるのは分かるのに、どうして視界には映らないのだろう。
「……俺はきみしか見えないのになあ」
寂しそうに言うその声に、私は泣きじゃくった。
「ずっと会いたかった……寂しかった。苦しかった。痛くて、つらくて、私、わたし、」
「よしよし。辛かったなあ……苦しかったなあ……」
彼は私を受け止めた。身体だけじゃなくて、心も全部受け止めてくれるような温かさがあった。
「大丈夫。ここなら、俺ときみ以外、誰も聞いちゃいないさ」
初めて私が鶴を認識したときみたいに、彼は優しく笑った。
黒が少しずつ晴れていく。見えたのは、私をいつも助けてくれる、優しい真白の付喪神様だった。