06

髪を梳いて足元に紙を出現させて靴に固定する。小さな紙面の破片が靴にピタリとくっついた。

「これで地面との摩擦を調整して…っと」

理論なんて説明の難しいものは私には分からない。感覚での摩擦の微妙な調節。小さく気合いを入れて、スタートラインに立って、ピストルの合図とともに走りきった。

「早くなってる…!」

除籍処分の恐怖はあれど、記録が良くなればやっぱり嬉しい気持ちはある。といっても、めちゃくちゃ早くなった訳では無いけど。

次々種目をこなし、最後はボール投げ。ボールに発動させた式紙を巻き付け、投げ込んだ。途中で落ちるはずのボールは、方向を変え空へと浮かびゆっくりゆっくり飛んでいく。時間はかかったが、しばらくして相澤先生がボソリと言った。

「…5キロ。遅い…!」

「す、すみません…!」

周りの歓声が遠くに聞こえる。距離が遠くなればなるほど、式紙のコントロールは難しい。ただ出せばいい紙吹雪とは訳が違う。慎重にコントロールしたから、異常に時間がかかったのだろう。そして…、

「結構、きつい…」

体力が。5kmなんて飛ばしたことないし、周りは見えないし、何より式紙から感じる情報量が多すぎる。混乱して頭痛がしてきた。頭を抱えていると、ふと頭痛が楽になった…というか、消えた。そして唐突に目が合ったのは相澤先生だ。

「…ん?」

足元の紙もいつの間にか消えている。混乱による頭痛もすっかり無くなって。訳が分からなくて固まっていると、次に呼ばれたのは緑谷くんだった。その顔つきからして、かなり切羽詰まっているのだけは伝わってくる。

…大丈夫かななんて他人事のように思う。

「緑谷くんは、このままだとマズいぞ…?」

「ったりめーだ!無個性のザコだぞ!」

「…無個性?緑谷くんってそうなの?すごいね」

飯田くんに食ってかかった爆豪くん。爆豪くんは、実技試験の時に見かけた爆発の個性の人だと後で思い出して、思わず口を挟んだらやっぱりあぁ!?と怒鳴られた。いや、めっちゃ、怖い。食ってかかりそうな勢いでそんなに食いつかなくても。それに後ずさって、飯田くんの影に隠れて続けて呟いた。

「だ、だって、無個性で実技通ったんなら、すごいじゃん」

「なぜ、君は俺の後ろに隠れているんだ?…というか、彼は無個性ではないぞ!」

「は?」

いや、だから、怖いからですって。飯田くんが話しながら横にズレようとするもんだから、一緒に横に移動していたけれど、途中で諦めた。何故か爆豪くんは、緑谷くんを無個性だと思っていて、飯田くんは、個性があると言っている…?

どっちが本当なの?

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