08

「ちなみに、除籍は嘘な。…君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

「はーー!!!!?」

という、相澤先生の衝撃的発言により個性把握テストは幕を閉じた。

「指、大丈夫?」

「あ、うん…」

「ちょっとごめん、緑谷くん」

「えっ、ええええ、な何?」

「ごめんね、ちょっと指貸して」

お茶子ちゃんと話をしていたところ悪いけれど、間に入らせてもらった。ちょっとどもりすぎて、目が泳いでる緑谷くんはおずおずといった感じに左手を差し出す。ぐいと髪をすいて、そっちじゃないよと言っておく。怪我をした方の指だ。ぐるりと紙が彼の指を一周する。

「はい、できた。ごめんね、紙だけど、テーピングみたいな感じにしといたよ」

リカバリーガールのところに行くだろうけれども、それまでは固定をしていた方がいいと思ったから。突き指にしろ、骨折にしろ。

「あ、ありがとう!」

「いえいえ」

なんかすごい勢いで緑谷くんにノートにメモられてるけど、気にしないでおこう。



______


逆方向の梅雨ちゃんと別れ、手を振った。

「ねーねー、一緒に帰ろ!」

「えっと…」

桃色の肌の女の子。名前は確か…。うーんと唸っていた私に、芦戸三奈だよーと彼女が明るく名乗ってくれた。帰り道を聞くと
同じ方向だった。

「今日はほんっと、ハラハラしたよね!」

「確かに…。明日からまたドキドキだよ。緊張する…」

「緊張もするけど、あたしは楽しみ!」

三奈ちゃんの声は終始明るくて、緊張はすぐに無くなって私もつられて笑った。三奈ちゃん、友達多そう。そんな気がする。外に出るとふわりと風が吹いて、髪がなびいて紙吹雪が舞った。わっと手で抑えたけど、時すでに遅しで小さくため息をついて肩についた紙吹雪を払う。

「というか、ナマエのそれ、なんていう個性なの?」

「紙漉きっていって…、髪をとかすことで紙が発生する個性かな、簡単に言うと。紙吹雪みたいなのとかこういうやつ」

紙吹雪を出してみせると、キラキラした目で三奈ちゃんは歓声をあげる。

「なんというか、パーティに便利そう!」

「うーん…それ、あんまり嬉しくないなぁ」

「そう?」

苦笑いで言うと、便利だと思うけどなーと三奈ちゃんは首を傾げていた。

『っていうか、ナマエさんのそれってヒーロー向きじゃないよね。パーティーには便利かもだけど』

笑って言われた何気ない同級生の言葉。相手に悪気があったのか、なかったのか今はもう分からない。冗談のつもりで言ったのかも。恥ずかしいような、悔しそうなそんな気持ちが蘇る。その想像を振り払うように勢いよく首を振っていたら、三奈ちゃんに心配されてしまった。パーティ要員ってよく馬鹿にされてたからと正直に白状すれば、彼女は納得したよう。

「でも、今は違うじゃん!」

一瞬呆気に取られ、そっかと納得する。傷ついたことは消えないけれど、今はヒーローになろうとしているわけで。道はきっと遠いけれど。

そうだね。ここからだ。

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