諸刃の剣

ラプラスラブラブショーというクソダサい名前のイベントが開催されるというので、記録のためにハノハノリゾートを訪れた私は、この時点で薄々場違い感を覚えていた。
何でもつがいのラプラス達がラブラブな芸を見せるイベントのようで、こんなにも大量のラプラスが、しかも飼育下で見られるのはアローラだけという事から、記録に駆り出されているわけなのだが、どうも様子がおかしいと先程から疑惑の正体を探っている。

なんだこの異様な雰囲気?私みたいな人間が最も来てはならない、そういう何かがここにはある気がするんですけど…首を傾げながら周囲を見渡した時、ちょうど誰かが私の肩を叩いた。
こんなところに来るような知り合いはいなかったはず…と思いつつ振り返る。その瞬間、この場に来ている人間達の特徴に気が付いた。
男と女、男と女、男と男、男と女、男と女、女と女、山男のナツミと男、男と女…いずれも距離感が近く、親密そうだ。つまり。
カップルしかいねぇ!

「そして何故かレッド!」

このカップルだらけのリゾートで、肩を叩いてきたのはレッドだった。アローラでの強烈なイメチェンというか成長に五度見したプレイヤーは私だけではなかった事でしょう。バトルツリーの近くで会った時は本当にたまげた。むしろ今即座にレッドだとわかった私の知能を褒めてほしいね。
どうせこいつ喋らないからな、とアローラ流のジェスチャーで挨拶をし、レッドの周囲を確認する。

「…一人か?」

恐る恐る尋ねたら頷かれる。そうだろうよ。幼馴染の男と南国に来るような奴がアローラのビーチで女引っ掛けるとは思えないからな。

「なんでこんなところに?ラプラス見に来たの?」

今回は無言キャラで行くらしいのでいちいち質問をしなくてはならないのがネックだが、そんな事よりこの状況の方が色々と気まずい。
またも頷いたレッドに、私も記録に来たんだよと返す。一人で。そう!ここに!一人でな!
別にカップル限定イベントとか書いてなかった事ない?とホームページを確認する。とはいえラプラスラブラブショーだから…この名称で単独で来るのは相当に勇気いるだろうと思う…お前の事だぞレッド。そして大きなブーメランを受けるレイコであった。生き恥。
そういやレッドもラプラス持ってたしアローラの生態に興味あるのかもしれないな…せっかくだから一緒に見ようよ、と何気なく誘い、ぼっち参戦をカムフラージュしたものの、これはこれで別の問題が発生してしまう事に気付く。

カップルに擬態するのはいい、ただ…。
グリーンに知られたら、どうする?
いや関係ねぇよ!とまともな自分が顔を出すが、この気まずさは何だろう…と胸に手を当てて考えた。
別にグリーンとは何もない、いや何もなくはないが私には何もない、何もないけどなんか…アローラの海でカップル大集合のイベントに彼の幼馴染と参加する、グリーンの思いを知りながら…というこの、言い知れぬ背徳。なんか、なんか罪深い気がする!小悪魔キャラでもないのに!
今さら?って感じがしなくもないけど私は重くのしかかる気まずさに目を覆った。レッドの事だ、今日偶然レイコと会っちゃってカップルの振りさせられて参ったよ〜とかのん気に話しかねない。いやレッドのキャラ知らんけど。本当のお前をいまだに知らない事も問題だと思うが、今日の事を知ったグリーンにごちゃごちゃ言われるのもまた困る…。

苦肉の策として、私はある事を決意した。
口止めである。

「レッド氏…今日のこと、グリーンには黙っててくんない?」
「は?」

喋った。キャラがブレる瞬間を見た。
どういう事ですか?と言いたげなレッドの視線に、そこまできたら喋れよと思いながらも、いやなんか誤解されたら困るし?深い意味じゃなくてさ?と言い訳みたいに述べていく。確かにどうして私がグリーンにこんなに気を遣わなきゃならないのかっていう気持ちはありますよ、ありますけど何か…複雑なんだよね!人間だもの!
まぁラプラス見ようよ!と誤魔化し、私は口笛を吹きながらカメラを回した。余計な一言のせいで、逆に二人のマサラ人が南国を修羅場に変えてしまう事を、レイコは知る由もないのであった。