階段を下りるのが億劫すぎる私は、もうちょっと休んでから行こうかな…などと悠長な事を考えていた矢先、お前に休む暇はないと言わんばかりに足音が響いてきたため、すかさずスタンガンを構えるはめになってしまった。安らぎの時など永遠に訪れないのではないかと絶望に震えるばかりだ。

もう…今度は何!誰!?敵?味方?幻聴?
幻聴だったらNを電波呼ばわりできなくなるので、どうか人間であってくれ…と祈りを捧げる。さすがにそこまで病気が進行していない私は、願いが通じ、ちゃんと人間と遭遇できた事に喜びを噛みしめるのだった。

「レイコさん…!いま飛び去ったのって…」

頂上でうろつく私に合流してきたのは、チェレンとハチクであった。悟空よりも遅い二人に、ナッパもベジータも私一人でやっちまったよ、という心境である。
遅いわマジで。どこで道草食ってたんだよ。道中の下っ端も幹部も私が蹴散らしてるんだから真っ直ぐ走ってくれば早いはずでしょ!その肉体美は飾りかハチク!?筋肉を信じろよ!アンディとフランクも泣いてる!
アブってる私は、空を見上げる二人に頷き、ご覧の通りですよと肩をすくめてみる。
チェレンの口振りから察するに、彼らも電波とバリバリダーの姿を見たのだろう。私もここに着いた時にはバリバリし終わったあとだったんでね、どうやら何もかもが遅かったみたいだな。最初から詰み。マジで伝説のポケモンを自慢するためだけに私を呼んだN氏への怒りが、いよいよ頂点に達したと言っても過言ではないわ。

そりゃあ記録に貢献してくれた事は有り難いと思ってるよ。でもここじゃなくても良くね?私がポケセンのベッドでごろごろしてる時に窓を叩いて、どうレイコ?って見せてくれたらそれで良かったじゃん。何故登らせたのか。雰囲気作りかな?死んでいただこう。

「なんたること!」

殺意の波動を放っていれば、突然ハチクは叫んだ。のん気に構える私とは裏腹に、イッシュのジムリーダーは事の重大さをより深く理解しているようで、思わず肩を強張らせてしまう。
び、びっくりした…いきなり大声を出さないでくれ。ただでさえ常人はあんたのファッションにびびってんだから…。しつこくファッションチェックを繰り返す私の横で、チェレンも神妙な面持ちをしていたので、どうやら相当まずい状況らしい。腕力で全てを解決してきた身としては、そんなにか?と事態の緊迫感が二人よりは薄かった。どこまで脳筋なのか。

「…何故だ?今のってNですよね?」
「そうだな」
「どうして伝説のポケモンと一緒にいたんだ?まさか彼は…本当に英雄だというのか…!?」

疎外感を覚えながら二人を見て、私は段々と焦りを覚え始める。
そんな…そんなになの?英雄になるってそんなにやばいこと?それなら尚のこと私には無理じゃね?無茶振りをしてきたN野郎をやはり憎むしかなく、私は唇を噛んだ。
確かに話を聞く限り、イッシュの英雄伝説はかなり昔の出来事だと予想できる。それだけの間、誰も伝説のドラゴンポケモンを復活させた事がないのだとしたら、まぁとんでもない事なのかもしんないな。とんでもねぇよ。とんでもねぇな。そんなとんでもないこと、私にさせる気なの?

今回ばかりはスタンガンを打ち込んでおくのが正解だったかもしれない…と本気で思い、私は項垂れた。
やべぇな…いややべぇ事だとは思っていたが…こんなにやばいなんて思わなかったんだって。それを何か安請け合いしちゃってさぁ!請けてないけど!ほとんど強制イベントみたいなもんじゃん!
こんな状態でも入れる保険があるなら教えていただきたい私であったが、残念ながらチェレンの言葉で、私は英雄面接を蹴るわけにはいかなくなってしまう。

「それに、聞こえたけど…レイコさんに伝説のポケモンを探せって!?」

聞いてんじゃねーよ!引き返せなくなっただろうが!
この地獄耳眼鏡め!と私は心の中でチェレンを小突いた。ていうか聞いてる暇あったら駆けつけてくれんか?何をハチクと揃って待機してんだよ!走れ!風のように走るんだよ!
悠長に聞き耳を立てていた連中に舌打ちし、退路を断たれた苦しみで、実家に帰りたさがピークに達してしまう。
何で聞いてるんだよぉ〜チェレンが聞いてたらもう引き返せないよ〜。
体裁を守らずにはいられない私は、チェレンの手前、全てを投げ出して故郷に帰るという真似ができず、心の弱さを悲しく思う。
レイコさんならきっと英雄になるために力を尽くすんだろうな、人とポケモンの絆を守るべく懸命に戦うに違いない、だってそれが…ポケモントレーナーなのだから…的な彼の期待を、私は裏切れない…!何故なら優しくされたいから…!

フキヨセでのトラウマが、最終的に私を奮い立たせた。
やるしかねぇ。チェレンにあんな冷ややかな目で見られるくらいなら、英雄になった方がずっとマシだ。例えなれなくても、それは…もう…物理だ。どちらにしてもNは倒す。私だってもちろんポケモンの解放には反対だからな。そりゃあ…やれる事があるならやりたいとは思うけど。
でも…英雄なんてそんな仰々しいもの…私がなれるんだろうか。Nは信じてるみたいだが、私にはそんな熱い思いもないし、正義感も皆無、階段を下りるのすら面倒臭がるキングオブニートだが…それでも私にレシラムを探せと?どうかしてるぜ。電波の考える事はわからんよ。
それでもやるしかない。半分はヤケだけど、でもやっぱポケモンと人が何かを成し遂げたというたくさんの真実を、私は知ってるわけだからな。今回だってきっと何とかなるよ。Nの奴が偉そうに解放宣言したところで、切り離せないものってあると思うし。
いやでもなぁ〜…と楽観と悲観の間を彷徨う私とチェレンに、ハチクは大人の貫禄で静かに悟すのであった。

「落ち着け、まずは戻るぞ。いま大事なのは起きた事を解明するより、これから何をするかだ」

冷静に正論をブチかまされ、私は素直に頷いた。年貢の納め時というやつだ。ハチクさんに戻るぞと言われてしまっては、この長い階段も下りていくしかない。レシラムを探すより余程憂鬱な帰路を、我々は黙って歩くのであった。


「たまげたな…伝説のドラゴンポケモンが現代によみがえるとは…」

半泣きで塔から脱出した私は、アララギパパの真剣な表情を見る事もできず、ただ膝に手をついて息を整えている。
しんど。階段って上がるのも下りるのもしんどいの本当勘弁してほしいよな。もう私の膝は死んだよ。ご臨終。立ってるのもつらいんだが座らせてもらっていいか?
ヤンキー座りで育ちの悪さを知らしめるわけにもいかないので、元気な少年と壮年を見つめながら、イッシュ人ってマサラ人じみたところあるのかな?とその底知れぬ体力に恐怖する他ない。なんで呼吸一つ乱れてないんだよ。鬼殺隊なの?
動悸、息切れが激しい私に代わり、塔の頂上で起きた出来事を、ハチクさんがアララギパパに説明してくれた。わりと全部知られていたので、私とNの会話は丸聞こえだったらしい。防音にしとけよ古代の設計士。チェレンに聞かれたらまずい会話をしてなかったからよかったものの、あんな歩く公害の言葉を健全な青少年の耳に入れないでちょうだい。おかげで英雄化も待ったなし状態になってしまったため、私の恨みは莫大だった。

事情を聞いたアララギパパも、偉大なポケモン博士の一人である。やはり状況をあまり良く思っていないらしく、いつになく真面目な態度で唸っていた。

「Nって男…プラズマ団のボスが、伝説のポケモンを復活させたようなんです。しかもレイコさんにもう一匹のポケモンを探せと言って飛び去った…」
「ていうかあんなのが二匹もいるのかよ…やべーな」
「その通り!」

人を階段から落とそうとするポケモンが二体もいる事に絶望していると、どこからともなく大音量が響いてきて、既視感に私は一瞬眩暈を起こした。重要な局面でいきなり発せられるこの大声は、もしかしなくてもあの男しかおらず、私は無意識に上を見ていた。

出たな、妖怪卵押し付けジジイ。今度はどこから飛び降りてきやがるんだ。
前回崖からジャンプして無傷、という超人ぶりを発揮した相手を探し、まさかリュウラセンの塔から…?と息を飲んでいると、アララギパパは私の見る方とは反対に手を振った。

「アデクではないか!久しいな!」

振り返ると、想像通りアデクがそこにいて、博士とチャンピオンが顔見知りだった事よりも、ジジイが普通に歩いてきた事の方が私には衝撃だった。

いやもっと驚きをくれよ!無駄に身構えちまったじゃねーか!
登場方法に統一感のないアデクに振り回されながら、ある意味では驚いたので静かに唸っておく。
何なんだこの爺さんは…いやむしろ私が何をやっているんだ…アデクがどんな登場をしようがどうでもいいじゃないか…。すっかり精神を蝕まれた私は、ストレスから気が狂い、人のファッションや登場スタイルにケチをつける憐れなクレーマーと化してしまっていた。元からそうだろとは言わないでやってほしい。私にも傷付く心くらいある。

どいつもこいつも聞き耳を立てるのが好きなようで、こちらのやり取りをしっかり聞いていたらしいアデクに、私は冷ややかな視線を送る。絶妙なタイミングでやってきては意味深な事を言う爺さんを警戒し、どうかこれ以上テンサゲな情報が耳に入りませんように…と祈るしかなかった。

「元気であったか?」
「挨拶は抜きだ。塔から放たれたあの凄まじい稲妻…」

世間話もそこそこに、アデクは本題に入ろうと口を開く。彼が来たおかげで随分カラフルな面子になった中、幸薄い私は一層のアウェー感を醸し出し、こんなに地味で本当にレシラムと出会えるのか甚だ疑問であった。見過ごされそう。いたの?って言われそう。
ゲーチスの服借りるか…と血迷っている間に、真剣な話は続いていく。

「世界を滅ぼす力を持ったポケモン…それを従えた者が皆にポケモンを解き放てと言う。恐怖か崇拝か…いずれにせよ世界は変わりかねない」

まさに全員が危惧している事を改まってチャンピオンから言われ、本当にやばいんだな…とあの時スタンガンを使えなかった自分を恥じた。
チャンスはいつだってあったのに…獄中にぶち込む機会も五回は余裕であった、でも私にはできなかった。何故ならジュンサーさんに、あなたの職業は?と聞かれるのが怖かったから…!無職が生む弊害を嘆きながらも、私はこの先ずっとニートと向き合っていかなくてはならないと再認識させられる。
ていうかムショにぶち込んでもどうせゲーチスが身元引受人になるっしょ。やるだけ無駄。スタンガンだって一時的に不審者を退けるだけのものだし、結局は奴の改心でしか事件は解決しないんだよな。何だか途方もない事のように思え、でもそれはNが、私なら同じ土俵に上がっても構わないと思ったからこそ英雄になれと言ったわけで、心が揺れ動いているのは確かだとも思う。

思わず路チューを働いてしまうくらい私に入れ込んでいる今ならば、何とかできるかもしれない…と前向きになりかけている時に、アデクが眉根を寄せたため、やっぱ無理かもな、とすぐさま私はネガティブに戻るのだった。情緒大丈夫か?

「我々とポケモンはもう手を取り合う事がなくなる。そんな世界に…」

お通夜テンションで言われたら、私の肩も自然に落ちるというものだ。
やめて。責任感で死んじゃうよ。重みに耐え切れず、私はとうとう原付に腰かけた。もう膝は限界だった。
マジでさぁ…やばすぎないか?ていうかゼクロムって世界を滅ぼす力とか持ってんの?チートじゃん。確かに羽ばたきだけで私は転げ落ちそうになったし、あのでかくて頑丈な塔がゼクロムの降臨で揺れてたし、鳴き声もそれはそれは神秘的な…バリバリダーだったからな。世界くらい滅ぼしてもおかしくないかもしれない。
そんなポケモンと戦えと。しかもレシラム縛りで戦えと。負けたらポケモン解放という絶望を背負い、イッシュの命運を賭けてカントー人が戦うと。どう考えてもおかしいだろ。お前らの誰かが故郷のために戦ってくれんか?特にアデク。そうだよ、ていうかNの次のターゲットはチャンピオンなんだろ?行き違いになってんじゃねーか。さすがに草。

やはりこういう時こそチャンピオンの出番だよね、と責任を押し付けようとし、逆にイッシュの平和をぽっと出のカントー人が救ったらそれこそチャンピオンの立場がないって話である。だからお前はプレイヤーに影が薄いって言われるんだ。卵押し付けてる場合じゃないぞ。
しかしNは、どうやらチャンピオンを越える事は大前提みたいなので、雑魚扱いされている虫取り老人を憐れまずにはいられない。甘く見られたもんだなアデク…常に他人を甘く見ている私が言えた義理ではないが。強くてすまん。

「そうだな…しかもゼクロムを復活させたNというプラズマ団のボスは、もう一匹のレシラムを探すよう言っていたらしい」

くだらない事を考えている間にも会話は進行しているので、アララギ父の説明を聞いたアデクは、さらに難しい顔で唸っていた。

「確か神話では、ゼクロムはもう一匹のポケモンと共に太古のイッシュを一瞬にして荒廃させた…プラズマ団はそれを知っていてもう一匹を待つというのか?」

怖すぎなんですけど。バリバリダーの衝撃の本性を聞き、可愛い声してとんでもねぇなと私は震えた。これはもう英雄になってる場合じゃない、滅ぼされる前に高飛びした方が賢明だよ。
いやマジにやばすぎるって。いよいよ頭おかしいわN。二匹揃うとそういうやばい兵器になる事を知らないはずがないと思うので、つまり知っても尚ゼクロムとレシラムを引き合わせようという算段なのだ。常人には理解できない発想に、私は物理で殴るか英雄になるか本気で悩んでしまう。
そんなやべぇポケモンでも…友達なのか、N氏。そもそもポケモンはみんな凄まじい力を持っているもの…それでもトレーナーと心通わせて無害な存在と化しているわけだから、伝説のポケモンとて例外ではないのかもしれない。恐れを知らぬNの純粋無垢加減に恐怖さえ抱き、汚れた心のニートはそれに太刀打ちできるのか、ますます不安になってしまう。
仮にレシラムを復活させたとしても…うっかりしてたら私がイッシュの崩壊を招くかもしれないって事でしょ?まさにトリガー。新劇のシンジ状態。

「そんな危ない奴…復活させたくないんですけど?」

ド正直に告げれば、アデクは苦笑して頷いたあと、また真剣な顔つきに戻る。

「だが、他のポケモンでは抗えるかどうかわからん。何せ伝説の存在だからなぁ…そのNとやらの言う通りにするのは癪だが、ドラゴンを…ストーンを探すのは悪くない」

脅したわりにはレシラム復活に前向きとも取れる発言をし、アデクは方向性を勝手に固めていた。どう考えても私なら抗えると思ったが、万一抗えないとまずいので黙っておく。保守的なニートであった。
つってもこちとらスイクンもワンパン、ホウオウもワンパン、グラードンもワンパンだからな。ワンパンできないものなどないように思うけど、しかし物理的解決ができないに等しい現状、やはりパワーストーンを探すべきだと私も思う。
私が英雄と認められて対等な存在とならなければ、Nはこちらの主張に耳を貸さない。いくら暴力で抑えつけても無駄。求められるのは根本的解決なのだ。それは私にとって、相当な試練であると感じてしまう。いや私じゃなくても相当な試練だろうけど。

とは言ってもまずは石を見つけない事にはスタートラインにすら立てない。詫び石探しに関して、もちろん私はド素人である。イッシュには来たばかりだし、英雄伝説についてもほとんど知識なし、Nも肝心の場所などには一切言及がなかったから、こっちは完全に詰んでるんだけど、誰か存知上げてるのか?
研究者的な立ち位置ならアララギパパが博識そうだけど…と博士を見ていれば、意外にもアデクが提案する。

「むしろプラズマ団が二匹目を復活させたら一大事だ!イッシュの各地を旅していたわしに心当たりがある」

あんのかい。早く言えや。

「古代の城に向かおう!レイコたち、行くぞ!」
「え、今から?」

アデクに名指しされて、思わず嫌な声を上げてしまった。何故なら私はそう、疲れているから。
いやいやいや…と失笑し、首を左右に振る。いつ黒塗りの高級車に追突してもおかしくないくらい疲労困憊な私は、もし私が倒れたら全ての責任を負ってくれるんですか?とアデク先輩に詰め寄りたくなる。
いくら大変な事態だって言ってもお前…今ではないんじゃないか?そんなにすぐどうこうなるわけじゃないんだし、ポケセンで一泊くらいしても罰は当たらないと思うんですけど?
ジジイは塔に登ってないからつらさがわからないかもしれないけどさぁ…と文句を垂れている間に、アララギパパとハチクは中を調べると行って消えてしまったので、出遅れた私はチームアデクに加わるしかなくなってしまう。だって古代の城かリュウラセンの塔かって言ったら古代の城しか選択肢ねぇだろ。ハチクさんよくまた登る気になるな。さすがセッカの武井壮は違うわ。

しかし、古代の城もなかなかの地獄ダンジョンと予想される。だって…あれだろ?リゾートデザートにあるやつじゃないの?ヒウンとライモンの間の。なんかタウンマップには砂に埋もれた城の遺跡…的な説明が書いてあった気がするが、結果的にはどっちもどっちだったように思え、私は深い溜息を漏らす他ない。
高山病の次は生き埋めか…と自棄気味に考えていると、静かになった塔の前でチェレンが呟いたため、私とアデクは視線を向けた。

「…少しわかった」

いつもの独り言かと思いきや、彼は不意に私を見上げた。身構えながらも見つめ返し、最近しおれていたアホ毛が今日はしっかり立っているのを見て、彼の中で何かが晴れた事を感じる。

「こんな時…ポケモンのため、誰かのために何かできるのが強さなんだ…きっと」

真っ直ぐな瞳を向けられたら、その通りだ、と適当に返してしまいそうになったけど、チェレンの出した答えに、私は肯定されたような気持ちになって、何だか胸が熱くなる。

チェレンは私を強いと言ってくれたけど、私は誰かのために何かやって来れたんだろうか。いや…まぁ…やってきたわ普通に。度重なる世界の危機を救ってきたが、でもそれはやっぱり私一人の力じゃなく…。

「そして僕の強さは、ポケモンがくれたものだった」

僕も同じこと考えてた!と脳内でハンスが扉を開け、チェレンの言葉にゆっくりと頷く。二人だから扉開けて飛び出せるように、ポケモンと一緒だからできた事を振り返り、そして今回も同じだと思ったら、上手くいくような気がしてくる。
そうなんだよな、私が俺TUEEEできるのも、みんなポケモンのおかげだ。ポケモンがいるから、私も何でもできると思えるんだし、そういう私の気持ちにみんなついて来てくれて…つまりいい感じに循環している。互いに支え合ってる。そう信じたい!切に!
キミは変わった、とNは言ったが、私を変えたのはこの、ヒウン以降絶不調のイッシュである。いろんな価値観に触れ、ポケモンと人の形が多種多様であると知った。アララギ博士はそれぞれが向き合い方を考えればいいと教えてくれたし、チェレンは強さの在り処を教えてくれたし、Nは私が求める答えを持っていて、アデクがくれたのは…卵だな。お前だけ物質。
でもそれがかけがえのないものになったりするから、私はポケモンと生きていきたいと思う。

「さぁ、チャンピオン。早く行きましょう!」

伝家の宝刀、メンドーだな…を封印したチェレンの言葉に従うよう、私は二人のあとを追う。何とかなる気がしてきたぞ、と前向きな気分になったが、やっぱり一日くらい休んでいいんじゃないか?と思わざるを得ない私であった。当日に来そう、筋肉痛。

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