04.ハナダシティ


人のポケモンを触媒扱いした罰が当たったのか、私は冒険者の洗礼を受けて絶望していた。
私の名はニート。違ったレイコ、ポケモンニートレーナーだ。ニビシティに用事がなくなったので次なるエリアに進もうと原付を走らせていたのだが、しばらく走った先に待ち受けていたのはおつきみ山なる薄暗い洞窟で、全てのテンションが下降していく。

早くない?森が来るのも早かったけど、洞窟来るのも早すぎないか?
田舎にはそういうエリアもある事はもちろん知っていた。人里離れた場所にしか住めないポケモンも多いし、いずれは離島だとか海峡だとかを攻める事になると覚悟はしてたけど。
でも早すぎないか洞窟は?絶対マサラから出発したトレーナーは不利だろ。森の次にすぐ山だぜ?さすが群馬だなと言わざるを得ねぇよ。
首都圏中の首都圏に住んでいる身にはしんどさしかなく、ある程度整備されているとはいえズバットとイシツブテしか出ない空間は苦痛でしかない。しかもここにはピッピも生息していると言うじゃないか。全てのポケモン記録するまでニートになれま10を実践中の私は、地獄の山籠もりを強いられているのである。

大体なんでおつきみ山越える以外に道がないんだよ…絶対おかしいだろ。マジでニビの人ってどこにも行かないのか?だって森と山に閉じ込められてんじゃん。険しい道を超える能力がない人はここで余生を過ごすっていうの?これが群馬か…。私はまだ群馬を真に理解してはいなかったわけだな…してるわけないだろ。

「…はぁ?ピッピの目撃情報…5%?」

群馬県の中心で休憩がてらネットサーフィンに明け暮れていた私は、ピッピの影も形もない状況に疑惑を覚えてとうとうインターネット検索に手を出していた。すると恐ろしい事に、おつきみ山でピッピを見たという人はわりと少なく、ざっと計算すると野生で出会えるのは5%の確率だという結果が出たのである。残り95%は全部ズバットイシツブテパラスだと思うと全てを破壊し尽くしたくなってきた。

「有り得ね〜」

テンサゲにも程があるっつーの。そう広くない洞窟だけど、探すのやめて一回出ようかな…心も折れるしカメラのバッテリーもなくなるし。クソデカ溜息と独り言を呟いていると、急に健全に生きているだけの私に輩の怒鳴り声がぶつけられた。

「おい!お前うるさいぞ!」
「あ?サーセン…」

いきなり変な奴に絡まれ、私はつい反射で謝ったが、そもそも誰だよと声のした方を振り返る。するとそこには黒服の集団がつるはしを持っておつきみ山の壁を崩しており、その異様な光景に五度見は必至であった。

え、何あのやばい連中。化石発掘隊?
おつきみ山は化石がたくさん出てくる洞窟らしく、この前タケシがくれたコハクもここで発掘したと言っていた。それ目当てで山籠もりするトレーナーもちらほらいたので、別におかしくはないんだろうが…でもその服装は何なんだよ?絶対化石掘りには向かないだろ。
よく見ると全員胸に「R」の文字がプリントされている。怪しい団体で間違いないな、ガラも悪いし。これ以上絡まれたら面倒というか、ピッピが出ない世知辛さにブチギレて全員カビゴンで捻り潰しそうだからさっさと行こう。道中で戦ったミニスカートのナホがピッピを持っていた時も思わずダイレクトアタックしそうになったし、精神が蝕まれて他人を傷つける前に抜けた方がよさそうだ。

日の当たらない空間は人を狂わせる…と実感し、後にこの黒ずくめの集団と深く関わっていく事になるとは、思いもしないレイコであった。

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