「あーあー。我々は泣く子も黙るロケット団!組織の立て直しを進めた三年間の努力が実り、今ここにロケット団の復活を宣言する!」

ヤマトナデシコ七変化を繰り返しながら、ようやくまともな服に着替えて私は塔内を進んでいた。室内にはやかましくラジオ放送が響いており、どうやらロケット団がラジオ塔を乗っ取ったのは復活を宣言するためと、失踪中のサカキに呼びかけるのが目的だったようだ。
まぁ電波の実験もしてたから他にもいろいろ企みはあるんだろうけど。エンジェルハイロゥみたいに恐ろしいサイコウェーブを発生させて世界中のポケモンを退化させたりもできるかもしんないしな。それは普通に止めた方がいい。この世界に生きる全ての生物たちのためにも、私は戦うんだ。正義の使者として。電波なんて使われたら私の最強神話途絶えて連載打ち切りになっちまうとかは別に考えていない。私欲もロマンスもありあまりすぎだろ。

「サカキ様ー!聞こえますかー?ついにやりましたよ!ボスはどこにいるんだろう…この放送聞いてるかなぁ…」

独り言が多すぎるラジオ放送もさすがに聞き慣れてきた。さっきから代わる代わる下っ端団員達がボスへの思いの丈を公共の電波に乗せていて、サカキ様のおかげで人生変わりました!サカキ様に戴いた水のおかげで病気が治りました!などと言っており、時々すすり泣く声も聞こえてきて私はかなり引いている。宗教か。

そうやってアジトを進み、下っ端団員をなぎ倒して早々に疲れ果てている私から一つ朗報がある。そう、ここに来た最大にして唯一の目的、マサキシスターの事だ。
これが意外と結構早く見つかったよね。なんか学校行事で来てたみたいで他にも複数の子供と引率の先生がいたんだけど、全員無傷で狭い部屋に押し込められてたから、そのままそこで待機してもらう事にして一度別れたわ。コガネ中が団員だらけのまさに下町ロケット状態、ほぼ戦線崩壊したラジオ塔の中にいた方が逆に安心っぽいしね。お守りにプテラのボール貸しといたから大丈夫でしょ。逆に危険。

そしてもちろん悲報もある。いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?というアメリカン茶番をする事もなく朗報から報告させてもらったが、どうやらこのラジオ塔攻略、滅茶苦茶おつかいゲーだという事が発覚してしまったのだ。

私のミッションは、マサキの妹を救出する事である。救出、というのは、見つけて連れ帰ればオッケー!なんて話ではない。そりゃマサキの妹一人くらいならさっさと連れ帰ったけど、でも思いの外子供がたくさんいたから全員まとめては無理だし、一階の受付嬢もいるし、皆の衆を救出して私が今後この組織と関わらないようにするためにはやはり、作戦を指揮している奴を倒さなくてはならないんだよね。

頭を倒してしまえばあとは自然と崩壊していく、女王蜂と働き蜂みたいなものである。
さっきも決意したけどやっぱり…長い目で見るとなると今ぶっ潰しておいた方がこの先の人生楽だと思うんだよな。オリンピックみたいに四年おきにでも復活されてみなよ、いつまで経ってもニートになれないから。三年前も組織解散に追い込んでめでたしめでたしで終わったと思うじゃん?全然そんな事ないから、私何回か警察に捜査協力で呼ばれてるからね。こいつの顔知ってる?とか。これ盗品なんだけどどこかで見た?とか。知らねーよ勘弁してくれ。復活のたびにそんな調子で警察出入りしてたらもはや私が浅見光彦みたいなもんだよ。そうならないためにも、ここで完全に決着をつける。どうしても復活したいならサウジアラビアとかで頼むわ。私には一生縁のない土地で生きろ。

というわけで作戦指揮官を倒す決意をした私は、下っ端を脅してボス代理の居所をとにかく吐かせまくった。チョウジのアジトであれだけ怯えさせられたワタルと全く同じ事をしているこの状況、笑えよベジータ…って感じである。性格変えられたわサドマントに。責任取って。
どうやらラスボスらしく最上階を陣取っているというので、筋肉痛覚悟で上を目指そうとしたんだけど、そこに行くまでの道のりがまた長いんだわな。作り込みすぎだからゲームフリーク。さっと行かせてほしい。あのワープ機能ですっ飛ばしてくれ。
チョウジのアジトでも、なんか怪電波発生装置室に行くためのパスワードを知っている奴がいる部屋のパスワードがまず必要、的な事があったけど、今回も例に漏れずおつかいにおつかいを重ねたドラクエ7のような展開が待っているらしい。

まず、最上階に行くにはカードキーが必要であるという事。そのカードキーはここ、ラジオ塔の局長が持っていて、スペアはなし。そしてその局長は、ロケット団に局長室で捕まっている。局長室は、五階である。エレベーター、使用不可。
おわかりいただけただろうか。

「…面倒臭い!」

マスターキーくらい置いとけ!

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