「プラターヌ博士には運命の人がいるらしいですよ」

ゲートをだらだら進んでいると、デクシオに死ぬほどどうでもいい情報を流され、今世紀最大の誰得具合に、私の表情筋は死んだ。で?以外に反応しようがなく、それでも道中暇だから、世間話くらい付き合おうと意識を改める。マジでどうでもいいけどな。芸能人の不倫報道くらい聞く価値がねぇよ。

「…運命?」
「昔、大事なものを失くした時に、エスパー少女と名乗る人物から言われたそうなんですが…」

うちの近所にもいるな〜エスパー少女。もう少女じゃないとか言ったら怒られそうだが、めちゃくちゃ馴染みのある名前なんですけど。偶然ですか?
ナツメさん以外にも似たような人いるんだ…とクールな同郷のエスパーウーマンを思い出し、おかげで微妙に興味が湧いたので、さっきより真剣に耳を傾けた。芸能人の覚せい剤所持報道程度には聞く価値出たわ。

「失くしたものは、運命の人が持ってくる…と」

決め顔でほざいたデクシオに、左様ですか…と小声で相槌を打った。場末の占い師みたいな奴に言われた事を信じているらしいプラターヌにますます不信感が募り、本当にまともな博士なのか心配が尽きない。

大丈夫なのかプラターヌ博士…エスパー少女に予言された事を鵜呑みにするほどピュアで愚かなの?絶対やばい奴だよ…。ここに来て足取りが重くなり、私の歩幅は狭くなる。

大事なものを失くす時点でやばすぎるのに、それを…運命の人が持ってくる?絶対ないだろ。仮に持ってきたとしても普通信じないし。
そりゃナツメさんクラスのエスパーレディなら信じてもいいと思うぜ?あの人バラつきはあれど年単位で予知できたりするみたいだし、タピオカブームが来ることも予言してたからな。さすがアニメでサイコっぷりを披露して世の少年少女にトラウマを植え付けただけの事はあるって感じよ。

でもナツメじゃないなら絶対偽エスパー少女だね。鼻で笑う私には、まさか本当に該当のエスパー少女がナツメだと、知る由もないのであった。

「で?会えたの?運命の人には」
「ええ。小学生の女の子だったとか」
「ロリコンじゃねーか!」

ますます会いたくなくなったわ!このゲートくぐりたくねぇ!
ミアレを目前にして足踏みをする私が、数分後にまさかの熱い掌返しを展開するはめになるなどと、この時は想像もしていなかったのである。

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