▼ 100

「お、お疲れ様です....」

「あっ!名前ちゃん!もう1ヶ月ぶりじゃん!」


私の感覚では数日ぶりなんだけど....

変わらず元気な秀君は私の手を取り、「良かったー!」と喜んでくれてる


「もう大丈夫なの?」

「はい、全然元気ですよ。六合塚さんも....少し髪伸びましたね」

「1ヶ月あれば当然よ」

「あはは....」

「じゃ、ギノさん名前ちゃん借りるよー」

「.....は?どう言う意味だ」


一番奥の席で顔を上げてこちらを見る伸兄


「やっと名前ちゃん戻って来たんだから、ギノさんの名前ちゃん独り占めはもう終わりっすよ!」

「え、秀君、ど、どういうこと?」

「いいからいいから!名前ちゃんはとにかく着いて来て!」

「でも私伸兄とカウンセラーに....」

「残念だけど俺達の監視官は仕事が終わってませーん、まだしばらくかかるはずだから安心して!」

「....おい縢!お前わざと雑な報告書を提出したのか!」

「おっと、逃げるよクニっち!名前ちゃんもほら!」

「えぇ!?....あ、ちょっ!」

「はぁ...全く」

「なっ、ふざけるな!おい!縢!六合塚!」








秀君に手を引かれ、六合塚さんに背中を押され、どう聞いても怒ってる伸兄の叫びを後ろに、一係オフィスを出てエレベーターに押し込まれた


「ど、どこ行くの....?」

「それは着いてからのお楽しみだよ!」


六合塚さんが押したのは50F
....執行官宿舎の階







すぐにまた扉が開き、エレベーターを降りると、“こっちこっち”と私を誘導する秀君

それに大人しく着いていくと、立ち止まったのは





「.....ここ、秀君の部屋だよね?」


私の質問に構わずロックが解除されると、ドアが開いた途端に漏れて来たのは大きな歓声



「お帰り!!」

「.....え、え?」



いまいち状況が理解できていない私は恐る恐る、部屋の中に足を踏み入れる


そこには大量の食べ物や飲み物が乗ったテーブルを囲む、お父さん、唐之社さん、そして狡噛さんの姿



「もう1ヶ月も寝ちゃって、私達結構寂しかったのよ?」

「す、すみません....」

「まぁこれはちょっとした復帰祝いみたいなもんさ、さぁ座った座った!」


そうお父さんに促されて腰を下ろしたのは狡噛さんの隣で、それだけで緊張してしまう

非番だったのか、それとも以前私が汚してしまったからなのか
スーツじゃなくて、ニットセーターを着る狡噛さんは、身体の逞しさが強調されているようで恥ずかしい



秀君と六合塚さんもそれぞれソファ等に着いて、狡噛さんが私に缶のリンゴジュースを手渡す




「じゃ、名前ちゃんが無事帰って来たお祝いに!」

「「カンパーイ!!」」


その合図に慌てて手元のリンゴジュースを突き出すと、缶やグラスがそれぞれにぶつかる音



「これ全部縢が作ったんだろ?さすがだな」

「俺の得意分野っすからね!ほら、いっぱい食べて!」



私はフォークを一つ取って目の前の大皿に乗る唐揚げに差し込んだ



「っ!美味しい!」

「その笑顔だけで俺は満足だなぁ」


そう嬉しそうに笑う秀君は、本当に料理の天才だ

私は続けてすぐにもう一個唐揚げを頬張った
























「名前ちゃんは、どうして慎也君が好きなの?」

「....えっ、それここで聞くんですか....?」

「慎也君だって気になるでしょ?」


ソファのアーム部分に肘を突きながら私を見る狡噛さんに心臓が跳ねてしまうのが分かる


「そうだな、高校時代から憧れてくれてたのは聞いたが」

「どうなのよ!名前ちゃん!」

「な、なんで唐之社さんそんなに楽しそうなんですか....」

「当たり前じゃないの!こういう話は大好物よ」



狡噛さんと唐之社さんだけじゃなくて、全員の期待の眼差しを一身に受けると、逃げ出したくなった




「....そういう事は狡噛さんだけが知ればいいんです!」



そう感情任せに答えると、今度は驚きの視線が突き刺さる



「....言うねぇ名前ちゃん!コウちゃんの特権って事っしょ?フゥ〜ッ!熱々だねぇ!」

「縢!....あまり茶化すな」

「なんすかー、コウちゃんも本当は嬉しいくせにー」

「....はぁ....」


隣で軽く溜息をついた狡噛さんは、フライドポテトに手を伸ばした




「コウちゃんちょっと待った!」

「ん....なんだ」



細長いフライドポテトを食べようとしたところを秀君に言葉で動きを封じられる



「ポッキーゲームって知ってる?」





[ Back to contents ]