▼ 02
「それで、何の職に就く事にしたんだ?」
レイドジャケットを羽織り直しながらも確実に私に向けられた質問。
あぁ、もう行っちゃうんだ
まだ5分程度しか経っていない
別にもう会えないわけじゃない
伸兄とは一緒に住んでるし、狡噛さんともなんだかんだ言って、週1から月1程度には会ってた
ただ、仕事中という姿が新鮮だった
高校時代や休みの日とは違う
これが私が1年間ずっと憧れて来た姿
私のメンタルさえ強ければ、私もあの輪に入れてたかもしれない
でも考査ではやれる限りを尽くした
監視官適正は貰えなかったけど満足してる
だって....
「ふふっ、それはまだ秘密です。.....って、わっ!」
途端にせっかく整えて来た髪型をぐしゃぐしゃと崩され少し慄く
でも、整えて来た理由の張本人に崩されるのなら本望かもしれない
「次会ったら教えろよ」
“次”
その言葉がどれほど嬉しいか
当たり前でとてもシンプルな二音
でもそれを貴方が言ってくれると特別な気がする
私の想いを見透かしている伸兄の視線が突き刺さる
分かってるよ
そんな気持ちを込めて、私も視線を送り返す
「じゃあな。今日は帰りが遅くなりそうだから夕飯は自分で何とかしろ。初勤務までの1週間、休みだからと言ってあまり夜更かしはするな」
「はいはい、子供じゃないんだから。歳だって1つしか離れてないのに」
「ギノが言うことも正しい。本格的に仕事が始まったら学生生活とは一変する。しっかり休んだ方がいい」
「うぅ...狡噛さんまで...」
「ま、でも最後の1週間でもあるわけだ。今のうちに遊んでおけ」
「狡噛!また余計な事を!何かあったらお前が責任取るのか!」
「名前は大丈夫だ。ちゃんと区別はつけられる。な?」
嬉しい
信頼してもらえている様な気がして
「監視官、そろそろ」
遠ざかっていく背中を見て、より一層近付きたいと心を震わす
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「ダイム!そろそろご飯にしよっか!」
伸兄が居ない時はいつもダイムと夕飯を共にする
最近は料理にもチャレンジしている
今時料理ができる人なんて稀で希少価値が高いし、スキルとして持っておいても損はない
いつかもっと上手になったら
「狡噛さんにも....」
そこまで思って、勝手に恥ずかしくなった自分がバカバカしい
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端末を開いて今日出た自分の職業適正を再度確認する
目の前にはハンガーにかけられたシワひとつない真新しいスーツ
伸兄が、どんな職に就いても必要だろうからと、一足早い卒業と就職祝いにオーダーしてくれたもの
「あと1週間...」
二人が私の就職先を知ったら驚くだろうな...
伸兄には、“なんで言わなかったんだ!”とか言われちゃうかな
....それとも意外と喜んでくれるのかな
「狡噛さんなら....」
どういう反応をしてくれるか考えても想像がつかなくてもどかしい
あと1週間
緊張してる
でも楽しみな気持ちもある
二人の‘監視官’という仕事に比べたらどうって事ない
でもいろんな意味でやりがいを感じられそう
「ダイム、私頑張るよ!」
「ワン!」