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「公安局よ!全員その場に伏せなさい!」


先輩の方は薬物は製薬会社への対処に忙しいらしくて、こんな所に3人で乗り込む事になった

廃棄区画内のとある建物

その入口を宜野座執行官と雛河執行官とで突破した

予め伸ばしたケーブルでドミネーターはオンラインになってる


「公安?その顔で?中学生じゃねーの?」


そう向けられたドミネーターに見向きもせずに近付いて来た男に、いっそ引き金を引いてしまおうかとも思ったけど、数で負ける私達は相手をその気にさせたら勝ち目が無い
だから出来れば最小限の争いにしたい


「あんまり舐めてると痛い目みるわよ」

「おー怖い怖い」


甘く見られてる方が都合がいい


「あんた達のリーダーを出しなさい」

「残寝ながら親方はお楽しみ中なんで誰にも邪魔できませーん」

「そっちの都合なんて知らないわよ。連れて来ないなら探し出すまで」

「そしたらお嬢さんも餌食にされちゃうかもしんないね?....いや、お子様なんかに誰も興味はねーか」


その言葉に一斉に笑い出す男達
....ふざけてんじゃないわよ


「....落ち着け、霜月」

「執行官は黙ってて!」

「つーか、お前胸どこだよ」


そう言って伸ばされて来た手に、ついに我慢ならなかった私は、


「なっ、霜月!」


思いっきり急所を蹴ってやった


「....いい度胸だな、この女」

「少なくともあんたより度胸あるわ、悔しかったらやり返して見なさいよ」

「....クソガキが....やれ!」


と立ち上がろうとした男に容赦なくパラライザーを撃ち込む

















結局ドミネーターは思いの外強く、発砲可能数に制限があるエリミネーターが作動しなかったのが幸運だった


「....全く、肝を冷やしたぞ」

「こちらを舐めてかかった罰ですよ。これより違法薬物と組織のリーダーの捜索を開始します」

「了解」

「りょ、了解...」


床に転がる男達を跨いで奥に進んで行く


"お楽しみ中"って、物音一つしないじゃない

手前のドアから一つずつ入って確認していくと、3つ目の部屋で大量の大きな箱を見つけた


「....当たりだな」


入っていたのは透明の袋に小分けにされた、白い結晶の塊
分析室で見た覚醒剤の画像とそっくり

それを写真で撮ってとりあえず本部分析室に送信した


「ここは置いておいて引き続きリーダーの捜索に向かいます」


部屋を出て再度先へ進む

途中で存在感の薄い雛河執行官がちゃんとついて来ているか心配になり振り返ると


「っ!な、何...ですか」

「....何でもないわよ」


さっきもドミネーターで打つ時何度も外してたし、いくら新人とは言えやっぱり"なんでこいつが...."と思う

何も音がしない廊下を、前を進む宜野座さんの後を着いて行く

....本当にいるの?
あいつら嘘ついてたんじゃ



ドン




「....何今の?」

「奥の部屋からだったな」

「....分かってますよ!」


足音を立てないように扉の前に近付いて、私が指で"ドアを開けろ"と合図を送る

そのタイミングに合わせて


「公安局だ!その場に....」


ドミネーターを構えながら宜野座さんを先頭に部屋に踏み込むと、

"犯罪係数オーバー320、執行対象です、セーフティを解除します。
執行モード、リーサルエリミネーター。
慎重に照準を定め、対象を排除して下さい"

3丁の銃が同時に青い光を放ちながら殺人銃に変形した

銃口が捉えたのは、床に座り込みガラスの破片を持った手が血に染まっている女性
隣にはうつ伏せに倒れた男性

誰だか知らないけど、シビュラが排除しろと判断したなら私は引き金を


「ってちょっと!」


"犯罪係数オーバー260、刑事課登録執行官、任意執行対象です"


「待ってくれ!頼む」

「ふざけてるんですか!?今すぐどいて下さい!」


そんな監視官である私の命令を無視して、女性を庇うようにして覆われた背中にドミネーターの照準が定められる


「....宜野座執行官!」


なんなの!?
300オーバーの潜在犯を前に何してんのよ!


























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市民にに公開する薬物の真実についてオフィスで準備を進めていると、


「朱ちゃん!ちょっと!」


そうやけに慌てた唐之杜さんに廊下に呼び出された


「どうしたんですか?」

「これ見て!」







「.....宜野座さんが、撃たれた?」







その記録を見て私は急いで現場に駆け付けた


そんな

どうして?













「先輩!これは宜野座さんが

「....何をやってるの!」




そこで私が見たのは、重なるように地面に倒れている夫婦の姿だった





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