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蓮池さんと、休日は何をしているかとか、好きな食べ物は何かとか何気ない会話をしていると突然青柳さんが入って行ったメンタルケア施設のシャッターが降りた
須郷さんが青柳さんにデバイスで連絡を何度か試みたけど応答無し
街中に取り残された私達執行官
監視官がいなきゃ何も出来ない
とりあえず中の様子を探ってみようと、今度は本部分析室に施設内の監視カメラの映像などを見れないかと協力を仰いだ
もちろん出たのは唐之杜さんで、残念ながら施設の監視システムにアクセス出来ないと言う
どう見ても何かがおかしい
施設の方もシャッターが降りてから変化は無いし、青柳さんからの伝達も無い
どうするのかと須郷さんと蓮池さんと顔を見合わせていると、施設内のエリアストレスが注意報レベルまで上がっている事に気付いた
それを受けて、須郷さんが応援を要請したのが10分くらい前
「一係が駆け付けてくれるそうです。間も無く到着すると」
「分かりました」
一係か....
伸兄来るかな...？
でもそれはそれで何となくどう接すれば良いのか分からない
あくまで仕事中だし、一応先輩だし
「青柳監視官は何をしてるんだ....？」
「未だに連絡は無い。酒々井監視官と何か話をしているのかもしれない」
「酒々井監視官が撃った山門屋執行官って、逃亡を図るような人だったんですか？」
「....自分にはそんな人には見えませんでした。しかし、酒々井監視官が理由も無しに執行官を撃つとも思えない....正直自分にも分かりません」
「そうですか....」
少し肌寒い風が頬に吹き付ける
広場では依然として一般市民達が笑顔を見せている
私も前までは向こうの立場だったんだ....
ダイムを外に連れて散歩したり、時々ショッピングに出かけてみたり、仕事後は同僚と外食に行ったり
特にここは渋谷だし、何度も遊びに来た事がある
今が嫌なわけじゃ無い
伸兄や以前の狡噛さんと同じ執行官として、愛する人と愛犬と暮らす日々
充分に幸せ
でもこうして何も無かった頃と比べてしまう事がある
もし戻れるなら、狡噛さんとちゃんと向き合って、槙島への復讐を止めたい
....誰にも止められなかったのを私が出来るのかは分からないけど
そしたらお父さんだって、皆まだ側にいたかもしれない
そんなもう起こり得ない世界線をふと想像したりする
お父さんと伸兄が親子の時間を過ごしていたりするのかな....
それともあの事件が起きてなかったら....
「来ましたね」
その声に道路側を見ると、確かに公安局のパトカーが一台、私達が乗ってきた車に次いで停まった
ほぼ同時に開かれた3つの扉を緊張して見つめて....
息を吐いた
ほっとしたのか、がっかりしたのか分からない溜息
車から降りた一係に伸兄の姿は無かった
その代わりにレイドジャケットを羽織った若そうな女の人
施設で東金さんと一緒にいたはずの人
....監視官だったんだ
確か一係は常守さんと、霜月...美佳さんだったかな...
こちらに近付いてくる様子を見ていると、一瞬目が合って挨拶でもしようかと口を開いた瞬間わざとらしく目を逸らされた
わ、私何かしたっけ....？
その横で六合塚さんには笑顔を向けられて私も笑い返した
「状況は？」
「依然施設内の状況は不明のまま、周囲で事件の通報はありませんがエリアストレスは上昇する一方です」
「ここが現場なのはほぼ間違いありませんね。外からこじ開けては？」
「いえ、この場合ストレスの原因を調べるのが先です。迂闊に解放すれば更に悪化する恐れもありますから」
監視官らしい考えだな....
後の処理まで考慮に入れてる
「やはり、内部と連絡を取る手段を探すしか....」
「エリアストレスの予想範囲をこの建物周辺の絞ってみたんですが、見て下さいよ」
そう自分のデバイスの画面を見せた蓮池執行官
「....そんな...」
やっぱり私、今日初めて生身の人間に対して引き金を引く事になるのかな....
「余裕で警報域だ。これじゃ執行対象だらけになっててもおかしくない」
全員がその事実に戸惑いを隠せないでいる中、私も何か意見を言わなきゃという思いに迫られる
私だって今はこの現場の一員
でも何を....
目前の状況もエリアストレスについても、もう須郷さんと蓮池さんが伝達した
他に何か....と考えても思い当たらなくて
そもそも分かっている事が少ない
私邪魔になってないかな....
初めての現場だと言い訳は出来るけど、人命が関わる仕事でそんな事も言ってられない
お父さんや狡噛さんならこういう時どうするんだろう
周りを観察する？
いっそ監視官の命令なんて待たずに行動する？
そうやってあたふたしている内に、再び口を開いたのは六合塚さん
「ドミネーターの作動を確認」
「使用者は....青柳監視官？」
「中に執行対象者がいます。どうしますか」
「どうもしないわよ、青柳監視官からの連絡を待ちます」