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「それで、俺とギノには何も無いのか?」

「あぁ...えぇっと...実は伸兄には事前にあげたんですけど、狡噛さんのはどうしても決められなくて....」


本当に好きなもの、喜んでくれるものが良かった
でもそれが何なのか分からなくて、失敗するのが怖くて結局何も買えなかった



「こりゃギノ先生に一本取られたな」

「だから、何がいいですか?教えてくれれば...」

「ついさっき選んでくれたものなら何でもいいと言ったんだがな。まぁいいさ、気持ちだけでも嬉しいよ」


そう言って頭を撫でてくれるだけで全てを勘違いしてしまいそうになる


それを見ていた佐々山さんが楽しそうに笑い、お父さんに何か耳打ちすると、お父さんもまた同じように声を出して笑った



「コウ、伸元の事は気にするな!それにしても若いっていいなぁ」



何の話か分からない以上、自分は関係無いのだろうと目の前のパスタを頬張る






































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征陸さんは描きたい絵を思い付いたからと、六合塚は唐之社と約束があるからと帰っちまった

俺の部屋に残ったのは、散らかりまくった食器やグラスと、奇妙な三角関係を築いてる3人


名前ちゃんは疲れ切って宜野座を膝枕にして寝ちゃったし

眠たそうにしてた名前ちゃんに、監視官2人はお開きにしようって言ったけど、ここは俺の部屋だ

俺の中でトレンディーなこの3人をもう少し見ていたかった

狡噛は自分の気持ちに気付いてない、宜野座は完全に独占欲だな。他の男よりは信頼を置いてる分、狡噛は許しているみたいだけど。
その渦中のお姫様はどっち付かずの言動

そんな姫様は、過保護なお兄様のおかげで純粋に育っちゃったって感じだな。
確かあの二人の一つ年下なはずだから、いろいろ経験してもおかしく無い年頃なのにな


どっちが先にあの純真無垢な寝顔を乱すのか楽しみだよ



「名前ちゃんって普段ギノ先生と一緒に寝てんの?」

「そんな訳ないだろ、それぞれの部屋がある」

「家事はどうしてんの?」

「分担している」

「お風呂覗いたことある?」

「俺を何だと思ってる」

「俺や狡噛みたいなのは気になるんだよ、女の子と住むってどんな感じなのかさ。な?狡噛」

「いちいちお前と一緒にするな」




そうは言うものの、狡噛は絶対気になるはずだ
自分の好きな女が自分の親友と一緒に住んでるなんて、知りたいことの塊だ




「別にどうもない、それぞれがそれぞれの生活を送っているだけだ。それ以上もそれ以下も無い」

「したいけど出来ない、じゃなくて?」

「執行するぞ」


俺は執行官で任意執行対象だから、マジで出来ちゃうのが怖い


「反抗期とか無かったの?」

「名前は万年反抗期みたいなものだ」

「....それはお前が悪い」


親ですらあそこまで厳しくねーよ


さっ、一個ぶっ込んでみようかな



「名前ちゃんは、そんな頼れるお兄ちゃんに恋愛相談とかしないのか?」


やっぱり
予想通り狡噛が明らかに興味を示す




「だから、あ

「‘兄じゃない’ってのはいいから。まさか名前ちゃん恋したこと無い訳ないだろうし」

「...知るか、こいつの勝手だ」

「そんな訳ないだろ、例の名前ちゃん同僚事件の時あんなに気にしてたくせに」



そう言うといかにもばつが悪そうに



「....俺が話すことじゃない。それは名前のプライバシーに関わる」

「ちっ、上手くかわしやがって」



それでも、遠まわしに相談を受けたことがあると肯定してしまった宜野座の回答は、狡噛には有益なはずだ

そう思い狡噛を見てみると小さくため息を吐いていた









「んんっ....」

「おっ、姫様のお目覚め?」

「うるさかったか?」



そう聞いた宜野座の顔に、下方から伸びる2つの白い手
その様子に狡噛も見つめる







「寝る時にかけてたら壊れちゃうよ....」

「なっ!名前!返せ!」



そのまま眼鏡を手に再び眠ってしまった



「....寝ぼけてるな、まったく....」

「もう連れて帰ってあげたらどうだ。ちゃんとベッドで寝かせてあげた方がいい」

「言われなくともそうするつもりだ。先に帰らせてもらう」



そう言いながら宜野座は、名前ちゃんに声をかけたが反応が無いのを見て抱えて出て行った












「....狡噛も明日早いんだろ」

「あぁ」

「もうお開きにするか?」

「あぁ」

「.....帰るんだろ?」

「あぁ」

「.....おい、何落ち込んでんだよ」

「落ち込んでない」




明らかに様子がおかしい狡噛に盛大に息を吐く




「なんだ、泊まってくか?」




1分ほど沈黙が続くと、急に立ち上がって出口に向かって行った








「帰る、今日はありがとな」





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