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「1週間ほど、ご迷惑をおかけしました」

「例の事件に巻き込まれて居たそうですね。怪我はどうですか」

「お陰さまですっかり良くなりました。セラピーも受けて色相も安定しています」

「無事で何よりです。では業務に戻ってください」

「はい、失礼します課長」




約1週間ぶりの出勤で、皆んなにどうしたのかって聞かれると思ってたのに、意外と事件自体が公安局内で広まっていて心配された

そんな同僚たちには公安局の医療技術を宣伝しておいた


それにしても本当に綺麗さっぱり治ってる

切られた首元を触っても何ともない
皮膚も綺麗で痛みもない

死まで覚悟しそうになってたのがバカみたいだ





















「名前、今日は私たちがお昼奢るよ!」

「本当?ありがとう!」

「復帰祝いだよ!好きなもの選んで!」


欠勤中、仕事を増やしてしまい恨まれてるのではないかと思っていたが、こう優しく迎え入れてくれると案外嬉しいもの


「そういえば名前、私達はあなたに感謝してるんだよ!」

「え?感謝?どういうこと?」

「不謹慎で申し訳ないんだけど、名前が刑事課にお世話になってくれたお陰で、我が人事課に監視官様が来たのよ!」

「え!何しに!?」

「なんかの手続きとかそういうの。あと名前、あの事件の前の日タンブラーデスクに忘れてったでしょ。だからそれを口実に使わせてもらっちゃった!」

「な、なんの口実?」

「決まってるじゃん!監視官様と話す口実だよ!いやー、背も高くてスラッとしてて、高級そうなスーツすごい似合ってて、顔もイケメンで声までかっこいいなんて、もう罪だよ罪!」


そ、そっか...
皆んなは、機会が無いと監視官なんかと話すこともできないんだ
どっちかというと私の方が罪だ


「ねぇ、こんな事聞くのもアレなんだけどさ、事件の時助けてくれたんでしょ!どうだった!カッコ良かった!?現場での刑事課なんて滅多に見れないんだから!」

「え、えぇ...あの時はそれどころじゃ無かったよ... それに私下着姿だったしカッコいいどころか恥ずかしかったよ!」

「えウソ、名前犯人に脱がされてたの?」

「まぁ命令されたというか....逆らえないし」

「それでよく色相保ったね...よく頑張ったよ」

「今はもう大丈夫だけどもう一歩で潜在犯だったよ....」


もうあんな事件は二度とごめんだ
本当に死ぬと思ったんだから


「それとさ、お見舞い行けなくてごめんね」

「私が居なくなって忙しかったんでしょ?いいよいいよ」

「いやそうじゃなくてさ、本当は医療センターまでみんなで行ったんだよ。人事課のファイルから入院先と病室番号確認できると思ったんだけど、何故かブロックされちゃってさ」


人事課の特権で、刑事課や組織トップ以外は人事ファイルを閲覧できる
もちろん外部漏洩厳禁だけど


「しょうがないから、事件に巻き込まれて刑事課に保護されたんだったら局内の医療センターかなって思って行ったの。そしたら、ねぇ」

「そう、名字名前への一般人の面会は許可されていません、規定レベル以上の身分証を提示してくださいって。私達みたいな下等職員じゃダメだったみたい」

「えっでも....」


そこまで言いかけて、確かに伸兄と狡噛さんは刑事課所属監視官の身分証があると気付く
私が事件の重要人物だったから、面会の一般公開が出来なかったのかな


「その時果物とか持って行ったんだけどね、仕方ないからみんなで食べたよ」

「そ、そっか....なんかごめんね」

「いいってば!さっきも言ったけど監視官様の姿のみならず声まで拝めたからオールオッケー!」


思わず苦笑いしてごまかす


「でも私あの人じゃなくて、もう1人の方が良かったなー。ほら初日に食堂で声かけられた」

「えぇ!絶対あの眼鏡の人の方がいい!知的でクールそう!」

「いやいや、あの人厳しそうじゃん。もう1人の方が優しそうだよ」

「イケメンに叱られるのは別問題よ!」



話の内容だけでなんとなく誰の事だか分かってしまう。
しかも恐ろしい事に、イメージが大体現実と合ってる。


「名前は!どっち派!?」

「えぇ...」

「今3対2なの!」

「どっちが3?」

「眼鏡様」


うわ、意外
だけど私の答えは決まってる


「私は残念ながら...」

「えぇー!3対3で意見が真っ二つ...まいいわ、これで誰が敵だか明白になった」

「えちょっと競ってるの!?」

「当たり前よ!早い者勝ちよ!」



何故だか私は、一度も狡噛さんを手に入れたいとかそう強欲な事を思った事はない
私なんかを好きになってくれはしない、近くに居れるだけで十分と思ってる

だからこうして他の人が狡噛さんを好きだと知っても焦りを感じない
よっぽど私自分に自信がないんだな...





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