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「....とんだ茶番だ」

「え?....あら、名前ちゃん」


"様子を見て来て貰えますか?"と六合塚さんに頼まれてやって来た分析室

扉を開けてすぐ聞こえたのは男性の声と、私に気付いた唐之杜さん
丁度ソファから立ち上がった所だったのは

....雑賀譲二

あの時伸兄は、狡噛さんが常守さんとこの人を引き合わせたと知って激怒した
確か生徒の色相を濁らせた元教授とかで、そういえば先週くらいから刑事課所属の分析官になったような....
連絡を受けた時は驚いたけど、"他の事"で忙しかっからすっかり忘れてた


「あ....は、はじめまして」


博識そうなおじさん、というのが第一印象
話すとサイコパスが悪化すると聞いたけど、もう潜在犯になってる私には関係無い
ただ、やっぱり新しい人に会うのは緊張する


「俺は....ふん...?」


眼鏡を一度押し上げてじっと私を見つめて来る視線
何が起こっているのか分からず、後ろにいる唐之杜さんをチラチラ見る


「....なるほど、狡噛が入れ込んでいたのはお前さんだったか」

「えっ」

「名前は」

「あ、宜野座名前です....」

「"同僚"で宜野座、そういう事か。懐かしいもんだ。当時は二人とも新任監視官で俺の教え子だったが、今では俺も含め全員潜在犯か。シビュラ様様だな」

「あの二人が監視官の頃なんて、もう遠い昔みたいね。今じゃ可愛い女の子二人に変わっちゃって」


状況が全く飲み込めず、一人キョロキョロする
なんで私だって....狡噛さんが何か話したのかな?
でも名前聞く前にもう....
それも心理学の教授だからって事?


「えぇっと....」

「俺は雑賀譲二、何でも好きに呼んでくれ。普段は施設に隔離されてるんだがな、今は常守監視官の要求で分析官をやってる」

「よ、宜しくお願いします」


そのまま"じゃあ行って来る"と分析室を出て行ってしまった雑賀さんに、取り残されたような感覚で棒立ちになる
全ての驚きが解説も無く速過ぎて、狡噛さんの事聞きたかったりしたのに


「あの人はそういう人なのよ。初めて会った人はみんな名前ちゃんみたいな反応するわ」

「そうなんですか....」

「見ただけでその人のほぼ全てを見透かすんだから、ちょっと怖いわよね?私が今日着てるブラジャーの色もバレてたりして」


そんな冗談かどうか分からない言葉に苦笑いした


「....で、やっぱり激しく攻められちゃった?」

「なっ、だからそういう話は....!」

「いいじゃない!ガールズトークよ。ぶっちゃけ慎也君がいない今、刑事課で一番色気を秘めてるのは御宅のご主人だと思うわよ?」

「い、色気って....」

「昔は堅かったけど、執行官になってからグッと大人な男になっちゃって。スーツの上からでも鍛えられた身体は分かるし、もう慎也君にも負けないんじゃないかしら?客観的に"男"として」

「そう....ですか?」


"いる?"とでも言うように差し出されたタバコに手を振って断る


「今だから聞いちゃうけど、実際あの二人ベッドの上だと比べてみてどうなのよ?」

「どうって....こ、答えられませんよ!」

「あら残念、じゃあ

「もうやめましょう!この話題!」


この手の話を他人に話すのは未だに慣れない
例え女同士だとしても、脳内でその情景を呼び起こすだけで恥ずかしくなってしまう


「これも今だから言っちゃうけど、私、あなた達が愛し合ってるの見た事あるのよね」

「....え、どう....え!?」


あまりの衝撃発言に思わず体が前のめりになる
どういう事!?
いつ?
どうやって?
恥ずかしさ以前にもはやパニック


「まさか宜野座君があんなリードするタイプだとは思ってなかったわ。名前ちゃんが積極的なんだと思ってたのよ」

「.....」

「まさに"開いた口が塞がらない"って顔ね....安心して、私しか見てないし旦那様も知ってる事よ」


何が何だか分からなくて思考が停止した私に、唐之杜さんは事の詳細を話し始めた
でも半分くらいしか頭に入って来なくて、とにかく私の部屋が昔盗撮されてたとか
結婚前?後?
それすら覚えられない


「大丈夫よ、この情報分析の女神様がその映像は世界から抹消された事を保証するわ」

「そ、そうですか....」


....私に心配させない為に伸兄も黙ってたのかな
なんだか、見られた相手が唐之杜さんで不幸中の幸いみたいな....
それでも知り合いにそんな姿を見られるなんて事が人生で起こるとは思ってなかった


「名前ちゃん、すっごくかわい


とそこで鳴り響いたのは電子音
画面に表示されたのは常守さんの名前


「はいはーい」

『こちらで軍事ドローンが只今暴走中!至急調査を!』





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