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「んで?監視官様2人がうまく行ってないと?」

「はい...なんかギクシャクしてる気がするんです...」



綺麗なスーツを着込んだ女の子と俺の部屋で2人
昨日食堂で珍しく向こうから話しかけてきたと思えば、俺の部屋に来たいとの事
断る理由もねーし、承諾したら今日本当に来た



「あの2人は高校からの仲だろ?今まで喧嘩した事とか無かったのか?」

「無かったと思います」

「じゃあ名前ちゃんは、何が原因だと思ってるの?」

「....ずばり言っちゃっていいですか?」

「おう」

「....でも佐々山さんからしたら上司ですもんね、....言っちゃダメかな....」

「おいおい勿体ぶんなよ!大丈夫俺口硬いから」



脚をぴったり揃えて、シワひとつないスカートから覗く白い肌が眩しい
よく今まで彼氏居なかったなと思えば、あのメガネが思い浮かぶ

....まぁ確かにあの2人の知り合いじゃなければとっくに手出してたかもな



「ちょ、ちょっと聞いてます?」

「あ、悪い。考え事してた。何だっけ?」

「だから、もしかしたら伸兄と狡噛さん、好きな人出来たのかな....って」

「ブッ!」

「キャッ!」



思わず口につけたコーヒーを吹き出してしまった
名前の真白なブラウスに広がる3つの黒い点



「ご、ごめんな!大丈夫か!」

「服着てなかったら火傷ですよ!」



男の前でそんなフレーズ言っちゃうのかよ
宜野座はどんな教育してんだ




「まぁ、これくらいなら洗えば落ちるので....」

「....それで、あいつらに好きな人が出来たって?でもなんでそれで揉めるんだよ」

「よく考えてみてください....」

「....おう」



真剣な眼差しに俺も思わず身を乗り出す



「同じ人を好きなっちゃったんですよ!」



俺にとっては衝撃発言だ
名前ちゃんは意外と感が鋭い



「ハハ!それでどっちを選んだらいいのかなって相談?」

「え?」

「え?」

「どういうことですか?」

「どういうことって、そのままじゃねーの?」



....あぁ、前言撤回だ
やっぱり鈍いわこの子



「....いや、今のは無かった事にしてくれ。じゃあ何が聞きたいんだ?」

「それが、誰なのかな...って....」


そう言う名前ちゃんはどこか寂しそうだった
そんなとこが宜野座に似てんのかなぁ


「...残念ながら俺にも分かんねーよ。学生時代の同級生とか、他の課の職員とか、プライベートの全然別の知り合いとか、いろいろ可能性はあるだろ。」

「....そうですよね....」

「でも、名前ちゃんが心配する事じゃない。これだけは言える」

「まぁ確かに私には関係無いことですから...」

「ああそうじゃなくて!あの2人にとって名前ちゃんは特別な存在。名前ちゃんを置いてけぼりにはしない。これは俺が保証する」

「....なんで分かるんですか?」

「なんでって言われてもな...男の勘だよ。女にもあんだろ?女にしか分かんない勘」



いまいち納得してないって顔だな
全く、狡噛の奴早く動けよな




「そういえば佐々山さんは、なんで潜在犯に...?あいや、話したくなければ結構ですよ!」

「気になる?」

「まぁ....はい」












俺は元いた席を離れて名前ちゃんの横にぴったり座る
近くに来ると分かるふわっと香る匂いは、あのメガネの男と同じだ



「な、なんです...ってわっ!」




いとも簡単に俺が上になると、いつも思うがいい景色だ。
男を知らない困惑した表情が、この上なくそそる
俺の下で全く動けないでいるのが、男にとっては何をしてもいいと言われているような物

....全く声も出ないのか
こういう時は効果は無いが、やめてとか助けてとか叫んでみるべきだ
ここまで無防備となると、とても監視官が育てた女とは思えないな



悪戯してみようと顔を近づけてみれば、縮こまって目を瞑ってしまう始末
それじゃキスしてくれって言ってるようなもんじゃねーか



「痛っ!何するんですか!?」


すかさず額を抑える姿は緊張感のかけらもない


「本当に襲うわけ無いだろ。あの2人に殺される」

「い、意味がわかりません!」

「俺が潜在犯になった理由が知りたかったんだろ?そういう事だよ。分かったら俺の気が変わる前に早く帰れ」

「えぇ?!急にですか!」

「じゃキスする?」

「し、しません!」



そう足早に、失礼しましたと俺の部屋を出て行ったのを目で見送る

ソファに残った体温に、キスくらいしておけば良かったかと後悔する












































1ヶ月後あぁなるって分かってたら、絶対襲ったのにな
残念だよ





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