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「すまなかったな、お前のせいじゃないのに怒鳴ったりして」

「いえ、謝らなければいけないのは自分です。まさか嫌々だったとは思わず....気付いていれば必ず止めていました」


自動販売機の取り出し口に転がり落ちて来た缶コーヒーを一つその手に渡す

毎度落ち着いた時に気付かされるが本当にどこまでも良い奴だ
いい加減信頼はしている
何かあれば名前を安心して任せられる
だが....問題は恐らく名前の方だな

睡眠不足でハッキリしない脳を覚ますように押し込んだコーヒー
出勤した際は大丈夫だと思っていたが、しばらくパソコンに向き合っているとやはり厳しくなって来てしまった
隣のデスクでは名前もまたしきりにしていた欠伸

....自業自得だが後悔はしていない


「名前さんは無事でしたか?」

「あぁ、特に何をされた訳でもないからな。何よりお前がすぐに伝えて来てくれたおかげだ。感謝くらいはさせてくれ」


実はあの騒動の直後、しばらくは拭えなかった焦燥感を名前に"説教"と言う形でぶつけてしまっていた時
"ごめん"と珍しく謝った声が唯一反抗したのは、

『でもあんな人でも似合ってるって、綺麗だって言ってくれたのに』

それで涙まで流されてしまった悔しさの反動だかは知らないが、昨晩は自分でも驚く程正直な愛を、甘美に漏れる嬌声に飽きる事なく被せ続けた
その全てが終わってからようやく自身の言葉を意識した俺は、ピロートークどころではないと顔を覆ったところ

『余裕無くて言えなかったんだけど、ハーフアップ良かったよ。あと、助けに来てくれてありがとう。嬉しかったし、ちょっとカッコよかった。私も愛してる』

などと胸元に潜り込んで来られ


「....宜野座執行官?」

「っ、あ、いや....すまない、何だったか?」

「自分は何も言っていませんが....」

「.....」


俺は何を思ったのか、左手にまだ半分程残っている缶を持ったまま、もう一つ同じ物を購入した


「....これはその、妻に渡そうと思って....」

「奥様はコーヒーは飲まれないはずでは....」

「....そ、そうだったな」





























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「名前ちゃん眠そうね...」

「ガムでも噛みますか?」

「すみません....」


朝日が登ってからの就寝は悪くは無かったけど、結局寝れたのは4時間にも満たないくらい
起きた直後はシャワーも浴びて気持ち良かったのに
いざ仕事が始まると眠気が襲って来た

六合塚さんから手渡された小さな包装紙を開けて、その中身を口に含む
少し辛いミントの味が広がっても....目が覚めたとは言えないような


「それにしてもびっくりしたわ、名前ちゃんが他の男と踊っちゃうなんて」

「トイレに伸兄を探しに行った時に手伝ってくれた人なんです。本当に手伝ってくれる前に見つかっちゃったので何かあった訳じゃないんですけど....せっかくならお礼くらいするべきかなって....」

「お礼ってねぇ....今回ばかりは申し訳ないけど宜野座君に同情するわ。こんな無防備な妻外に出せないわよ」

「反省してます....」

「でもどうだった?知らない男と踊ってみて」

「正直に言うと気持ち悪かったです。理由は分からないんですけど....」

「そりゃそうよ。今まで経験した男がご主人と慎也君じゃ世の男は皆もやしみたいな物ね」


なんて言葉に苦笑いしながらまた欠伸をする
筋肉痛のような疲れも相まって今日は絶対に出動があって欲しくない


「昨日の今日で寝不足って、宜野座君のお怒りが収まらなかったか....ちょっと甘過ぎる夜を過ごしたか。私は後者に賭けるけど弥生は?」

「え、ちょっと

「同じ選択肢には賭けられるの?」

「どうしてもって言うならOKよ」

「唐之杜さん!」

「それで名前ちゃん、正解は?」


休憩時間
須郷さんに謝って来ると言った伸兄とは別れて、私はここ分析室に来た
オフィスよりずっと暗くて、眠たい私には不正解な場所だったと気付いた時にはもう遅くて

注がれる期待の眼
相変わらずタバコの匂いが籠る部屋


「そんな、正解とかありませんよ!」

「その様子からして随分甘かったのねぇ、いいじゃない」

「まぁ、甘かったと言うか....最初は結構激し....あっ」

「あら!よく聞こえなかったからもう一回言って?」

「な、何も言ってません!」

「私達そう言う話大好物なのよ!激しかったってどんな感じに?」

「そんな事言ってないです!」


もう頭が全く回らない





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