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あまりにも衝撃的な質問




「.....名前、お前何を考えている」

「だから気になるだけだってば!」




嘘では無さそうな様子




「狡噛か」

「うっ....まぁ....」

「.....潜在犯の婚姻を禁止する法律は無い。だがお前も分かるだろ、俺達家族に何があったのかを」

「.....そう、だね....」



名前なら、合法だろうが違法だろうが俺が反対すると分かっていたはずだ
それでも聞いて来た

それを考えるとどうしても強く物を言えなかった





「.....ご、ごめん、ありがとう。それだけ」

「待て」




チェアから立ち上がった名前が僅かに開けたドアを、再び閉まるように押し込んだ




「.....どうするつもりだ」

「.....私は優し過ぎるって、その優しせで決めるなって言われた」
































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分析室に一人



大きなパネルスクリーンには相変わらず監視官宅の映像

その前で手元の小さめなモニターに流す交わる男女




いやぁー可愛いわ....
目を閉じて必死にしがみ付きながら、刺激に耐える様子
全く羨ましいわね
私も名前ちゃんと寝てみたいわ
どんな声を出してくれるのか気になるもの

その一方で監視官もまるで別人ねぇ....
普段の装備であるメガネも、隙なく着こなすスーツも無い
その下はもっとヒョロっとガリガリなのかと思いきや、意外と適度な体つき
しかも主導権握るタイプなのね!
何なのよ、このギャップの塊は




「あぁちょっと!見えないじゃない!戻って来なさい!」



カメラのフレームから外れてしまう表情を見たくて、もどかしくそのモニターを掴む

それでカメラの位置が変わるわけもなく仕方なく早送りをする







「.....何してるんだ?」

「っ!? し、慎也君....どうしたの?」


急に現れた人物に慌ててフォルダを閉じる



「いや、名前の画像が大量見つかったと聞いてな」

「あぁ、あなた非番だったわね。ちょっと待ってね」



そう弥生が押収して来たパソコンを開く



































「.....どう思う?ストーカーというには悪意が強過ぎない?それにもしストーカーなら監視官にも敵意が向くと思うんだけど....」

「確かに、妙だな」

「監視官に関しはほぼおまけ状態ね。あくまでも名前ちゃんに用があるみたい」

「.....名前がこいつと暮らしていた時は虐待を受けていたんだろ?」

「私もそう弥生から聞いたわ」

「その時、二人は正反対の生活を送っていたはずだ。それが何かしら影響している可能性はある」




真剣な顔して画像フォルダを漁る慎也君はどこか....





「....なんかスッキリしたわね?」

「....そう見えるか?」

「あの子に許してもらえたの?」

「.....先に謝られて参ったよ」



パネルスクリーンの中で自室に戻って来た名前ちゃんの姿に二人して見つめる



「勘違いするな、俺もちゃんと謝った」

「それで?どうだったの?」

「怒ってはいなかったみたいだ。だから改めて想いを伝えた。一応自分の気持ちに素直になれと釘を刺しておいた」

「.....大丈夫なの?そんな事言って。自ら負ける確率を高めたようなものじゃない」

「もしそうならそこまでだ。所詮、恋と愛は別物だって事だ。“恋愛”なんて名前には無理なんだと受け入れるしかない」

「....要は、慎也君には“恋”で、宜野座君は“愛”って言いたいのね」

「ギノは、あいつと名前の間では、俺と名前の様な感情と関係性は一生無いと言った。そして名前に対しても、俺が名前に向ける“好き”という気持ちは無いとも言っていた」

「まぁ恋人にはならないでしょうね、あの二人は。好き合ってるって感じじゃないわよね」

「あいつらにそんなのは必要無いんだろ。まぁ、これで名前が俺を選んでくれるなら、それはそれで信じるさ。そしたら言葉通り一生守り抜こう」

「.....ん?ちょっと!まさかプロポーズしたの!?」

「何も今すぐにってわけじゃないさ」

「はぁ....言動だけは大胆なんだから....」

「明日辺りギノが突っ掛かって来るだろうな。今の名前なら絶対あいつに言うはずだ」





もともとこの事件で過大なストレスを負ってそうなのに

これはイライラ度マックスな監視官を見る羽目になりそうね





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