第5話 時に飲まれる


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 びくりと震えて目が覚めた。意識がはっきりとしてくるにしたがって夢の記憶がなくなっていくのはいつものことだが、体の硬直感からいつもの夢だと分かった。

 枕元では上半身を起こした黒木がぼんやりと煙草を吸っている。少し動けば下半身がずんと痛んだ。気づいた黒木が首を動かし流し目をよこす。その整った顔から目を背けるように布団を目元まで上げ目をつむると、耳元に大きくて暖かい手の平が置かれた。その優しが心地よい。
 
「……殺された」

 夢なんて現実ではない。怖がる必要なんてどこにもないのに、なぜだか体が震えるのだ。
 掠れたか細い声には自分でも情けなくなったが、聞いた黒木の手は一層優しいものになった。
 
「夢でしょう」

 ゆったりとした声が降ってくる。ちらりと布団を下げて黒木を見上げると、優しい目が俺を見下ろしていた。ふわりと笑った黒木の頬を両手で包み近づけると、灰皿に手を伸ばし煙草をもみ消す。紫煙の残る唇に口をつけると苦い煙たさが香った。
 
「お前が俺を殺すんだろ」

 声にならない息のような声で囁くと、黒木は愛しいものでもみるかのような目をして笑った。そして溶けそうになるくらい甘い口調で言うのだ。
 
「ええ…ごめんなさい享幸くん」

 優しい目をして、優しい声で黒木が言う。慈愛のこもった手つきで髪をすかれた。
 
「逃げてもいいんですよ?」

 なぜだか腹が立って、黒木の腰に手を回しきゅっと抱きついた。さらさらとした肌はいつも以上に熱くて、紛れもなく黒木が生きた人間であることが分かる。そんな黒木の腰に頬を摺り寄せると、微かに黒木のモノが勃ちあがった。従順な体に面白くなり亀頭を親指でグリグリと刺激すると簡単に頭上で熱い息が吐き出される。

 すっかり固くなったモノを締め付けるパンツから取り出すと興奮に下半身が疼いた。さっきヤったばかりだというのに俺も、黒木も、もうコレだ。

 一瞬黒木の顔を窺い、その表情を確認すると熱く固くなった性器を迷いなく咥えた。瞬間ぴくりと黒木が動く。珍しく目を見開き驚いていた。
 
「享幸くん…っ」

 唾液が絡まり聞くに堪えない音が響く。喉奥を突かれる度に苦しさが興奮に変わっていった。先走りと唾液を合わせて飲み込み、喉できゅっと先端を締め付ける。
 
「はっ……」

 余裕のない吐息は色気に溢れていた。裏筋を舌で伝い、また先端までゆっくりと舐め上げていく。焦らすようにゆっくりと唾液で濡らした先端に舌を押し付け刺激を与え、同時に空いた片手で扱いていく。

 黒木の汗ばんだ手の平が肩に置かれた。力のこもった手が震えている。そっとその手に自分の手を重ねた。えずきそうになるのを堪え喉奥までくわえ込み、舌をねっとりと張り付かせて吸い上げた。
 
「…っ…くっ」

 びくりと震えたと思ったら、咥内に勢いよく吐き出される。数回にわたって出されたものが苦く口に残っていた。
 
「んっ…」
「はっ…は…」

 力の抜けた黒木の肌に汗が浮いている。濡れた黒木の性器の先端をもう一度舐め取り口を離すと、吐き出された精液を見せつけるように音を鳴らして全て飲み込んだ。口に残る酸っぱさに唾液を飲み込み震える。

 赤い顔をした黒木を見上げると、俺は勝ち誇ったようににこりと笑った。


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