4.憂いと太陽


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「なんで!? 病院なんて行かなくていいじゃん! ようちゃんの面倒なら俺が」
「悟利」

 苦々しい声で母が遮った。何かを堪えて絞り出すようなその声に出かけた言葉をぐっと飲み込む。見渡してみればみんなが同じような顔をしていた。感情的になって声を荒げる自分が子どもであることを見せつけられているようだった。

「……っ」

 分かっている。俺がどれだけ怒ろうが、皆同じ気持ちなんだ。辛いのも苦しいのも悲しいのも、俺だけじゃない。ここにいる全員がどうしようもなくなって立ち尽くしてる。それでも大人の肩書がある以上、彼らは感情に任せて暴れられない。わかったと認めたふりをすることしかできない。ただしおらしい顔をして感情を抑え込んで、これが大人の対応だと言う。

 そんな大人たちが本当は言いたくて堪らないわがままを、俺が言ってくれるのを待っているみたいだ。俺が駄々をこねることで、同じ気持ちの大人たちの欲望を発散させているようなもの。そんな役割の押し付けに腹が立った。

「これがみんなのためなの。悟利の、陽一くんの、栞里のためなの」

 思わず立ち上がった俺を宥めるように母が背中を撫でる。若干震えたその声を聴いてられなかった。俺だって、ただでさえ重荷を背負っている大人たちの余計な枷になりたくないのだ。行き場を失った悔しさに拳を握りしめることしかできず、力が抜けたように座りなおした俺を見て安心したように大人たちは話し合いを再開した。

 目前の四十九日をどうする、陽一を医者に見せろ、何科に行けばいいの、素人が宥められるものじゃない、これ以上不調を増やすな……

 聞こえてくる会話は耳を塞ぎたくなるようなものだった。

「……俺は嫌だ」

 ぽつりと呟いた声が誰の耳に入ったとも知れない。けれど向かいに座るようちゃんとよく似た目元をしたお姉さんはちらりと俺を窺った。

 俺のせいなのかな。俺がお母さんに相談したからかな。でも、どうすればよかった。黙っていればよかったのか?

 ようちゃんの異変に最初に気がついたのは俺だった。


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