4.憂いと太陽


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「っ……」

 顔を上げた時には頬が濡れてどうしようもなくなっていた。

 夕暮れの残滓がカーテン越しに手元を仄かに照らしている。はらりと落ちる花びらが目に付き視線を上げれば、窓際の乾いた花瓶に花が生けてあった。もうとっくにドライフラワーになってしまっている。そんなところからも流れた時の長さに気づかされる。

 止まらない涙がぽたぽたと垂れていった。
 ああ、もう本当にいないんだ。

「……姉ちゃん」

 手元の日記を持つ手に力が入った。小さな決意が胸に宿るのをひしひしと感じる。

 鍵を閉めなおし数字をバラバラにすると、日記を元通りに綺麗に収め、ちょっと迷ってから脇に抱えた。薄暗くなった部屋は肌寒い。手のひらで目元を拭い、そっと息を吐きだした。

「いいよ、俺に任せて」

 ダイニングへ降りると、テーブルのいつもようちゃんが座っている位置に赤い日記帳を綺麗に置いた。

 時は止まっちゃいけない。時間は流れ、世界はとめどなく変化する。だから俺が進め続けないと。そこがようちゃんの笑っていられる世界であるために。

 世界に彩はついているだろうか。そこはどんな場所だろうか。退屈か、刺激的か。楽しいこともあるかもしれない、悲しいこともあるかもしれない。でもきっと、それはとても豊かなものだよ。

 姉ちゃんの笑っていたこの場所は、とてもとても綺麗な世界だ。澄んだ水のように、日の光が透けているように。同じ場所を、世界を、ようちゃんも生きている。



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