2.夏の破片
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次第に勢いをなくしていった火球は力なくぽとりと地面に落ちた。
悟利くんの持つ線香花火はまだパチパチと燃え、ささやかなオレンジ色の光が膝を抱える悟利くんの顔を儚げに照らし出している。憂いを帯びたその表情に、明滅する線香花火が不規則に影を作っていた。
徐々にしぼんでいく光は最後にパチリと火花を飛ばすとぽた、と地面に吸い込まれていった。訪れた静寂と暗闇に、ほっと息を吐く義弟の息遣いを感じる。
お互いが微かに身じろぎをする布の擦れた音がした。虫の声に、近くのテントのほうでぱちぱちと焚火の燃える音がする。
何かと賑やかな悟利くんも黙ってしまえば恐ろしく静かだ。子どもたちの軽やかな笑い声が耳に入る。
「どうしてキャンプ、行きたかったの?」
そんなこと聞いて、どうするつもりだよ。自然と口から出た言葉に自分で呆れる。暗闇で顔が見えなくて助かった。悟利くんがふふ、と笑う。
「行ってみたかったから」
「虫嫌いだしインドアだし引きこもりで外に極力出たくない悟利くんが?」
「ようちゃんとならどこに行っても楽しいよ」
そういうことじゃない。そんなことが聞きたいんじゃなくて。
頭上でカラスが一声鳴いた。夜の闇にガサガサと得体の知れない音が響く。
「……探してるの?」
かさかさに乾いた声がどうにか空気を揺らした。砂漠を何日も歩き続けたかのような疲弊と乾きを持った声に、悟利くんが顔を上げたのを気配で感じる。
「姉ちゃんのこと?」
少しの暗さもはらまないあっけらかんとした声音だ。そんな悟利くんに少し戸惑う。
「まぁ……そう」
「ようちゃんがそう思うならそうなんじゃない?」
投げやりな物言いではなかった。顔を上げて、前にいるはずの悟利くんの顔を見つめた。
「悟利くんは、」
さっきまでオレンジ色に照らされていた義弟の美しい顔が青白く照らされる。水面のように透き通った神秘的な形貌に息を飲んだ。
雲に隠された上弦の月が顔を見せる。悟利くんはほほ笑んでいた。言おうと思った言葉が喉の奥で詰まってでてこない。
「俺は楽しいよ。ようちゃんといろんな場所にいけるの」
ふんわりとした声に溶かされるように、それ以上なにかを聞くことは拒まれた。
「そ……っか」
「うん」
悟利くんは見え透いた気遣いなんてしない。これはきっと、優しく巧妙な嘘だ。
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