第2話
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ちらりと流し目で俺を見た風間は、表情を変えることもなく話しかけてきた。今ほど隣に笹山がいてほしいと思ったことはない。
でもさりげなくすっと横にどいてくれる風間はやっぱり悪いやつではないんだろう。
「…お前、樋本と仲いいよな」
風間の低い声はよく響く。ボソッと呟くくらいの声なのに。その声は怒っているとも何も考えてないともいえた。
「晴久とは中学からの付き合いだよ」
まさか話しかけられるとは思っていなかった。
俺は度胸もない弱い人間だ。正直、今のこの状況では自分がなんで話しかけられてるのかは分からないし、風間が何を考えているのかもわからずとにかく怖かった。
自販機なんて行かなければよかった、なんて思っている。もともと人と話すことも得意ではないのだ。コミュ障に無理をさせないでくれ、と言いたい。
風間も風間でよく俺に話しかけようと思ったものだ。相変わらず整った顔で、何を考えているのか分からないほど表情に感情が出ていない。
「…あいつ、戻ってくる気あんのかな」
風間は俺に言ったのではないのかもしれない。もしかしたらもともと独り言で、俺に話しかけたつもりはないのかもしれない。
だいたい俺の顔も目も見ないし。
「なんか聞いてないのか?お前だいたいいつも樋本と一緒にいるし、樋本もべったりだろ」
「え、それ俺に言ってたの?」
あ、どうやらコイツ本当に俺に話しかけてたらしい。
とはいえ風間からこんな話を聞かれるとは思っていなかった。タイムリーというか、昨日ハルから相談というか話を聞いた後だったからか、すこし安心していた。
なんだ、風間も気にしてんじゃん。
ハルと風間は代々揉めていたサッカー部の中ではわりと異例といっていい無干渉具合だった。風間はサッカーさえできれば何も言わないと言われていたりする殺伐とした奴だ。
だからハルがあんなに悩んでいることを風間が気にしていたことが、俺には少し以外だった。
「風間は…ハルに戻ってきてほしいの?」
「?樋本はうちのエースだけど」
さも当然というような顔でそう言う風間を俺は思わず不思議そうに見てしまった。もっと冷たいやつなんだと思っていた。
「いつまでだらだらしてるんだろうな、と。出られないなら出られないで、けじめがあんだろ。むかつく」
あ、やっぱ噂通りの奴なのかもしれない。
でも風間の顔はやっぱり落ち着いていて、それはハルを責めているような顔色には俺は見えなかった。
他人が自分をどう思ってるかなんて、主観ほどあてにならないものはない。
「むかつくんだよ」
吐き捨てるように言った言葉に思わずぞくっとした。瞬時に周りの空気の温度が下がったような気がした。
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