番外編


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 瀬津がかわいい。
 惚気るつもりはないが最近の切実な悩みだ。
 
「晴久―――――!」

 ドタバタと足音が近づいてくる。バタァンッとけたましい音を立ててリビングの扉が開いた。ソファにだらしなく寝ていたが薄目を開いて瀬津を見上げる。
 おお…これはまた怒ってる…。俺またなんかやったっけ。
 
「作業着と白衣は洗濯別にしろっていつも言ってんだろーが!どうすんだよこれ!どろどろじゃねーか!」

 作業着も白衣も俺のだが、洗濯を回してくれたのは瀬津らしい。俺がやるよーと言っても口だけだからか、たいてい気づけば瀬津がやってくれている。大概こっちに来るときは実習やら調査で疲れ果てているからそうなってしまうが、なんだろう、嫁かな。
 
「んーごめんごめん」
「ごめんって困るのはハルだろ!?」
「そうだねー」
「……聞いてないだろ。寝るならソファで寝るな」
「んー…」
「…布団、敷いとこうか?」

 なんでこうも尽くしてくれるんだろう。俺も何かしてやりたいんだけど。
 屈んで顔を覗き込んできた瀬津の肩を掴んで引き込んだ。うぎゃっと変な声を上げて瀬津が倒れ込む。
 うん、あったかい。足を絡めれば身動きの取れなくなった瀬津が暴れるのをやめて溜息をついたのが聞こえた。
 
「ハルー…だから寝るなって。つかお前臭いよ。髪の毛牛の匂いする」

 ぺちぺちと頬を叩かれている感覚が遠くでするが、どうにも重い瞼は開かなかった。
 実地演習で遠くへ出るとき、たいていそのまま東京の瀬津の家へ転がり込んだ。バイクで飛ばして数時間。我が家に帰ったような安心感がある。月に一回会えればいいほうだ。
 電話嫌いの瀬津だからあまり電話もしていないし、会えないことがこんなにつらいとは知らなかった。それでも友達でいたころには見れなかった瀬津のいろんな顔が見れて心は満たされている。

 幸せだなぁと思う。強いていうなら、そう。悩みどころは今だに瀬津とシたことがないくらいだろうか。
 …いや、よく考えたらそれってけっこうどでかい問題じゃないか?

「っ!な、なにハル」
「目覚めた」
「さ、左様で…じゃあシャワーでも浴びてきてくれませんかね」
「一緒に入る?」

 べしりと顔を叩き瀬津が逃げ出す。動きが懐かない猫みたいなんだが、その顔は真っ赤だ。そんな瀬津を見て思わず笑いがもれる。

まあ、いいか。俺ががっつきすぎて瀬津が離れていくのも嫌だ。受け入れてくれるまでゆっくり待っていればいい。我慢の限界がくるまでの問題だ。
 お湯も貯めていてくれてたみたいで、シャワーだけじゃなく風呂まで入れる贅沢を味わいながらぼんやりとそう考えた。


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