番外編


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「待って。ローション、あるから」

 そう言って瀬津がベッドサイドの引き出しからボトルを取り出す。暗闇で瀬津の白い体が浮いた。受け取ったボトルからローションを手に垂らすとひんやりとした感覚が手を伝った。手を動かしてみると卑猥な音が小さく響く。目の前には瀬津の体。どくどくと心臓が高鳴るのが分かった。

 その時ローションを垂らした指を不意に瀬津が掴んだ。
 驚いて瀬津を見ると、どこか焦ったような顔で俺を見ている。またなにか不安に思うところがあるんだろうか。そんな風に思わせてしまうことが申し訳ない。

「やっぱ俺がやる」
「え、いや…」

 指についたローションを瀬津がからめとっていく。その感覚に背筋に鳥肌が立った。ゆっくりと指をなぞられるような感覚にローションのぬるぬるとした感触が追い打ちをかける。
 瀬津は片手を俺の肩にかけ、四つん這いになるようにしてローションをつけた指を自らの後孔へと持って行った。瀬津の顔がすぐ近くにあるだけで余裕がないというのに、この状況だ。

「……んっ」

 ぐちゅぐちゅと音が鳴る。肩を掴む瀬津の手に力が入り、時折びくびくと腰が揺れた。

「はっ……んう」
「…せつ」
「ん、もうちょい」

 どんな待ての仕方だ。普段は白い頬を今や上気させて、快感に力が抜け垂れた眉は見たことのない姿だ。見てはいけないものを覗いてしまったかのような興奮に下腹部が疼く。

「瀬津、もういいよ」
「え…?うあっ」

 肩に置かれた瀬津の手を引き、膝の上に瀬津が乗るような体勢を取った。すでに濡れた瀬津のものが俺の腹を濡らし糸を引く。そこにそっと手を這わせると耳元で瀬津がうめいた。体に力が入りびくりと震える。ゆるゆると動かせば抑えた声が切羽詰まったものに変わっていった。

 最初は触れるだけだったキスが深くなっていく。瀬津の漏らした鼻にかかった声はキスに食われて吸い込まれていった。
 腰を引き寄せていないと、達しそうな瀬津の体が跳ねて逃げそうになる。一回出させてもいいのかもしれないけど、なんだかそれはもったいないような気がして。
 瀬津の指が入ったままの後ろに手を伸ばせば、焦ったように瀬津が俺を見上げた。

「ま、まって、ちょっと」
「まあ逃げんなって」
「い、いやまってやっぱ無理」

 涙の溜まった目でぶんぶん首を振る瀬津の心臓の音は痛いくらいに聞こえてくる。熱い体は汗ばんでいた。
 細い腰を抱きしめ、もうすでに瀬津の指が入っている後ろに自分の指を入れていくと、圧迫感に瀬津がはくはくと口を動かした。

「いいところ、教えて」
「あっ…ん、え、ええ?」

 中で指を動かせば腰が跳ねた。

「ん、ここ?」
「ちょ、はぁっ…あぁ」

 顔を真っ赤にして睨んでくるが、その目はもう快楽が勝っている。涙がたまりとろけた顔でそんな風に睨まれてもまったくすごみなどなかった。普段の瀬津は黙っているときりっと涼しい雰囲気であるから、こんな顔をされるとかなりくる。

 この顔をほかの誰かに見せたことがあるのか。怖ろしいくらいに艶めかしい。
 こんな顔を知ってしまえば誰だって手放したくなくなるだろう。

「……いれていい?」

 こんなにしておいて、と自分でも思ったが声が震えた。笑えるくらいに緊張している。
 瀬津はといえば、今度はきゅっと目を絞り俺を睨みつけている。さっきまで情けなく垂れていた眉は眉間で寄せられていた。

「…っやく、いれろ」



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