第4話
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W大を第一志望にすると面談で言った時は、さすがの担任も面食らっていたが、私立で受験科目が少ないことと俺の模試の上がり具合を見てようやく納得してれたようだった。
あっという間に夏休みも半ばになり、お盆の時期になっていた。いつもと違うのは、部活がなく毎日家に引きこもって勉強をしているところだろうか。
たまに気分転換に学校の自習室に来てみると、たいていハルはいつもそこにいた。
クーラーの風が一番当たらない明るい窓際の隅の席。
でも未だに話しかけることもなく、夏休みが始まってからハルと口を聞いたことは一度もない。気づいているのかいないのか、気づかないふりをしているのか。問題集に向かうハルの気迫は明らかに話しかけられることを拒んでいた。
一番ショックが大きかったのは、目があって即座にそらされたことだ。我ながら些細なことだなと思う。その時もし少しでも気まずそうな表情や、苛立ちを含んだ表情で見られれば俺も少しは納得できたのかもしれない。実際は表情を変えることもなく、ただ目を逸らす、という無関心だ。
大きなため息は誰にも聞かれないのをいいことに、飲み込むことなく盛大にあふれ出た。
窓を全開にし、クーラーで冷え切った部屋に熱風を送り込む。シャーペンを放り投げ床に仰向けに倒れた。何かに集中することで考えたくないことを放り出す、という自分の性格は健在のようだった。バレーが勉強に移り変わっただけのこと。
散らかした床に落ちていたこの間の模試の結果をぼーっと眺める。どの教科の偏差値も前回の結果の10は上がっている。まずまずの結果を見て俺は寝転がったまま頭を抱えた。
「10なぁ〜10上がったところでまだまだなんだよなぁ〜」
冷えた畳に額を押し付けごろごろと転がっていたが、思い立って充電器にさしていたスマホを引っこ抜くと浩二さんに電話を掛ける。
「はぁ〜い、お兄さんは今お取り込み中だからかけなおしてくださいね〜」
ワンコールでつながった浩二さんに噛みつくように捲し立てる。
「ねぇ聞いてよ浩二さん!」
「いや、お前が人の話聞けよ」
「偏差値10上がったぜ!」
「そりゃよかったじゃない、じゃ、また」
相変わらず、飄々とした口調でそれだけ言うと即切られそうになる。懐かしさに思わず笑みがこぼれた。
「ちょっと待てよ、息抜きに付き合ってくれても良くない?」
「うるせぇ、かけ直すから待ってろ」
相変わらず口悪いな、なんて思いながら切れた着信画面を見ていると、何回目とも知れない溜息が漏れた。
俺が言いたいのはこんなことじゃない。どうしたらこのもやもやが晴れるのか。何かが変わってきているのだ。俺とハルの間で、俺とハルが。
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