第5話
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「あーいいなぁ」
二人だけの世界とでも言えばいいのか、理解し認めあう。初心なカップルから見れるのはそんな歩み寄り。一方通行ではない、触れ合い。
気づけばうらやむような声が出ていた。
「なんかさぁ、結局これまで晴久にも浮いた話がなかったし。リア充見てると一周まわって微笑ましくなるというか」
「お前たった今いいなぁなんて言ったじゃねーか。珍しいとか思ったとこだったのに」
お互いぼーっと他所を見ながら声だけで会話が進む。誰もいない屋上は静かでなんだか不思議だった。
「うらやましいのは、なんていうか。お互いがお互いを理解しようと、支えあおうとしてるとこっていうかさ」
「…?そんなん彼女じゃなくてもいいだろ、俺と瀬津だって対して変わらないんじゃないの」
頭の上にはてなマークを付けてハルがこっちを向いた。その視線を無視して、ふっと笑う。そっか、ハルにしてはそう変わらないのか。そんなこと俺に言ったらだめだよ。
「俺が言ってんのは恋人としてのこと。友達じゃない」
「俺がわかんないのはそこなんだよな。下手に付き合い短い恋人なんかより、自分のことずっと近くで見てきた友達のがよっぽど信頼関係あるし無駄にストレスもないし」
でもその友達を抱けるのか?
違うんだよ。恋愛感情はそこにない。恋と友愛。恋ってなんだろう。俺はお前のことを考えると、息も出来ない。
「だから晴久は彼女作んないって?」
横目でチラリと伺うと、遠くを眺めたハルは曖昧に笑った。
「んー…どうだろうね。瀬津は知ってると思うけど、俺って思った以上に冷めてるんだと思う。相手が誰だろうと、人としゃべるのは疲れるだろ?だから、たぶん面倒なんだと思う。一人でいられる時まで他人のことを考えなきゃいけないってのが」
正直こういうところが詩悠さんとハルの似ているところだと思う。なんだかんだで気を許している相手は少なくて。うんと小さいときから人付き合いを知ってしまっていたからか、同世代よりもずっと大人で一歩引いたものの見方。
「…いつかできるよ。そんなこと全部ほっぽってこの人が知りたいって思える人」
そしてそれは俺じゃない。
晴久が心を許してるのは俺だよね、俺だけしかいないんだよね。だからきっと俺でいいんだよ。恋なんてしなくていいんだよ。友達くらいがちょうどいいなら、ずっと俺だけ見てればいいよ。欲だって吐き出させてあげる。愛情だってくれてやる。
…なんて、バカげた刷り込みだってできただろう。
呟いた言葉にハルが肩を落とした。
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