第6話


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「もう正直どうでもよくなってくるなホント。俺今日の試験がラストだったから、もう落ちてようが受かってようがいい気がしてきた。わりと良い私立も合格もらえたしな。できれば公立行きたいけど」
「結果はいつ出るんだ?」
「来週。卒業式には間に合わないけど。浪人はしないし、今年度には決まるよ」

 肩を回しバキバキとすごい音を立てるハルを見て、緊張してたんだなと当たり前のことが分かる。

「とりあえず本当にお疲れ」
「おう、ありがとう。お互いにな。瀬津はどうだった、決まったのか?」

 無意識に俺の進学先は知っていると思っていたが、聞かれて思い出す。当たり前だが、二か月近く会っていないのだ。お互いの近況なんてほとんど知らない。

「W大は駄目だったけど、もともと第一とはいえ挑戦校だし。本命は受かったよ」

 言うと、晴久は俺の目をじっと見つめ溶けるような笑みを浮かべた。今までに見たこともない、慈愛のようなものを感じさせる笑顔だった。
 ヘラっと笑ったまま顔が固まるのが分かる。汗がぶわっと顔に広がった。心臓がうるさいほど胸を叩く。

「そっか、よかった」

 つめていた息を吐き出すようにそう言われると同時に、注文した料理が運ばれてきた。なんとかこの間をつないでくれたナイスタイミングな店員さんを心の中で思わず拝んだ。

 流石に試験で疲れていたのだろう。ご飯が来ればハルはすごいスピードで箸を動かし始めたが、会話が止まることはなかった。

「今はまだ結果待ちだけど、試験は終わったんだ。瀬津、旅行行こう!」
「お、え?あ、うん。行こう」

 キラキラとした目で言われればそう言うしかできなかったが、そんなことしたら俺の心臓がもたないかもしれない。

「瀬津、大学東京だもんなぁ。今の内に目いっぱい遊んどかないと、もう会えないじゃんか」
「…そうだな」

 果たして俺は一度離れてしまって、もう一度顔を合わせることができるのだろうか。ハルとはどうにか繋がっていたい、このままの関係でいたい、ずっとこの仲でいられたらいいのに。とそう思っていたが、そんな自信なんてひとかけらもないのだ。

「どこ行くかなぁ」

 ハルはすごい勢いで食べ終わると、満足そうな顔で水を飲んでいる。

「俺も東京、行ってみたいな」
「そんな楽しくねぇぞ」
「おいおい、そういや引っ越しとかは?」
「四月に入ってから。でも東京の家に戻るだけだから、引っ越しっていっても特に持っていくもんもないし、体だけ行くようなもんだから」
「ほえ〜ああ瀬津の家もいいな」
「それだけは駄目」

 あのヒビの入った鏡だとか、へこんだ壁だとか、見られたくないものや説明も出来ないようなものでとっ散らかったあの家にハルを呼ぶことはしたくない。

「ええーじゃあJKぽく例のテーマパーク」

 むすっと拗ねたように頬を膨らませるポーズは、整った顔立ちでしか許されないものだろう。俺のこのフィルターを通して見れば、それはもう手を伸ばしたくなるくらいに可愛く映るのだ。

「男二人で行くのか」
「っはは、ムサイな」

 万々歳だコノヤロー。

 心の呟きが顔に出ないように気を付けながら、その日は東京に行くということが決まり店を後にした。


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