第6話


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 俺はずっと怖かったよ、とハルが言った。
 
「え、何が?」

 明かりを落とし布団に潜り込んだだけで、頭も目も冴えている。しばらくぽつぽつと話をしていたが、会話も途切れ始め、寝落ちたのかなと思った時だった。
 
「怖かった。お前が」
「…え、ええ?…なんで」
「あっはは、なんでかねぇ」

 思わず寝返りを打って隣のベッドの方を向く。閉め忘れたカーテンのせいで、外からの光が入ってきている。思った以上に都会の夜は明るかった。ハルの横顔を青く照らしている。

「…ねぇ、瀬津。一つ聞いてもいい?」

 小さく首を傾けたハルと目が合う。ちらりと目が光った。何を言われるのかまるで心あたりがないうえ予想も出来ない。緊張で動悸がした。
 
「…何?」

 大型トラックが通りを通り過ぎる音が聞こえる。
 ハルはくすりと笑った。
 
「瀬津学校休んでる時、いつもどうしてたの?」

 どうしてた…?

 泣いて泣いて、過呼吸になって過食に吐いて…。熱がでたりでなかったり、それよりも叫びだしたくてどうしようもない感情を何かにぶつけたくて、でもそれができなくて。ものにあたってはいけない、ということは小学生の時の教訓だ。一人で抑え込むしかなく泣き叫んで自分をビンタしていた頃が頭に浮かぶ。

 思い返せば確かにかなり落ち着いたんだな、と分かる。
 
「どうしてた…生きてたよ、なんとか」

 何を言うにも、どうにも説明することができずそう言うと、ハルは悲しそうに笑った。その顔に申し訳なくなる。弁解したくてたまらなかったが、説明するわけにもいかなかった。うまく説明できる気もしない。

 ハルは困ったように笑った。見慣れた笑顔だ。
 
「怖かったんだよ、俺は。瀬津っていじられキャラだったわりに、へらへらふわふわしすぎて掴みどころもなかったから。それなのに急に学校来なくなるし、何かと思えばあきらかにげっそりして学校来るし。しかもそれが一回じゃない」

 転校生でそれはいろんな意味で目立ってたよね、と言われる。転校生なんてワードが俺に使われることがひどく懐かしい。
 
「何か喘息とか持ってたっけ」
「…いや」 
「…」
「あれは…あれは…えと」

 何か言わなきゃ、でも何を、と迷ってるうちにハルがいいよ、と遮る。別に無理に聞きたいわけじゃない、と。
 
「もういいんだけどね。今は、もう。この一年で瀬津だいぶ変わった。俺が怖かったのは、あの時の瀬津の壊れる寸前みたいな雰囲気だよ」
「…俺、変わった?」
「明るくなった、かな?ま、元からつつけばアホだったけど」

 言いつつハルはまだどこか納得のいかないような顔だった。その表情に怖くなる。このままじゃ嫌われるのかな、見捨てられるのかな。そんな思いが胃を縮める。
 
「瀬津さ…覚えてないかな。俺に一回さ、殺してって言ったんだよ」
「…え?」


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