ネオンの微熱


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「あ、あの…樋本?」

薄く透けてしまいそうなのに凛とした瀬津の目が遠ざかり、涙のたまった大きな瞳が目に入る。

「……ごめん。木下」
「あ、あっ、そ、そうだよね。…男に好かれるのなんて気持ち悪いよね…」
「いや、ごめん、そうじゃなくて」

ぱっとしたを向いて震える肩が目に入り、後ずさった木下の腕を思わずつかんだ。

「…お前が男でも女でも…そこは関係なくて。俺、そもそも好きっていうのがよく分からない。性別の問題じゃないんだ。…ごめん、傷つける気はなくて、そういうんじゃなくて。あの、ほんと違うんだ。男が男を好きになることが気持ち悪いんじゃなくて。どちらかと言えばそういう、純粋な感情ろくに持ってない俺が悪いっていうか…」

ぴくっと木下が震えた。そろそろと顔を上げる。潤んだ上目遣いで女の子のように高い声を掠れさせ、言った。

「え、じゃあお前童貞なの?」
「は?」
「……っぐ……っはは…ひっ」

木下は口元に手をあて、肩を震わせ……笑っていた。
予期せぬ反応に頭の中ではビックリマークが浮かんでいる。

いや、童貞で悪いかよ⁉俺以外にも山ほどいんだろ、童貞なんて。そりゃたまるもんは溜まるよ?男子大学生だぜ?セックスしてぇ〜〜なんてすっげぇ思うよ?でもさ、だから面倒なんだよ俺。しかも外面上セフレなんか作れねえし、そもそも俺がクズである物的証拠残したくないし。第一、俺完璧主義だし?そもそも俺が悪いんじゃなくて、周りの人間の俺に対する先入観が悪いんであって?

まあ何が言いたいかって。つまり、

「笑ってんじゃねーー!!!童貞で悪いかぁーーーーー!!!俺だって誰かを好きになりてぇよ!!こいつとセックスしたいって思う相手が欲しいわ!てか俺だってセックスしてぇーーーー!!!」

木下からの告白は思いもよらない形で俺が恥をさらすことになり、そしてただ、それだけだった。

木下はそのままげらげらと笑い続け、かわいい顔を笑いすぎて崩壊させ泣き始めた。

「ひっく…なんなんだようお前…そんなにいい武器持ってんのに、もったいなすぎんだろ…ぐひっ、てか、ど、童貞…あはっそんなに顔も性格もいい癖して、え?恋愛出来ない?あっはっははは!俺のほうがましだわ、好きになんのが男でも俺の方がましだろ、え?」
「あーあーはいはい。あんたの方がましですね。どうせ童貞じゃねえんだろ」
「は?俺も童貞だわ」
「いや、なんっなんだよ」
「俺は処女じゃないだけですー」

もうわけわかんねー。たいがい木下もかわい子ぶったゲス野郎ってか?もはや好感が持てるね。


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