ネオンの微熱


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「はぁ笑った…」
「ざけんな」
「あ〜らら。口悪い。俺の恋心を返してよ」
「本当に俺のこと好きだったのか?体目当てじゃなく?」

「まあそれもあるけど。俺そもそもノンケ好きになることないし。お前が二回目くらいかな。…そんだけ樋本は魅力的だったんだよ、俺のこと好きになってほしいって思ったし、こいつはどんな風に人を抱くんだろとか思ってさ。でも…ふっ、ど、童貞…ああーなえたわ」
「そりゃどうも」

どんだけ口悪いんだコイツ。可愛いなんて見た目だけじゃねーか。

「でもさ、樋本。俺だってお前に好きになってもらいたくて頑張ったんだぜ?いままでつきあってきた人もみんなゲイだし。ノンケだから男とか抵抗あんだろうなーって思って俺めちゃくちゃ身なりに気ィ使ったし。まあ元がいいんだけど。嫌悪感がなくなってくれるくらいには俺だって、目の届くところには努力した…けど童貞は願い下げだわ」

「最後の一言がいらねーんだよ…てかそのわりには関わろうとは思わなかったの?」

純粋な疑問だ。仲良くなったほうが手っ取り早いだろうに。

木下はどこか陰りのある笑顔を見せた。そんな表情が突然瀬津と重なり、息を飲む。何と瀬津を重ねてんだ、似てもねえだろうに。

「だって友達になったらもう終わりじゃん。俺のこと、友達としか見れなくなるでしょ」

まるで子供を諭すように木下が言う。その表情は最初見たようなキラキラとしたものでもなく、さっきまでのようにげらげらと品なく笑う様子とも違う。しょうがない、というように笑って見せた。

なんで、そんな顔をするんだ。

頭の中では最後に会った時の瀬津が消えてくれない。やめてくれよ、そんな顔すんなよ。

「俺はお前と友達になりたかったわけじゃねぇの。お前が好きだったの」

ハルはただの親友だよ。瀬津の声がこだます。

「じゃ、俺もお前のこと忘れるから。樋本も俺のことは忘れてな」

そんなに簡単に忘れられるのか。少なくとも俺にはそう簡単には忘れられない。幻滅させたのは俺だが、それがどうした。忘れられたくないんじゃなくって、ただ俺の存在はそれだけものもなのか、と。瀬津にとっても、そうだったのか。

俺がぐるぐると考えている間にも、木下は俺の言葉を聞くこともなくまっすぐに去って行く。つなぎの後ろ姿が小さくなっていく。小柄な後ろ姿はなんら変わらない。ぴんと伸びた背筋がぶれることはなかった。ただ引きずり気味の長靴がざさ、ざさと寂しい音を立てていく。

誰を好きになるかはともかく、人を好きになれるだけましだろって、ほんとにそう。男に告白されても、女に告白されても何も感じない俺がただ空っぽな人間なだけで。

頭を抱えたくなった。焦燥感が全身を駆けていく。

瀬津に会いたい。

こんな時、もう俺の話を聞いてくれるような奴はいないのだ。


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