3話 超えて堕ちて、後で結べ


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「男の体なんて触っても気持ちよくないだろ。巨乳でも柔らかくもなくてごめんね?」

 にやりと笑った先輩は、俺のベルトをいつの間に外していたのか、パンツ越しに微妙に形を浮かせているモノを撫でた。男に触られているというのにだんだん大きくなる自身に、自分でも恥ずかしくなる。初めて他人に触られるのが男だなんて、想像すればなんだか悲しい。

 先輩は躊躇なく取り出したちんこを扱いていく。俺は細い先輩の腰を抱き引き寄せた。おでこがぶつかり、熱でもあるのかというほど先輩が熱いことを知った。

 視線を下に向ければ、俺に跨った先輩のモノもしっかりとスラックスの下から主張している。先輩のベルトを外しにかかれば先輩はちらりと俺を見上げた。
 
「久世谷くんってホモなの?」
「それを先輩が言うんですか?」
「だれがホモだよ。俺はイケメンが好きなだけ」

 眉を寄せて否定した先輩の顔が赤い。取り出したモノをこすり合わせるようにして握る。

 最初はなんだか乗り気じゃなさそうだった先輩も、与えられる刺激にだんだん敏感に反応を見せてきた。

 他人のそんな場所なんてまじまじと見ることなんてないし、ましてやこんなに勃たせているところなんて見る機会もない。興味深い目で張り詰めた先輩のモノを見つめていれば、先輩の手で顔を上げさせられた。
 
「せっかくなんだし、顔見せてよ。久世谷くんがイくとこ見たい」

 ぎこちない笑顔で荒い息と共に吐き出された言葉に安心する。
 この人の下心は恋愛感情とはまったく別次元に存在している。
 
「じゃあ、もっと…」

 握った手をさらに動かせば、お互いの息が上がっていく。こみ上げる射精感に目をつむりそうになったが、せっかくなら俺も先輩がイくところというのを見たい。

 俺に跨った先輩の顔を見上げると、唇をぎゅっと噛んでいる。つり目気味の大きな目は今は薄目を開いたくらいになっていた。その潤んだ目で俺のことをじっと見つめてくる。

 噛みしめた唇に親指を当てると、濡れた唇が小さく開いた。
 
「……はぁっ」

 そのまま指を口の中に突っ込み開かせる。吐息が漏れる程度だった先輩の口からは、堪えるような声が微かに漏れ始めた。

 ぴくぴくと腰が痙攣する。
 まだ、イけない。
 
「ふっ……んん」

 お互いのモノから垂れる先走りで、最初こそ聞こえなかった水音が混じり始めた。

 俺の肩を掴む先輩の手に力がこもる。食い込んだ爪が少し痛い。

 手のひらに感じるのは、熱く限界まで張り詰めた野郎のモノ。正直男くさいこれのどこに興奮しているのか分からなかった。男が感じているなんて、本来なら見ることのない場面だからだろうか。開けるなといった箱を開けたくなるように、見るなと言われたものが見たくなるように。

 ふと先輩にやらされた乙女ゲームのキャッチコピーが頭に浮かんだ。
 
 『イケメンたちとの禁断の恋!?まるで学園生活を覗き見してるみたい!』

 ツッコミ所は無視しよう。複数人と恋してるなんてそれ浮気だろう、とか覗き見してんじゃねぇ、とか。

 まぁ言いたいことは、人間誰しも“禁断”という響きに弱いんだろうということだ。
 
「はぁ…あっ」

 例えば、陸上部短距離エースの先輩が俺に跨って唇噛みしめて喘いでいる、とか。瀬戸の顔が浮かんで、何に対して思うのかも知れない背徳感を感じた。

「っ……出っ」
「………んっ!」

 はだけているとはいえ、万が一制服を汚さないように手のひらで二入分受け止める。くたりと力の抜けた先輩が背中に腕を回して首元に顔を埋めた。

 密着する体は汗ばみ、大きく息をしていて、その心臓の鼓動がはっきりと伝わってくる。イったばかりで激しく早打ちする鼓動を聞きながら、俺もまた息を吐き出して余韻に浸った。

 先輩が動く気配はない。落ち着くまではじっとしていたいタイプらしい。徐々に静かになっていく息遣いと心臓の音を聞きながら、首元にうずまる先輩の髪の毛に頬を摺り寄せた。柔らかい感触が心地よい。

「………」

 もぞりと先輩が動き、べっとりと手のひらについたままだった二人分の精液を拭い去っていった。

「…あっはは…久世谷くん、やっぱり溜まってたんだ……」

 顔を上げた先輩が、未だに表情筋の緩んだ顔で笑っている。

「久世谷くんのせーえき、俺より濃くて多い…」

 にちゃ、と音を立てて先輩が手を握る。

 俺はといえば、恥ずかしいことこの上ない。

「先輩、手出してください。そんなばっちぃもん」
「ばっちいとは失礼な!久世谷くんのだぞ!」
「お持ち帰りしないでくださいね、ヘンタイ」

 ポケットから取り出したティッシュで、渋い顔をする先輩の手からもろもろを拭い取り、先走りで濡れたお互いの腹を雑に拭いた。

 覚束ない手元で先輩がシャツのボタンをかけていく。バッキバキに割れた見事な腹筋が隠れていくのを見ていてなんだか勿体ない気分になる。

「にしてもほっそいですよね、先輩。そのくせ筋肉だけは凄いし」
「あ、あんま見んな…」
「俺の体ガン見しながら言わんでください」

 ついさっきまでちんこ付き合わせて抜き合いしてたってのに、そんなものどこ吹く風だ。立ち昇る汗臭さと、変に倦怠感の残る体に俺は未だにくらくらする。

 先輩は楽しそうに声を上げて笑うと、「よっこいせ」と言いながら俺の膝から降りていった。二人してカチャカチャとベルトを締めながら教室へ戻る準備をする。

「今日、放課後は?」
「それ帰宅部に聞きます?」
「ほんっと暇人だねぇ君は。部屋借りとくわ」
「…うす」

 何事もなかったかのように水筒と弁当の袋を持った先輩がペタペタと歩きながら帰っていく。またも取り残された俺は、ペットボトルの冷えたお茶を一口飲み、呑気に快晴の青空を見上げた。

「…そういえば今日、キスしてない」

 唇から垂れたお茶を拭いながら、そんなことを思った

 胸の内では妙な動悸と誰も知らない新しい遊びを覚えた子どものような不思議な高揚感がもわもわと湧いていた。

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