3話 超えて堕ちて、後で結べ


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 唾液が糸を引いて、先輩が離れていく。うっとりと笑う先輩の顔は特別整っているわけでもないのに、醸し出す雰囲気がどことなく魔性を感じさせた。

「えっろい顔」
「俺が?久世谷くんに言われたくないなぁ」

 くすくすと笑いながら手際よくベルトを外していく。慣れきったこの空気感に、何を疑うでもなく反応する体。パブロフの犬とか、俺も馬鹿にはできないかも。

 いつものようにお互いをぶつけてこすり合う。至近距離で吐き出される息は熱くて、徐々に呼吸は上がっていく。触れる肌が熱かった。

「…俺、挿れられたことしかないから、挿れるのがどんだけ気持ちいいかは知らないけど…ただ腰を振って気持ちよくなりたい久世谷くんにはちょうどいいかもね…」
「…はっ、何の話…?」
「ん…セックスの話」

 頬を上気させた先輩が顔を上げ、にたりと笑った。

 先走りが嫌な音を立てる。それを手になすりつけた先輩がおもむろに自身のズボンを下ろした。また綺麗に筋肉の浮いた太ももがよく見える。

 突然どうしたのかと思えば、何事もなかったかのようにまた俺の膝の上に跨りなおす。

「ぼさっとしてないで、手動かして」
「へ?あ、はい」

 大きな猫目を細めて言うもんだから、素直に従いお互いの立ち上がったソレをまた握った。先輩は片手を後ろに持っていって、何か後ろを弄っていた。

「久世谷くん、イきそう?」
「ん…そろそろ…」

 さっきから、先輩の口からは微かに声が漏れている。それは何かを堪えるような少し苦し気なもので、少なくとも、今までただ扱いているだけじゃ聞いたことないような声だった。

「…じゃ、もう少し我慢してね」

 急に根元を押さえてきた先輩の顔を思わず見つめた。出したくても出せない、感じたことのない焦燥感。唇を噛みしめた先輩も苦し気な顔をしている。

「……はあっ…久世谷くん、事故ったらごめん」
「え、なに」
「んっ…んぅ…っ」

 先輩が俺の根元を持って、ケツに俺のを挿れていく。

 え、なにこれ。ありえないだろ。

 男同士って、そうやってすんの?これ本当に入ってんの…?

「はぁっうあ…あっ」

 ずるずると飲み込まれていくところを凝視した。先輩の口からはいつもより大きな声が漏れている。

「はっんっ…ちょ、ちょっと…はっ、待って先輩っ」

 そんなことより、ぎゅうぎゅうに締め付けてくるこの強烈な感覚に頭が飛びそう。ただでさえイきそうだったところ寸止めされてんのに…

「んぐ……うっ」
「はは……気持ちいい?そりゃよかった…」
「はぁっ、やば…うっ先輩…」

 先輩が肩に捕まってゆっくり動くたびにナカがきつく締まる。今まで感じたことないくらいの快感で下半身にびりびりと甘い電流が走った。

 されるがままに先輩が動いていたが、気づけば我慢できずに自分でも腰を動かしていた。苦し気な声を上げる先輩の息がダイレクトに耳に当たり、さらにそのスピードが増していく。もう、限界だった。

 先輩痛くないのかな、とかナマで出すとか最低だろ、とか、悲しいことにそんなことは頭から消え去っていた。

 細い腰を掴んで打ち付ける。
 目の前の先輩の顔も、声も、前に見させられたAVとは比べ物にならないくらいエロかった。

「はあっ……出るっ…くっ…」
「あっ…んあっあぁ」

 どくどくと先輩のナカで脈打っているのが自分でもわかる。痙攣したように震えていた先輩が、慌てたように俺のを引き抜いた。外気を感じて虚しくなる。

 すぐにティッシュで事後処理をし始めた先輩は、若干焦点の怪しい目をしていたが、それもいつものように笑われて分からなくなった。糸のように細くなった目で笑って先輩が首を傾げる。

「気持ちよかった?」
「………凄かった…」
「あはは、俺もいいもん見させてもらっちゃったぁ〜。抜き合いしてる時なんかと比べ物にならなかったよ、久世谷のイキ顔」

 頭が回らない。なんかすごく…凄かった。
呆けているうちに先輩が俺のモノまで拭ってくれている。なんか立場がいろいろおかしいような気もする。さすがに自分でやろうと手を伸ばすと、その手を先輩がぴしゃりと叩いた。譲る気はないらしい。

 ルンルンしている先輩が俺を見て、またにこりと笑った。

「次は事前に言ってちょうだいね」

 普通じゃない俺たちの関係に、なんの疑問も感じないくらいには今の俺は毒されている。

 先輩は火照った顔で余裕そうにそう言ったが、それから数日、この人は俺の前に姿を現さなかった。


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