4話 シークレットダーリン


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 はだけて見えるようになった、細身ながらのたくましい筋肉も、もうすっかり見慣れたものになっていた。今日も先輩は俺に跨る形で乗っかり、自分の手でほぐしては手を添えて勃ち上がった俺のモノを慎重に飲み込んでいく。
 
「…先輩いつもこの体位ですけど、楽なんですか?」
「んっ……うん…そう、だね…」

 苦しそうな声で、眉を寄せて囁くように言う。先輩は年上だからなのか、挿れられようがいつもの余裕の姿勢を崩すことがなかった。

 しかも触れさせてももらえない。俺が先輩の後ろに手を伸ばそうものなら、すぐにはたかれる。それが何か嫌で、入った瞬間動き始めようとする先輩を腰に回した腕でぎゅっと抱き寄せた。
 
「んぇ?どした」
「……そんなに急がないでよ…」

 されるがままに納得いかず誤魔化せば、何を勘違いしたのか先輩は気づいたようににんまりと笑った。
 
「もしかして久世谷くんって早漏?いつも我慢ばっかしてるからだよ〜」

 言わせておくのも悔しいけど、反論する気にもなれない。頭の中エロイことばっかなくせして、日ごろから最低限しか抜いていないから。

 だいたい先輩の困るところは、こういうところだ。

 いったいどこまでが真面目で、どこまでが冗談なのか。例えばこの行為は、先輩にとっては遊びに過ぎないのか。

 なんてことを考えたが、俺にとっても先輩は都合のいい性欲処理の相手に違いなかったから何も言えない。

 遊びだろう。先輩にとってそうであったとしても、なかったとしても。俺にとってはそうなのだろう。ただの興味で?好奇心で?成り行きで?

 言い訳なんてできない。

 ただ腰を振って気持ちよくなりたい、なんてよく言ったものだ。

 なんだかもやもやする。
 
「ねぇ久世谷くん、まだ?まだ動いちゃ駄目なの?」
「…うん」

 いつだって主導権を握っているのは先輩だった。はじめにキスをされた時だってそうだった。それからも、俺の隙をついて仕掛けてきては手慣れたキスをしてくる。挙句こんな都合のいいセックスまでするようになっても、俺が主導権を握ることなんてなく、いつだって先輩がやりたいようにやっていた。

 俺は部活に入ってたこともないから、厳しい上下関係だとかはあまり経験したことがない。それでも、年上の人にはやっぱり引いてしまう。だから俺も先輩にやりたい放題させてきたのかもしれない。

 でも、これはセックスというよりなんというのか…。突っ立っていれば気持ちよくなっている…みたいな。俺はマグロ女か?
 
「……先輩、背中痛かったらごめん」

 今日こそ俺が主導権握ってやろうじゃないか。

「え、なに?…うわっ」

 寒く…はないだろう。屋上のコンクリはすっかり温まっている。対面座位で俺に跨っていた先輩の頭を支えて、そのまま押し倒す。挿れたままだったから、一瞬ナカを掠ったらしい先輩がぴくりと跳ねた。
びっくりしたように目をパチクリさせる先輩に、俺の影がかかっている。新鮮な眺めだ。
 
「え…今日、これでするの…?」
「ダメ?」
「い、いや別に…うわ、久世谷くんかっこよ…このアングルしんどいんだけど」
「あっそ。先輩もかわいいよ」

 押し倒されて、普段は眉にかかっている軽い前髪があちこちにとんでいる。その先輩の柔らかい髪の毛に指を通した。普段と違うからか、先輩は戸惑ったように顔を赤くしている。いまさら恥ずかしがるところなんてないだろうに、そんなところで純粋がられても困る。

 だいたいはじめてでもなかったくせに。
 
「でも、これだと俺動けないんだけど」
「俺が動くからいいじゃん。先輩自分で腰振りたいの?」
「う…ほどほどにしてね…?」

 手のやり場に困ったらしい先輩が落ち着きなく腕を動かす。鬱陶しいからその手に自分の手を絡めた。
 
「なんでしたっけ…雰囲気作れる手のつなぎ方?」
「君けっこうねちっこいな…そんな前のこと忘れちゃえよ。さっさと動いてくれる?」

 珍しく不機嫌に俺を睨んでくる先輩だが、完全に俺が上から押さえつけている形なのだ。最高に気分がいい。

 ゆっくりと奥まで入っていた自身を抜いていき、またゆっくりと挿れていく。いつもと体勢が違うから、普段先輩が気持ちよさそうにしている場所がまだうまくつかめない。多すぎるくらい使ったローションがにちにちと音を立てる。ゆっくりと確かめるようにピストンを繰り返せば、何か固い場所に当たった。
 
「あ、」
「お、いつもより当てやすい」

 ぎりぎりまで引き抜き、たった今分かったポイントをこすり上げるように突いた。

「ぅあ、あっ…」

 背中を反らせ震えた先輩が焦ったように眉を下げる。腕を振り回そうとするのがわかったから、握った手に力を込めた。
 
「なんか先輩…いつもより気持ちよさそう…」
「んっあ、あ…や、ちょ…まって、」

 正気なのにこんなに焦ってる先輩なんて見たことないかもしれない。まだ浅いところで動いているのに、逃げるように腰が引いている。追いかけるように奥を狙った。

 いつも先輩に主導権があって、この人は俺に乗って自分で動く。もちろんそれでも気持ちいいんだけど、いつも動こうとすれば馬鹿力で押さえられるのだ。こっちだって爆発寸前なのに、好きに動かさせてくれるのは先輩が一度達して、若干トンじゃってからだ。

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