4話 シークレットダーリン
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「……っせ、たにくんっ…俺、やばいから…んあっ」
「なんで?…はっ…いつも余裕じゃん…っ」
ぱちゅんぱちゅん、と男からは出るはずのない音が聞こえてくる。揺すられるのに合わせて、先輩の口からは途切れ途切れの声が漏れていた。
口を塞ぐこともできずに自然に漏れる自分の声に、先輩がますます焦ったように顔を赤くしている。ほんと今更。今更なに恥ずかしがってんの、この人。かわい。
「…先輩…恥ずかしいの?」
「んっあ…は、恥ずかしいよ…?…はぁっうぅ……見ないで…」
両手を俺に固定されて顔も隠せない先輩がイヤイヤと首を振る。緩んだ顔が今にも泣き出しそうに見えて、下半身が重くなった。潤んだ目を絞って俺を見上げる先輩に顔を近づけ、赤くなった目元に口づけする。
「うわっちょ、せんぱい!?」
屈んだ俺の腰に突然先輩が脚を絡め、起き上がれなくなった。先輩の細身ながらも引き締まった太ももとふくらはぎが、ぎちぎちと俺を押さえつけてくる。先輩が自分で奥へ奥へと俺を突き入れ、背を反らした。
「んぐっ…はぁっ」
「はっ…はっ…はぁ…はぁ……動けよ、イケメン」
「っ…」
さっきまで泣きそうな顔してたくせに、数センチの距離の先輩は火照った顔と荒い息で煽るように笑った。
「…っとに、あんた…」
なんでそう、抱かれてるくせに自分が上にいなきゃ気が済まねぇんだよ。結局はいつも理性ぶっとばしてよがってるくせに。ひょっとして自分で動いてる時って、いつもセーブしてる?
腹立つ。なに考えてんのかよくわかんねぇし、謎過ぎるし。馬鹿にされてんの?
どこにぶつければいいのか分からない怒りが沸いてくる。
先輩の熱い息がかかった。酸素でも与えるように、その口を塞いだ。逃げる舌を捕まえて絡ませて、もうやめてって言われるまでやってやる。
「んっ…んぅ」
くぐもった声が漏れる。押さえつけられた下半身はがっつり先輩に密着していた。もうすでに最奥へ入ったモノを更に奥へ、奥へ。
「ぐっ…ん、んん…ふっ、う、」
「はっ…」
激しい収縮でキツくて苦しい。でも、すっごい気持ちいい。
内心笑い出しそうだ。俺の下で先輩が苦しそうに喘いでいて、俺のことぎゅうぎゅうに締め付けてきて。背中を反らせて大きすぎる快感から必死に逃げようとしていて。かわいいじゃん。堪んないよね。
「んんっ!ん、んう…っ!」
しつこく追いわまして息をつく暇も隙間も与えなかったキスに、先輩がついに顔を振って逃げ始めた。
びくびく震える後孔に、張りつめた俺のモノもそろそろ限界を迎えそうだった。
「はっ…せんぱいっ…千紘せんぱい…っ!」
「あっあっ…あぁあっ」
ようやく存分に酸素を吸った先輩の口から、我を忘れたような甘い声が出る。同時に激しくナカが収縮を繰り返し、先輩の張りつめたモノも腹に白濁を吐き出した。ゴム越しに思い切り出した俺もなんの意味もないのに、本能的に先輩の奥にたった今出したものを擦り付けた。
覆いかぶさるようにして先輩を抱きしめる。汗臭さがむわりと立ち昇った。抜こうと思って身じろぎしたら、先輩に背中をつねられる。
「いてっ」
「ばか久世谷くん。まだ動くな」
「あ、すんません」
いつも先輩は何回もイってヘロヘロになってるから、今思えば口ごたえするほどの余裕が残っていなかったのかもしれない。キツイ口調に若干ヒヤリとする。さんざん先輩の優位に立ってやろうなんて思っていたが、先輩に嫌われるのは怖いのだ。
ドクドクと脈打つ心臓の音を聞きながら、無言の先輩から出てくるピリピリしたオーラに、俺は別の意味でドキドキしていた。
言い訳するわけじゃないけどさぁ…これで怒るなら、いつも先輩がイった直後にガンガン動く俺のがよっぽどじゃない…?あれはオッケーで今日のは駄目なの?
……ひょっとして先輩は気持ちよくなかったとか…?
うわ、そういえば俺、自分が気持ちいいかどうかくらいしかまともに考えたことないじゃん。さすがクズ。この馬鹿。
でも先輩いつもちゃんと気持ちよさそうじゃない?それともやっぱりいつもの体勢じゃないと気持ちよくないのかな…。
「あ、あの…先輩…」
「………ん?」
ほらぁ!なんだよこの間!怒ってる?怒ってるよねぇ?
「お、怒ってます?」
「…怒ってないけど…」
「き、気持ちよく…なかった…ですか……」
「…別に……俺、久世谷くんの顔は見たいけど、自分の顔見られるのは嫌い」
「いやなんで。先輩かわいいじゃん」
「俺にかわいいとか言うな。久世谷くんはついに口説き方を覚えちゃったの?俺教えた覚えないんだけど」
「え、え…先輩、あの…どうしたの?」
「だから、どうもしてない」
なんか…拗ねてる…?
ちょっと待って。拗ねる要素が見当たらないんだけど。
「もう動いていいよ。でも今日はこれで終わり」
「あ、はい」
体を起こして引き抜くと、先輩が小さく声を上げる。なんだかドキドキする。やっぱり今日の先輩なんかおかしくないか?思えば昼から…。
気だるそうに上体を起こした先輩が腰を捻って軽くストレッチのように体を動かした。やっぱりその顔にいつものような余裕な表情はなくて。代わりに浮かぶのは、なんだかムッとしたような仏頂面。
もしかしてこの人、俺が思ってる以上にプライドが高いんだろうか。いつも主導権を握っている先輩に、今日俺はかなり力業で先輩にとって嫌なことをしたのかもしれない。
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