いい度胸だ‼︎










「…来てしまったではないか…鋼の…」
「どーした?雨も降ってねーのにびっしょりだぜ?」
大佐からしたらタイミングよく現れたスカーにエドに文句を言うが受け付けてはくれない

(バッ)
「ーっと待った中尉‼︎撃っちゃダメだ‼︎」
「何を言ってるの⁉︎」
スカーに銃を向け撃とうとする中尉を止めたのはエド

「大佐をマネて釣りしてみようかと思ってんだよ‼︎」

現れたスカーは容赦なくその右手で地面を砕き攻撃してくる
「すみませんね大佐」
「釣りだと?」
「兄さんをエサにホムンクルスを引っ張り出します、兄さんはホムンクルスにとって死なせてはならない人材だから…」
スカーの攻撃を避けながらもアルは大佐達に作戦内容を簡単に話す、その隣で“慌てすぎ”とエドをバカにする令美と怒るエド
「何をバカな…」
「犠牲者を出さずに‼︎進むって決めたんだ‼︎

ボクか兄さんがエサになるしかないでしょう‼︎」

反対される前にアルは兄弟で決めた身体を取り戻す方法を大佐に断言する
「…ずいぶん確率の低い賭けだな…ホムンクルスが出てくる前にスカーが憲兵に撃ち殺されたらどうする?」
「そこは、ほら大佐殿が上手くやってくれるでしょ?」
作戦内容は真っ直ぐで欠陥だらけ…だが、兄弟らしい作戦だと気に入ったのか…

「…この私をアゴで使うか…いい度胸だ‼︎」

作戦に乗ってくれた大佐は、その上で令美を見て、アルに言う
「…彼女は私達と共に来るべきじゃないか?危険すぎる…」

「え」
大佐の言葉に昔のアルなら即答で同意した…けど今回は違う


『 なら、信じて…私を…アル自身も

   私は…神奈 令美は死なないって…』


   『…でもあんた達がバカだから…

          仕方ないじゃない…』



「…大丈夫です、レイミのこと信じてますから‼︎」

今、こうして、自信を持って大佐に大丈夫だと言えるのは令美との信頼関係があるからだとアルは思う

「…フッ…本当に仲良くなったものだな…そうだな、彼女に言ってもどうせついてこないだろう…ホムンクルスを捕らえたら分け前をよこせ!」

「「了解‼︎おおおりゃ‼︎」」

大佐の説得も完了し、エドとアルはスカーへと向かい錬成した土の拳で攻撃を開始した





「分かってるよね、作戦では私はあまりアリスが使えないから!無茶しないでよね!」

「わかってるよ‼︎」
スカーの相手をしながら令美はエドに忠告する、作戦ではエド達がスカーの相手をしながら、エドを殺させるわけにはいかないホムンクルスが出てきたところをリン達が見つけ出し捕らえる…追加で大佐が軍にニセ情報を拡散させ軍人達の行動を混乱させる…邪魔されないようにでもあるが犠牲者を出さないためでもある

とにかくエド達はリンがホムンクルスを捕まえるまでスカーと戦い続けなくてはならない…

「そこの三人‼︎退いてください‼︎」
「撃たないで‼︎兄さんに当たる‼︎」
「だから退いてって‼︎」
スカーとの交戦は激しく荒々しい、軍人が駆けつけて来て銃でスカーに狙いを定めてもエド達が邪魔で応戦出来ない…それがエド達の狙いなのだが

「あいつら邪魔!どうにかならないの」
「大佐のお陰で人数は少ねぇんだ!文句言うな‼︎」
令美が次々と何処からか短剣や銃を取り出してスカーを殺さない程度の攻撃で凌いでしるのに他人を守らないといけない事に神経を使って怒り気味だ

近距離攻撃型のスカーに近すぎすぎれば危険だが離れたすぎると軍人が手を出してくる
「あーもうめんどくさい‼︎エド離れて‼︎」
「………っとお‼︎」
エドがスカーの右手が顔ギリギリで当たりそうになりすぐさま逃げる…スカーは周囲も気にせず地面を割り瓦礫が運悪くエドの右側の額に当たる

「ぐっ…」
「兄さん‼︎」
額から流れる血によって視界が悪くなりスキが出来たエドにスカーは容赦なく襲いかかる、後方にいたアルは手助け出来ない令美も銃で威嚇するがスカーは逃げない

「あでっ‼︎」
自然に起きた突風ではない風が起きてエドはアルの近くまで飛ばされたスカーの右腕に触れたのに身体は無事のようだ

「…ふー!ラッキー‼︎」
「なにがラッキーよ、注意不足すぎ」
「分解エネルギーの相殺⁉︎無茶するなぁ‼︎」
スカーの右手がエドの顔に当たる前に錬成した鋼の手を合わせた…令美にはまったく意味が分からないが前回と違って破壊されないですんだのはエドが手を合わせる前に錬成したからだ

「(…確かに“悪運”だけはあるけど…

  こんなんじゃ、いくつ命があっても…)」

錬成の相殺で出来た煙がはれてきて…やはりスカーも無事だった…

 「…右腕の入れ墨…‼︎」

   「野郎…まさか本当にウィンリィの…‼︎」

  服が破けて顕になった左腕には…入れ墨


     「…こんな時に限って…」






アカシ-Tsukimi