ちゃんと話す






「…そーいや…レイミ…さ…」

「…何?」
エドを茶化すのにも飽きたころ…エドが気まずそうにレイミに声かける

「…ウィンリィの事…ありがとな…

オメーがいなかったらケッコーヤバかったし…」

「そう言えばあの時二人共息ピッタリに行動してたよね…どうして?」
エドのゴニョゴニョした感謝の言葉に令美はシカトしようと思ったらアルがウィンリィとスカーが対峙した時の2人を思い浮かべ疑問に思った事を聞く…もちろんエドは答えられないので目線は自然と令美に集まる

「…テレパシーのアリスって言って、私の想いをエドに伝達させる能力で…一応アルにもアリスを使ったけど…やっぱ肉体がないと通用はしないみたいだけど…」
「「…へぇー…」」
またもや未知の力の話にエド達は興味深そうにきく…意識を相手の心に伝えるなど今の科学ではあり得ない話だからだ

「…どんな感じだったの?兄さん心の声を聞くって…」
「なんか…頭の中に声が響くって感じか?マジで驚くぜ、レイミの声が聞こえた瞬間危うく声が出そうになったしな」
テレパシー体験したエドが感想をバラバラと話すのをきいてアルは静かな令美に感心の目を向ける

「…あんな時に冷静に行動出来るレイミ…本当すごいです」

「……そうしないといけなかったから」
「え?」
「別に、普通に出来るよ…これくらい…」
簡素に答える令美にアルはとても自分より年下には見えなかった…兄のエドは感情豊かで驚いたり慌てたりよくするがそんな姿の令美は見たことない

「(…いつかそんな姿のレイミを見ることが出来るかな…)」






        ◇◆◇◆◇◆




「……」

ホテルに戻る途中、車に乗ったロイに止められた…どうやら待ち伏せされていた、今エド達がホテルに戻れば軍の護衛が付き身動きが取れなくなるとロイに言われエド達はホテルに戻るのをやめて、ロイの車に乗ることになった…そこで問題になったのが令美で…いつもは助手席を好むのにロイの隣はイヤだキモいだの文句を言う令美を説得して後部座席に乗せた…ロイは死んでいた

「あのホムンクルスはどうなった?」
「…郊外の空家に収容した、中尉から連絡があった今からそこへ行く」
『今回の作戦で手に入れたあの何でも食べるデブ』か…と令美はエド達の話を聞き流しながら思い出す
「尾行て来る奴がいないか後ろ見ててくれ」
「へいへい…まだ治りきってないだろ運転して大丈夫なのか?」
ロイが大怪我したのは数日前で勿論癒えてない、今回の作戦も怪我のせいでロイは裏方で活躍していた
「動かせる駒が少ないのでな…自分で動くしかないだろう」
「仲間少ねーのな人望無ぇんじゃねーの?」
「君に言われたくないな…」

「ねぇ…そんなことより早く車から降りたいんだけど、まだ?」

『……』

「……途中で一人拾っていく…」


ロイとエドの会話が不愉快に感じた令美からの冷たい言葉に車内は鎮まりかえった





        ◇◆◇◆◇◆




途中でロイの知り合いの医者を乗せてよくやく車は空家へついた、そこには捕虜のホムンクルスと腕一本無いライファンがいた、すぐに医者の治療が始まった

「…すまん」
治療中なため空家には入らないエド達は外で座り込んでるリンに謝る言葉しか口にできなかった

「『オレ達が巻き込んだ』ってカ?

なんて顔してんダ勘ちがいすんなヨ共同戦線だと言ったはずダ話を持ち掛けたのはこっちだし単なる利害一致で協力したんだから君達が気に悩む必要は少しも無イ不老不死なんて求めるからにはそれなりの犠牲は覚悟して国を出て来ていル」

エドの謝罪にリンは彼らに自分達の覚悟を示したはずだが、その言葉にリン自身も改めて気付かされる
「…そうダ…一族の運命を背負うからには覚悟してたはずダ…

覚悟が足りなかっタ…甘かっタ…俺よりもライファンの方が覚悟があっタ…」

「確かに、あんためっちゃ動揺してたもんね」
「…それは言わないデ…レイミちゃん…」
絶賛反省中のリンに対してまたもや厳しく冷たい発言する令美は鬼である…

治療が一段落するとエド達だけがライファンの元へ…治療のお陰で命に問題はもうない

「あのバカ王子守れてよかったね、ついでに死なずにすんだ」
「…若をバカと言うな…」
「ツッコミとこそこじゃないから」
リンの時みたいに気まずそうな兄弟とは違い令美が軽々しく軽率な事言うが怪我もありライファンはそんなに怒りはしない…というかエド達には二人が少し仲良く見れる

「…大丈夫?」
「何かオレ達にできる事あるか?」
令美のお陰で気まずさがありながらもエドとアルが話かける、腕を無くしたライファンはオートメイルをエドに頼んだ、最高に腕のいい技師を紹介すると約束をした…




「おいなんだこれは…」
「『グラトニー』とよばれるホムンクルスだ」
ライファンとは別室に捕虜されているグラトニーを観察しながらリンとロイが話あっている中に医者として連れてこられたおじさんがグラトニーを見てすぐに普通の人間でないと分かった
「気をつけろ賢者の石が肉体にあるから簡単に死なんぞ…殺し続ければ死ぬがな…」
「俺は頭悪いのか?お前さんが狂ってんのか?」
「どちらでもない」
簡単に理解できないロイ達の話におじさんはついていけない

「複数の生きた人間を犠牲にして作られるという賢者の石、そしてその石の核に作られた化物…それがホムンクルスだ…

更にどうやらこいつらは軍上層部の一部と繋がりがあるらしい…マース・ヒューズが軍の暗部に気付いたらしくてな、こいつらに殺された」
「本当か⁉︎」
ライファンと話終わったエド達もロイ達の話を聞くため近づけば、ヒューズの死について医者のおじさんが食い付く、医者はロイの知り合いだからヒューズとも関係があった…

「上層部だト⁉︎それどころじゃないゾ‼︎」
「何⁉︎」
ロイの仮説にリンが止めた

 「…キング・ブラットレイ…

   あいつもホムンクルスの可能性があル!」


        『 …は? 』


リンの予想を上回る情報に令美以外の4人がマヌケな顔して止まる
「眼帯の下…眼球に奴らのマークがあっタ!グラトニーと一緒になって俺達を追い詰めタ!」
「バカな!」
「この国のトップがホムンクルス⁉︎」
理解出来ず、混乱してるエド達を他所に、リンは深いため息を吐いた…それはエド達に呆れてるんじゃなくてキング・ブラットレイとの戦いを思い出して自分の身があることに安堵したものだった

「…あの時レイミちゃんが来てくれなかったら危なかったヨ…はっきり言ってライファンも俺も生きてるのが不思議なくらい…強かっタ…」
事前にエドとアルには令美がドッペルゲンガーのアリスでリンの手助けをすると説明をされてたのでそこに驚きはない…けど大統領の事はまったく聞いてない

「おい、レイミ!なんでそんな大事な事言わなかったんだよ‼︎」
「…言うの忘れてた…ダブリスの時から知ってたから」
「えぇ⁉︎」
コソコソと文句言うエドに令美は素直に返事した、本当に純粋に忘れていて、しかも師匠イズミのいるダブリスで大統領に会った時から知っていたのだから兄弟は驚く

「…まぁダブリスの時は言ったところで信じてもらえないと思ってたから…」

「…」
確かにあの時のエド達には令美の話を信じることはできなかったはずだ

「…っ〜!確かにあん時大統領のこと言われてもオレは信じなかった!

でもな‼︎今度からは何でも言えよ‼︎重要な事は得に‼︎

      …絶対信じてやるから‼︎」

「…兄さん…うん!僕も信じます‼︎」

コソコソと話してるとは思えないぐらいの熱量のある言葉が令美にかけられる…大統領の事を言わなかった言い訳をただ言ったつもりの令美は兄弟からそんな言葉が返ってくるとは思わなかった


    「…わかった…ちゃんと話す…」






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