何アレ…キモ








「グラトニーの中にはたしかに人ならざる人の気配があるのにブラットレイにはそれがなイ…

あきらかに人間の気配と一緒なんダ」

何の目的で人間のフリをしてるのか、家庭を持つブラットレイに家族が気づかないのか疑問が多くある中でリン達だけが感じる気配だけが唯一のてがかりだった…

エドが令美を見る、ブラットレイについて何か詳しい情報がないか求めているが、リンがブラットレイが人間の気配の気配と一緒だと言っても令美からしたら心が読めない相手、令美はリン同様それ以上の収穫はないので首を横にふって返事する

「書物によればホムンクルスは生殖能力の無い生命体とされてるけど…大統領には子供がいるでしょ?」
「あぁ…その息子のセリムは養子だ、大統領にはその血をわけた実子がいない」
大統領がホムンクルス疑惑を否定も肯定も出来なくなったエド達はみんな黙ってしまう

「は‼︎化物か人か…なんにせよ大統領の椅子から引きずり下ろしやすくなったな!」

その中で唯一高々と笑ったのは大統領になる野心があるロイだった…その雰囲気のおかげで話はグラトニーに戻り、一つしかないホムンクルスをどうするか…もちろん取り合いになった…作戦前からちゃんと話合っとけばいいのに…と令美はバカにした目で三人を見る

「あーもう話について行けねぇマスタングさんよ俺ぁ帰らせてもらうぞ」
「私も心底どうでもいいから休むね」
いわば部外者の医者と令美が話し合いから抜けようとしたらロイは医者をエドは令美を止めようとした…グラトニーの権利を多数決で決めるかもしれないから保険に…

「?」

「ラストころした…ラスト…」

その時…グラトニーの方から声が聞こえて令美は振り返った…今まで大人しかったグラトニーの様子が変わった

「何?」
「おい、どーした…」



      「ロイ・マスタング‼︎」



普通の人間ではあり得ない光景ー

  グラトニーのお腹が裂けて…眼が出てきた

    眼が合った瞬間…家の半分は


        『食われた』



◇◆◇◆



「…何アレ…キモ」

急な暴走状態になり、そこらじゅう無作為に食い尽くしていくグラトニー

目的はロイだとハッキリ分かり、すぐさまエド達が囮を立てて取り敢えず森の奥まで誘導した…令美は手伝ってない気持ち悪い相手はしたくないから

「早くしろボウズ‼︎逃げるんだよ‼︎」
運がいいことに車は無事で、医者が皆んなに車に乗るよう急かす、後部座席には負傷してるライファンをリンが乗せた
「街に連れてきゃもう少しまともな治療が出来る‼︎さっさとここを出るぞ!冗談じゃねぇ!俺は一般人だぞ!こんな訳わかんねー闘いに巻き込まれて死んでたまるか!」

「後もう少し待って」
「あぁ⁉︎」
今すぐにでも逃げ出しそうな医者を止めたのは令美だった、気が立って顔が怖いおじさん相手に臆することなく令美は冷静に止める
「まだ来てないでしょ、あいつらが」



程なくしてエドとアル…それに狙われてるロイもリサに支えられながらやってきた、グラトニーは上手く偽物の人形に引っかかってくれて森の奥で暴れてる
「すみません、遅くなりました」
「大丈夫」
アルが令美に声かけてる中、エドはロイを無理やり車に乗せた

「なっ…この状況でのこのこ帰れと言うのか‼︎」
「足手まといだ‼︎」
「返って‼︎」
まだ前の傷が治ってないロイを車に乗せるつもりでこの車を止めていたのにロイは残る気でいたのでエド達がキッパリと本気の言葉を言った令美の目も『無能』だと語っていて…ロイの頭にはキノコが生えて暗くなる
「…っとにこのボケ大佐はよ…てめーはてめーの仕事しろ軍のトップがホムンクルスだなんて放っとける問題じゃねーだろ?」

「たらたら喋ってるヒマはねぇ‼︎おまえらも早く乗れ‼︎」

「…満席だろ…行ってくれ」

車に乗れるのは4人、もうすでに満席の状態でエド達は乗る事を拒否した…子供だけを残すのは危険だとリサ達は言うがエドは軍上層部を相手するよりもグラトニーから情報を得る方が適任だと言う

「…子供だからとかそんなの関係ねぇ、今回の作戦の言い出しっぺはオレらだ自分のケツは自分で拭かなきゃならねぇよ…

ここまで手を貸してくれてありがとな」

子供のエドからそんな言葉を言われては大人のロイ達は止めることがもう出来ない

「だが流石に嬢ちゃんを残すことは出来ねぇだろ!」
「必要ない、ここの誰よりも強いし死ぬ可能性が低いから…それにおじさんと一緒の車にもう乗りたくないから」
おじさん2人のダメージは計り知れないくらい大きい爆弾を投入した令美に誰も何も言えない






        ◇◆◇◆◇◆



「…そんなのエドが使いこなせるとは思わないけど…」

ロイ達と別れ、暴れ回るグラトニーの元へ向かう中、令美は先ほどリザに命を守る為にとエドに渡した銃の事を言う、軍人だとしてもいつも格闘技か錬金術頼りのエドが銃を使いこなせないことは令美にも分かっていた

「そんなこと言われなくてもわかってるよ!…けどしゃーないだろ‼︎」
人を殺す道具ではなく自分の命を守るために銃を借りたエドの心の真っ直ぐさに令美は目を逸らす
「…扱い方間違えて私を殺さないでね」
「殺すかよ‼︎」



『ロイ・マスタングはどこだ‼︎よくもラストを‼︎‼︎許さんぞぉぉぉ‼︎‼︎』

「…闘うって言っちゃったけどぶっちゃけおっかねぇ…‼︎」
「口調変わってるゾ」
「キャラ変じゃん」
無差別に森を飲み込み暴れるグラトニーを巻き込まれない場所で様子を伺うエド達は作戦会議中

「どうやって捕まえる?せめておとなしかった元の形に戻ってくれりゃいいんだけどねぇ…」
「こうなった原因はあの無能オヤジのせい」
「じゃあレイミちゃん、あの大佐を腹に放り込んだらおとなしくなるんじゃないかナ?」
「いいアイディアだせリン!」
作戦会議ぐまともに出来ないほどの、ぶっ飛んでるグラトニーの攻撃にエド達は慌てて逃げ出す

「だいたい飲み込んだ質量はどこに行ってんだよ‼︎」
「知るカ!ホムンクルスってのは錬金術の分野だろウ‼︎」
「あぁもう埒があかない‼︎」
「どいつもこいつも無能ばっかり」
非科学的すぎて怒り出すエドに答えをくれる者はいなく…ロイ達の前であれほどの大口を叩いておきながら今情けない姿に令美の瞳が冷たくなる





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