すんごい記憶力


「…馬…?」

暴走するグラトニーを観察する中、リンとアルの拾ったパンダが一頭の馬に反応した、ただの普通の馬にしか見えないが…

『止まれ、グラトニー』
「しゃべっタ⁉︎」
グラトニーに向かって『馬』が話しかければリンのように驚くのは仕方ない、馬はリンの声でコチラに気づき、その身体を人の姿に変えた…

「やぁ…鋼のおチビさんはお久しぶりだぁ!」

馬から人に変わったホムンクルスのエンヴィーは愉快そうにエドしか眼中にない…そしてエドもエンヴィーに狙いを定めた

「ちょっと待ちなよ‼︎おチビさんとやり合う気は…」
「5回目ェ‼︎」
急に襲いかかってきたエドにエンヴィーは逃げる何故か怒りだしたエドにエンヴィーはまったく理解できない
「さっきと今の2回目‼︎…そして第五研究所の地下でオレの事を3回(チビ)って言った‼︎忘れたとは言わせねぇぞ‼︎」
「…すんごい記憶力…」

「ここで会ったが百年目だぜェェェエンヴィィィィ‼︎‼︎」

「(化物)」
「(…ただのバカでしょ)」
怒り狂って暴れエンヴィーを攻撃するエドをアルが止める、攻撃意思のないエンヴィーもグラトニーを止める…あれだけ暴れていたグラトニーは目的のロイがいなくなってるのをエンヴィーから聞いて泣いていた


「…ふん…まーたおまえか細目の」
「ドーモ」
エンヴィーとはロイが仕掛けた作戦の時以来でエンヴィーにとってはリンは嫌いな相手みたいだ…隣にいる令美も

「今日は俺に捕まりに来てくれたのかナ?」
「残念、こいつを迎えに来ただけだよ…

と言いたいところだけどおまえはぶっ殺しとかないとね…」
「…?」
ニヤニヤと笑うエンヴィーに令美は違和感を抱く
「グラトニー焔の大佐とエルリック兄弟はダメ…あの女も…だが、あの細目は飲ませてやる…腹減ってるだろ?頭からパックリいっちゃいな!…いいかくれぐれもあの兄弟と女は飲んじゃダメだ…あの細目だけだぞ」
「うん」

「…」
違和感の正体は、あれほど敵意を令美に向けていたエンヴィーが何故か急にそれがなくなった…ホムンクルスの心は読めないため原因はわからない

「おっとぉ?光明が見えて来たぜ…奴らオレ達兄弟を狩れないようだ」
「おまけにグラトニーを少し大人しくしてくれたよ…それにレイミにも手を出さないって言ってる」
「あんだけ敵視してたくせにね…でもそれなら後はバカ王子にどーにかしてもらうから」
「レイミちゃんヒドイ!でもそんな所もステキ‼︎…って事ハ…」

「こうだ‼︎」

暴れるグラトニーも大人しくなりエンヴィーからの情報のお陰でだいぶ戦いやすくなった、ホムンクルスが何故兄弟と令美を狙えないのかは疑問だがこれを使わない手はない
「そっちは任せたぞリン‼︎」
「レイミちゃんと初の共同作業‼︎‼︎」
「オイッ‼︎」
エドの錬成でグラトニーとエンヴィーの間に壁を作った、グラトニーの相手をエド達がエンヴィーの相手をリンと令美が…令美はまったく参戦しないが勘違いしてテンション高くエンヴィーに攻撃しに行くリンをいいことに令美は口を閉ざした


「…のヤロ、さすが『キング・ブラットレイ』と切り結んだって言うだけはあるな!」
「お誉めの言葉ドーモ…あんたハ…奴と違ってスキだらけダ‼︎」
浅めに早く剣で攻撃するリンは一瞬の隙でエンヴィーの脇腹を狙った…エンヴィーはそんなこと気にも求めず変幻自在の体を使って腕を伸ばし近づいたリンの腕や首に巻き付いた
「かかったな…」

「なる程…肉を斬らせて骨を断つ…カ」

(それって日本のことわざじゃない?世界が違うのにことわざが同じって変なの…)と助ける気ゼロな令美は1人のん気だ

「前の闘いで、おまえは一筋縄ではいかないのを知ったからね…どうだい?おまえらニンゲンにはできない芸当だろ?

さぁて…締め殺されたいか?噛み殺されたいか?

       それとも斬り刻まれたいか?」

リンの首に巻き付いた腕はヘビへと変わり反対の腕は剣に変わった、身体を自由に変えられるエンヴィーならではの攻撃にリンは…

「…そんじゃ斬り刻む方向デ…」

リンは足を振り上げエンヴィーに砂をかけて視野を奪った隙にエンヴィーの剣の腕でリンに巻き付いてるヘビの腕を斬り、そして自分の剣でエンヴィーの胸を斬りつけた

「ヤ…ロウ…目潰しなんてセコい手使いやがって…」

「家柄のせいで小さい頃から暗殺の危険にさらされ続けてるんでネ強くセコくならざるを得なかったんだヨ

どうだイ、前にも言ったが大人しく捕まってくれりゃ危害は加えなイこっちは賢者の石の情報を持ち帰ればいいんダ」
「どっちが悪人か分かんないセリフ」
人間をバカにするエンヴィーからしたらその人間に殺されるのはとても神経に障るだろう、しかもその人間から弱者扱いされれば当然…

「クソが…ニンゲンふぜいが見下してんじゃねぇ‼︎」

「人間なめるなヨ、ホムンクルス‼︎」

「「わぁ‼︎」」
睨み合う2人を邪魔する様に草木から兄弟が転がってきた、もちろん令美は安全な場所で見てるだけ

「おいおいこっちの邪魔すんナ…ヨ‼︎」
リンはエド達に気を取られた、その隙にエンヴィが襲いかかるが逆に右脚をリンに斬られて倒れてしまう

「…世話のかかる…」
倒れたエンヴィーにトドメを刺そうとするリンにエンヴィーは姿をライファンに変えた…分かっていてもリンの動きが止まった

    「バッ…カヤロ!リン‼︎飲まれるぞ‼︎」

グラトニーがリンに『腹』を向けて飲み込もうとする…

          「兄さん‼︎」

リンを助けるためエドが介入してきたのをエンヴィーは止めるため脚を掴む…

   「エド!手を離さないで‼︎…今か、ら…」

瞬間移動でエドの隣に現れた令美がエドの手を掴み、またアリスを使おうとした…

       だが、アリスが使えない

          「レイミ‼︎」

「…なに、これ…」
令美の口から血が流れてた時…グラトニーが『腹』から出した光はエド達を包んで…



         全てを飲み込んだ…

アカシ-Tsukimi