
自分が居るべき場所
本当は変わりたかった
朝、目を覚ますのが怖い、外に出て人の前に立ちたくない、人の目線が、ウワサ話が…
校長が…
怖い
そんな世界で彼女を中心に皆んなが変わって笑っていた…彼らも
私もあんな風に笑いたかった、彼らの中に入りたかった、明日が楽しく…
なーんて夢物語
[ 自分が居るべき場所 ]
「…だーれも乗ってないね」
「…静かでいいじゃない」
揺れがヒドく乗り心地も最悪な汽車の中はエドとアル…それに令美以外はまったく乗ってない
「…うわさには聞いていたけどこれほどとは…だいたいこんな所に観光もないだろうけどな…“東の終わりの街”ユースウェル炭鉱…」
セントラルシティに行くはずだった令美にしてみればだいぶ離れてしまったが令美はエド達と同行する事に決めた
「…で何でお前はついてくんだよ」
「神奈 令美 “お前”って呼ばないで…次呼んだら私は“豆チビ”って呼ぶから」
“誰が小さすぎて見えない豆チビだぁーーっ‼︎”と怒り狂うエドをアルが止める
「…〜っ‼︎レイミ‼︎千歩ゆずって金の事は許してやる‼︎どうやって盗んだかも気になるが…とりあえず何でオレ達に付きまとう‼︎」
「…千歩って兄さん…」
「…1番は興味があったから」
力が抜けるぐらい単純な令美の答えにエド達は驚愕した
「なっ…そんな理由でついて来たのか⁉︎それともオレをバカにしてんのか⁉︎」
「レイミさんあの…家族とか…心配してるんじゃ…」
驚いた2人の反応は別々でエドは呆れ怒りアルは令美の心配をした、兄弟でここまで性格が違うのが普通なのか…と令美は前の世界を思い出す、いた、と
「…帰る場所も家族もいないから平気
安心して“借り”は必ず返すし迷惑はかけないから」
「「…」」
またまた軽い令美に2人は何も言い返せずにいた…あまりにも軽すぎて家族が大事なものではないのかと錯覚してしまうほど
「なに、この世界じゃ両親がいないなんて珍しくないでしょ」
「…まぁ…な」
「…、…気まで小さいんじゃ本当“小さい男”代表ね」
令美の小言で地獄耳(身長の時だけ)のエドが汽車の中で大暴れしたのはユースウェル炭鉱につくまで続いた
「…なんか…」
「炭鉱っていうともう少し活気あるもんだと思ってたけど…みなさんお疲れっぽい?」
汽車をおりて街へ入っても人は数人いるだけの静かな街中、令美は炭鉱という場所をあまり知らないのでよく分かっていないが珍しいことらしい
「…てゆうか何でここに来たの?あんた達」
「あぁ、それはですね…」
(ゴンッ‼︎)
令美がアルに事情をきこうとした時、エドの頭に木材がぶつかり中断…正確には木材を持った少年の不注意でエドの頭にぶつかったのだが…
「おっと!ごめんよ…お!」
少年は軽く謝罪した後エド達が街の人じゃないと気付くなり目の色を変えた、少年はエド達を強制的に宿屋へ連れて行かれた
「あれ、私達もいくの?」
「あはは…」
◇◆◇◆◇◆
「親父‼︎客だ!金ヅル‼︎」
「金ヅルってなんだよ‼︎」
どうやらこの宿屋は少年の家らしくエド達は訳わからない内に宿の客にされたみたいで…
「いやぁーホコリっぽくてすまないねぇー炭鉱の給料が少ないんで、店と二足のワラジって訳よー」
宿の中は数人の男達が酒を飲んで騒いでいた、綺麗だとは言い難いが、街並みを見てみても、まだマシな方
「…えーと、1泊2食の3人分ね」
「いくら?」
金の話になった途端、店主の親父の目が光った
「30万」
「ぼったくりもいいトコじゃねーかよ‼︎」
容赦なくぼったくりにくる店、なんでも滅多に来ない観光客是が非でもエドを逃すまいと親父に止められる、しかも他の店も同様のぼったくり値段らしい
「…足りん…」
「まぁ…3人分だしね」
結局この宿に泊まることになったが、3人は集まりお金の相談をすることに
「何でオレがレイミの分まで払う事になってんだよ」
「私お金持ってないし、もしかして私に野宿しろって言ってんの?」
「兄さん出してあげようよ…レイミさん可哀想だよ」
令美の分の宿代を払う事にエドは納得いかないが令美の圧とアルの優しさに何も言えず…仕方なく令美の分まで払う事に…
「…こうなったら錬金術でこの石ころを金塊に変えて…‼︎」
「金の錬成は国家錬金法で禁止されてるでしょ‼︎」
「錬金術ってなんでもアリね、これで問題解決じゃん」
「レイミさんまでのらないで‼︎」
最終手段の金の錬成はエドが悪い顔して企んでる時宿の少年にバレ断念…だか転機が…
『おーーーっ‼︎』
錬金術で直された街の人達の物、みんな感動し喜んだ、エドは物を直す代わりに代金をまけてもらえることに…親父が錬金術をやっていたよしみって事でもある
「大まけにまけて20万!」
「まだ高いよ‼︎」
無事泊まれる事になった…が、それは食事の時
『……』
「…錬金術師でエルリックって言ったら…国家錬金術師の?」
エドが名乗った瞬間、出されかけた料理が下げられ周りの反応も明らかに変わった
「…まぁ…一応…」
料理の次は飲み物までも下げられだエドはもう黙ってはいられず
「なんなんだよ‼︎いったい!」
「出てけ‼︎」
あんなに歓迎してたはずなのにエド達は何故か店から追い出された
「こらー!オレたちは客だぞ‼︎」
「かーっぺぺぺ‼︎軍の犬にくれてやるメシも寝床も無いわっ‼︎」
軍人嫌いな彼らは金ヅルなエドが“軍の犬”であるなら泊まらせることはできないと
「(軍人ってこんなに嫌われる者なの?…ついていく相手間違えたかも)」
「あっ!ボクとレイミさんは一般人でーす!国家なんちゃらじゃありませーん」
「おぉ!そうか入れ」
追い出された時は“この私が野宿なんて信じられない‼︎”とショックを受けていた令美だがアルのおかげでアルと令美だけは店の中に入れた
「裏切り者‼︎」
「人間で良かった…軍の犬って外で寝るのね」
「お前は黙れ‼︎」
店へと戻り料理を待ってる間、店の客達は軍の悪口ばかり
「えらい嫌われ者だね」
「そりゃそうだよ!ここのみんなは軍人なんて大嫌いだもん‼︎ここを統轄してるヨキ中尉ってのが金の亡者でさーもう最悪」
少年は令美達に軍人の話をすれば周りも便乗してヨキという人物の悪口が止まらない…ヨキという者は出世欲の塊らしい
中央の高官に賄賂を渡す為ヨキはここの権利を握っているのをいいことに、ここの街は給料が少なく税金が高くしたりなど好き勝手にしている
「…そこに国家錬金術師ときたもんだ…“錬金術師よ…大衆のためにあれ”…術師の常識であのプライドだ…数々の特権と引き換えとはいえ軍事国家に魂売すような奴ぁ…俺は許すことはできん」
まだこの世界に来て日の浅い令美にとっては“国家錬金術師”と“錬金術師”の違いがよく分かっていないが…一つだけ分かることがあった
「…このままじゃあのチビ一生この街では野宿ね…」
(彼らを助ければ話は違うだろうけど…)
◇◆◇◆◇◆
「…はらへった…」
外に追い出され1人、エドは腹をすかせてたおれていた
「ちくしょ〜アルの奴〜あの女もちゃっかりしやがって〜」
腹の音を鳴かせ2人の愚痴を言ってるエドの前に料理が出された
「…ボクに出されたのコッソリ持って来た」
「弟よ‼︎」
先程の態度が一変エドはアルに抱きつき感謝しご飯を食べだす
「どうせあの女の事だ“あいつに分ける食事なんてない”とか言って絶対くれねーと思ってたからなー‼︎神の恵‼︎」
「…あはは…(当たってる…でもその後に“小さいんだから少なくて平気でしょ”って言ったことは秘密にしとこ)」
アルは話を変える為宿できいた軍を嫌う理由をエドに話した
一方、令美のいる店では呼ばれざる客人が来ていた
「相変わらず汚い店だな…ボーリング」
「これは中尉殿、こんなムサ苦しい所へようこそ…」
青い制服を着た小柄のおっさんと体格のいい男2人…3人の客人に店の人達は顔が怖くピリピリとした空気へ変わった
「あいさつはいい…このところ税金を滞納しておるようだな…お前の所に限らずこの街全体に言えることだが…」
「すみませんね…どうも稼ぎが少ないもんで…」
食事中汚い奴らが増え令美の機嫌が下がる…話の内容では彼らが軍人で小柄のおっさんがヨキだろう
「これはこれはめずらしい、こんな汚い店に客がいるとは…」
嫌な事にヨキが令美に気づいた、美しい容姿を持つ令美にヨキが下心を抱くのは仕方ないことかもしれないが…相手が悪い
「フム…少し若いが、美しい…君、私の所へ来なさい…こんな汚い店なんかよりいい想いをさせてやろう…」
ヨキを止める者などこの場にはいない、助けてもらおうとは令美は思ってないが…
「うるさいんだけど…」
「ハァ?」
「見てわかんない?今、食事中なの…隣で下品な奴がいて、うるさいし食欲無くなるんだけど…今すぐ消えてくんない、邪魔」
ヨキはまさか令美が強気な態度で、しかも侮辱されて怒りに顔を赤くする
「…この娘…っ‼︎」
ナマイキな令美に恥をかかされヨキは殴りかかろうとするが
「…っ‼︎」
令美の殺気にヨキは気を弱くする…見てわかる小者っぷり令美は失笑
令美に恥をかかされ手も出せず、ヨキはますます怒り、八つ当たりで街の人々の給料を下げる…と暴走し始めた
そんなヨキの暴走に息子のカヤルがヨキに向かって雑巾を投げた
「中尉っ‼︎…っのガキッ‼︎」
部下の男がカヤルの行動に粛清しようとしたがヨキが先に手をだした、子供のカヤルはヨキごときの力でも簡単にふっとぶ、それに加えて部下にカヤルの死を命じた
「…本当、弱い奴ってキライ」
親父のカーリングが助けようとするが間に合わないだろう、令美は助ける気は全くなく達観、部下の剣がカヤルに襲う前、止めたのはエド
「なっなんだ!どこの小僧だ‼︎」
「通りすがりの小僧です」
剣を右手で止め、真っ二つにしたエドに周りが驚き、ヨキは邪魔して来たエドに怒り叫ぶ、が
「私この街を治めるヨキと申します!こうしてお会いできたのも何かの縁…ささこんな汚い所におらずに!田舎街ですが立派な宿泊施設もごさいますので」
エドが大総統紋章に六芒星の銀時計を見せた途端ヨキの態度は変わりエドに媚び出した、国家錬金術師というのは結構いい立場らしく、エドはヨキに接待され出て行った
◇◆◇◆◇◆
「ぐわーー!ムカツクーー‼︎」
「どっちが…?」
『両方‼︎』
ヨキが出て行った瞬間、店は軍人とエドの悪口で大騒ぎ
「面倒な男…簡単な方を選べばいいのに…」
その夜、ヨキの命令により、令美が宿泊してた店が焼かれ黒スミになってしまった
「…私の寝る場所がなくなったじゃん、どーすんのよ」
「オレが知るかよ、そんな事…」
焼け焦げた店の前に街の人達が集まってくる…ヨキの所から来たエドは座り込んで呆然とするカヤルを見た
「…親父が錬金術をやっていたのはこの街を救いたかったからなんだ…なぁ…エドあんた黄金を錬成できる程の実力者なんだろ?はっと錬成して親父…街を救ってくれよ‼︎」
「だめだ」
カヤルがエドに助けを求めるがエドは冷たく拒絶する…どんなに願っても“錬金術は等価交換が基本”と言って金をくれないのなら義務もない…と
「てめぇ…てめぇそれでも錬金術師か‼︎」
「…“錬金術師よ大衆のためにあれ”…か?」
つかみかかってくるカヤルをエドはただ冷たく見つめるだけ
「ここでオレが金を出したとしても、どうせすぐ税金に持っていかれ終わりだ、あんたらのその場しのぎに使われちゃこっちもたまったもんじゃねーそんなに困ってるならこの街出てちがう職さがせよ」
「小僧…おまえにはわからんだろうがな…
炭鉱が俺達の家で…棺桶よ…」
泣いているカヤルに父親、カーリングが肩に手をおきエドに背を向けていった…その言葉にエドは何を思ったのかその場をあとにした…
「私も理解出来ないものね…」
エドを追うアルに続いて令美もエド達のあとを追った
