好きだった炎





( 強く…綺麗な、あの炎が好きだった‥

 私はいつからあの炎が嫌いになったのだろう…)



「…君が美少女と共にいるとは…明日は雨が降るのか?」
「うっせーな…こっちは色々あって大変だったての…」
東の中央についた令美達は駅でこの男、ロイ・マスタングに足止めをくらっていた、ロイはエドの隣にいる令美に気付くとニヤニヤ笑いエドを茶化す
「…何か事情が?」
「えっ…まぁ、ちょっと…」
ロイの隣の女性もアルに令美の事を聞くが、ハッキリ言って令美との関係をどう説明していいのかエドもアルも分かってない

「ちょっと」
エド達が困ってる中、それはもう太々しい声が空気を読む事なく話しかけた、令美だ
「…なんだよ」
「私、行きたいとこあるから別行動する、それじゃ」
相変わらずの決定事項に文句も言わせぬあっさりとした令美の発言にエド達は怒るより呆れた…
「1人で大丈夫ですか?レイミさん」
「平気、夜には帰るつもり場所も分かるから」

「待ちたまえ…」
令美が帰ってくると言って心配していたアルが少し安心した時、なんかわざとらしい決まった声が令美を止めた
「君のような少女がこの街で1人歩くのは危険だよ…君は“鋼の”の知り合いだろ?一緒に来たまえ」
令美が少女でも“美”少女だからか、エドの時とは違いキラキラな微笑みで令美に口説くように話かける



「…キモ」

…それは…令美の一言は…ロイに絶大な一撃を与えた、笑顔で固まるロイ、エドは吹き出しそうになった
「じゃ、私行くから」
「…お、おう」
ロイの存在など無かったように令美は行ってしまった、今だに固まるロイにアルやロイの部下の女性ホークアイ…ましてやエドにまで同情の目で見た

「…なんかイライラする…」


不機嫌な理由が分からぬまま令美は街の中へ


ここは『アメストリス』の東部…

     東部中央都市『イーストシティー』





         [ 好きだった炎 ]




「随分と…変わった女性のようだな…君らの関係に口出しするつもりは無いが…鋼の、もう少し女性の見る目を変えるべきでは…」
「めちゃめちゃ口出ししてんじゃねーかよ」

東部の軍本部に移動してきてもロイの心はいまだに荒れ模様、令美に言われたあの一言に相当傷ついたようでエドに文句を言う

「…彼女まだ若いわよね…大丈夫なの?色々と」
「…それは」

「俺らと一緒だ…」
ロイの部下リザ・ホークアイがロイの事など気にもせず、令美の心配をする、同じ女性で独りなのはこの世で生きていくのは危険だから…
「そう…」
「あいつ自身まったく気にして無かったけどな…」
エド達の過去を知る彼らはエドの一言で令美も家族がいないことがわかるリザはますます表情を硬くし令美のことを心配してる

「…では彼女が君らと一緒に居る目的は?」
「全く知らねー、あいつ自分の事なんも話さねーし、訳分かんねー奴で…ナマイキで常に上から目線で、文句ばっか言いやがって…!」
「でも…悪い人じゃない、と思います」
彼女が危険人物かどうか、ロイは聞きたかったのだが…エドの愚痴やアルの優しさに危機感が削がれる

「…仕方ない、様子見だな…」



「そんな事より!」
その後、エドは汽車での一件でロイに貸し一つ作ることが出来、人体錬成に詳しい錬金術師を紹介してもらえるよう頼んだ



       ◇◆◇◆◇◆






そしてロイの紹介により合成獣錬成の研究者『綴命(ていめい)の錬金術師』ショウ・タッカーの所へ向かった、彼は2年前、人語を使う合成獣の錬成に成功させ国家錬金術師の資格を取った

エド達は数日タッカーさんの家に通いつめようと思っていた、いや思った…それぼどの錬金術についての本があったから、研究者としてコレを見ない訳にはいかない

「何やってんの?」
読書なんて興味ないと言ってエド達に付き合うことなく令美は毎日街をブラブラしてたのだが…聞き覚えのある叫び声に、一軒家の庭をのぞけば、大型犬に下敷きにされてるエドを発見
「おまっ!…なんで此処にいんだよ…」
「偶然、通っただけ」

今の姿が見られて恥ずかしいのかエドは令美と目を合わせない、犬も退かない
「何?本読むとか言ってたのに、子供だから外で遊んでたの?」
犬が退かないことをいいことに令美が好き放題エドをあざ笑ってる、エドがキャンキャンうるさい中、アルが小さい女の子と一緒にこっちへ来た
「レイミさん‼︎来てたんですね」
「遊んでた」
エドを指さす令美の返事にエドは益々うるさく、アルは苦笑い(してるように見える)

「本読むって言ってなかった?」
「はい、今は休憩中で…ニーナとアレキサンダーに遊んでもらってるんです」
「…そう」
聞いておいてあまり興味がない令美は寝転んでるエドに足で砂をかけてる(容赦ないよ、レイミさん…)

ニーナが気まずそうにアルを触った、令美とお話ししたいのか…それとも怖がってるのか
「レイミさん、彼女はタッカーさんの娘さんのニーナです…ニーナ、彼女はレイミさんボク達と…旅仲間、かな?」
令美とニーナの仲介役をしようとしたアルだが令美との関係をどう言えばいいのか分からずイマイチな説明になってしまった、エドからは“コイツは仲間じゃねー‼︎敵だーー‼︎”と叫ぶ声がきこえる

「…レイミ…おねーちゃん?」
ニーナが勇気をもって令美を呼べば、令美はニーナと目線が合うようにしゃがんだ
「ニーナ、いい子ね…とても強い子」
令美のことだから子供相手でも容赦しないかと思ったエド達、だが令美は優しくニーナの頭を撫でた…ニーナはとても嬉しそうに笑った

「これ、あげる…ニーナお花すきでしょ」
「好き‼︎わぁ…きれーありがとう‼︎レイミおねーちゃん‼︎」
何処からか出したか分からないが令美はニーナに色あざやかなブーケをあげた

「じゃあ私行くから、あいつが暴れる前に…」
「おねーちゃん行っちゃうの?」
確かに令美がニーナに優しくしてる時は物凄く驚いていたエドだが怒りを忘れた訳ではなさそうだ…令美はニーナの頭を撫でた

「…気をつけて」



令美は動けないエドを鼻で笑った、なんとしてでも令美に一発食らわせたいエドは必死にもがくが動けない
「優秀な犬ね、あなたが守ってあげなさい…」
「?」

令美の言ってる事が理解出来ない…と言うかコイツ、アレキサンダーに話かけてんのか?とエドはまた令美の不思議度が上がった
「エド」
ドキリ、とした…名前を呼ばれたからか…

「…タッカーには気をつけた方がいい…」



令美が行ってしまった後アレキサンダーがどいた…あれだけ退かなかったのに、そういえばアレキサンダーは令美には一度も触れてない、人懐こい犬なのに…
「あいつ…」
「レイミさん…毎日どこに行ってるんでしょう」
「俺が知るかよ…」

 “なんでタッカーさんを…

        気をつけなきゃいけねーんだ”



         ◇◆◇◆◇◆






その日は朝から曇り…午後には雨が降りそうな天気
「今日も行くの?」
「まだ読んでない本があるからなー」
今日もタッカーの家に行くエド達が出掛ける前に、令美は無性に嫌な予感がしたため声をかけた…令美は思い出す…あの家を見た時の男の感情を…

   『ペルソナ』に似た…嫌な感情に…

「…そう、なら気をつけて行くことね

        今日は雨が降るから…」

「…あぁ…」
「いってきます令美さん」
令美がエド達に“気をつけて”など言うことなかったのに、戸惑いながらもエド達はタッカーの所へ行った

「(…本当嫌な天気)」

 数時間後、雨が降り始めた…

  令美の言った通り、嫌な予感も当たってしまった




          ◇◆◇◆◇◆




エドとアルはタッカーの家で、タッカーが錬成した“人語を理解する合成獣”を目にする


合成獣は一見普通の犬に見えたが、確かに人の言葉を理解して話した

ニーナとアレキサンダーの姿は無かった

『こんな事が許されると思ってるのか⁉︎

  こんな…人の命をもてあそぶような事が‼︎』

『鋼の錬金術師、君の手足と弟…

それも君が言う“人の命をもてあそんだ”結果だろう⁉︎』

エドはタッカーを殴った

『同じだよ…君も私も』

          『ちがう‼︎』

エドは笑うタッカーを殴った、タッカーとは同じじゃない…タッカーとは違うから…何度も

悲しい顔で

『兄さん…それ以上やったら死んでしまう』
止めたのはアル、タッカーの顔はボロボロで、だけど彼は笑い…
『ははっ…きれいごとだけでやっていけるかよ…』
『…タッカーさん…
  これ以上喋ったら今度はボクがブチ切れる…』

アルは合成獣になってしまった、ニーナとアレキサンダーに近づき…
『ニーナ…ごめんね…』
元に戻すことも、何も出来ないアルは謝る事しか出来なかった…合成獣が“あそぼう”と言い続ける中で…



         ◇◆◇◆◇◆



「やっぱりね…

クズだと分かってたけど、ここまでするなんて…本当にクズね」

外は雨が降り始め、タッカーの家にはエド達の姿はなかった
「…君は誰だ…」
合成獣の前に姿を現した令美、タッカーには急に現れたように見え驚いた
「あんた賢い子だったけどね…やっぱり私がなんとかしとくべきだった…」

「わっ…私を殺すつもりか‼︎」
「あんたなんか殺す価値もない」
タッカーが令美に怯えるが、令美はタッカーを見ることすらない

『…おね…ちゃん…』

「安心して、私はあの兄弟のせいでそーゆー事はしないから…元々嫌いだったし」
タッカーは怯えてつづけ合成獣のニーナはおねーちゃんとしか言わない

「…コレは、私の力でも無理ね…」
令美は合成獣の頭に花冠をのせた、ニーナは花が好きで喜んでる
『…おは…な』

「さようなら、ニーナ」

    『…あり…とう…おね…ちゃ…』


雷が落ちた…もう部屋には令美の姿はない



         ◇◆◇◆◇◆



「雨に濡れたくないから早く帰りたいんだけど…」

「…お前…」
雨が降り続ける中、エドとアルは広場の様なとこで座り込んでいた…そこに傘をさした令美が
「雨降ってんのにここにいるってバカ?」
「…うっせぇ…帰りたきゃ1人で帰れよ」
力無くした2人は、令美の辛口にも反応しない…ニーナのことが原因なのは見て分かるが

  「だから言ったじゃん“気をつけて”って」

「っ⁉︎」
令美の一言に、地面を見ていたエドが令美を見た、令美は相変わらず仏頂面
「今、なんていった」
「…あの時、私言ったよね“タッカーには気をつけて”って…忠告したのにあんたがっ…」

令美の傘が地面に落ちた、エドに胸ぐらを掴まれたから…アルが止めようにもエドは離さない

「…お前っ‼︎知ってたのか‼︎ニーナが“ああ”なるって‼︎知っててお前は何もしなかったのか‼︎」

「兄さんっ‼︎」

全ての怒りを令美にぶつけたエド、タッカーへの怒り、令美への怒り、自分の無力さへの怒りを叫び令美を攻めた

「…勘違いしないで、あのクズの考えなんて知る訳ないでしょ…嫌な感じがしたから忠告したの」
「レイミさん…」

「殺さないって約束したから…


    だからエドに任せたんじゃない…」

令美は強い目や言葉にエドは何も言い返せなかった、エドの力は弱まり令美は服装を整えて傘を拾った
「…レイミさん」
「…先に帰る」


次の日令美が起きた時にはエド達の姿はなかった、帰ってきたのかも不明だが

「借り…返さずに終わりかな」
本当はこの数日街を周り興味のあるものを探していた令美、そして兄弟との旅を終わらせる気でいた…でも街を見て周っても何にも興味惹かれなかった…だからもう少し兄弟と旅を続けようと思ったが…昨日の事があってはもうダメなのだと思った令美

「自由ってもの、退屈…」



          ◇◆◇◆◇◆




「帰ったらレイミさんにちゃんと謝ってよ兄さん」
「………分かってるよ」
気まずさMAXなエドは逃げるかのように朝早く宿を出た、令美に八つ当たりし、正論を言われ…しかも令美はエドの言った事を守ってくれていた…完全にエドが悪い

「…ちゃんと謝るよ」

令美から逃げてきたが目的がない訳でもないエドは司令部に行き、タッカーのことをきいた

結論から言うにタッカーと合成獣のニーナは殺された…まるで内部から爆破されたようにバラバラとなって

犯人は特定されていた、

        “傷の男”(スカー)

獲物も目的も不明の額に大きな傷がある男、今年に入って国家錬金術師が、国内で10人も殺された

スカーはタッカーを殺し…今もまだこの街にいる





「エドワードさん‼︎
       エドワード・エルリックさん‼︎」

司令部から出て、大通りの時計台の下、雨がまだ降る中エド達は気持ちの整理をしていた…そこに軍人がエドを呼んだ
「あぁ無事でよかった!捜しましたよ‼︎」
「何?オレに用事?」
「至急本部に戻るようにとの事です…実は連続殺人犯がこの…」
軍人ば最後まで話せなかった、その後ろに背の高い色黒の男がいたから

「…エドワード・エルリック…鋼の錬金術師‼︎」

その男の額には傷があった…




アカシ-Tsukimi