
馬鹿の言葉ほど
「でぇぇぇぇ‼︎」
第五研究所に侵入したエドとアルは建物の中に入るため警備されてる入り口ではなく、排気口らしい小さな穴から入ることに…もちろん小さいためエドしか入れずアルは外で待っていたのだが…
「…にゃろォ〜‼︎ちっとは…おとなしく斬られやがってんだ…このデカブツ‼︎痛くしねェからよ‼︎」
「んな事言われても…」
待ち人アルの目の前に現れたのはアルと同様全身鎧姿…この研究所を守る敵とアルは戦っていた
「…アルみっけ、まだ終わってないじゃん」
[ 馬鹿の言葉ほど ]
ベラベラと喋りながら包丁を振り回してる敵に対してアルは冷静に避けて反撃する
「そこ、邪魔」
「え、ぎゃぁぁぁぁっっ‼︎」
そこに追撃かのごとく上から令美が飛んできたみたいに敵の頭を土台にして蹴りとばした
「え、レイミさん⁉︎どうしてここに⁉︎」
「…事情は警備の人から聞いた、怒ってたみたいだけど」
怒られる覚悟できてるエド達はいいのだが…“全く関係ありません”オーラ全開な令美は大丈夫なのだろうか…とアルは優しすぎる心配をする
「おっさんの言ってた真実の奥の更なる真実ってヤツ…気になるしね」
「(…レイミさん…最初から)」
アルは急に現れた令美に驚くのはもちろん、危ない場所に来た令美の危機感の無さにも
「野郎…頭が落ちちまったじゃねぇか…」
令美には色々聞きたいことがたくさんあるが敵が起き上がって鎧の中身を見て話は中断された
「その身体…」
「げっへっへっちょっと訳ありでなぁ…」
令美により頭を吹っ飛ばされた敵の中身はアル同様空っぽだった…下品に笑い方といい喋り方といい令美の嫌いな人種
「…そうだ昔話をしてやろう、おめぇも聞いた事あるだろう…バリーっつう肉屋の話だ…」
なぜか敵のバリーの昔話をきかされた
令美からしてみればどーでもいい話でバリーと言う肉屋が牛や豚だけでは我慢出来ず人間を解体して捕まり死刑になった…と言う話
「…てのが世の中に出回ってる昔話…ところがこの昔話には続きがあってよぉ…」
バリーの話はまだ続きバリーは表向き死んだ事になってるが研究所のガードマンになることを条件に生きながらえた…ただし肉体は取られ魂のみ鉄の身体に定着させて
「そう!今てめぇの目の前にいるこのオレ‼︎バリー・ザ・チョッパーとはオレの事だァ‼︎」
「「…誰?」」
長く派手に自分の事を説明したバリーだがアルも令美も全く知らず…盛り上げた(つもり)の空気は一気に静かになった
「ボク東部の田舎の生まれだから中央で有名だった人殺しの話なんて知らないし…」
「ぶぁ‼︎田舎者‼︎」
まさか自分を知らない人物がいるとは思わなかったバリーはショックを受ける
「そんなどーでもいい話はいいから、怖くもないし」
「なぁ⁉︎こいつも…ってお前誰だぁ⁉︎いつからいたぁ⁉︎」
「…こいつ馬鹿」
平然としている令美にバリーはまたもショック
「なんなんだこいつら…知らないにしたってオレの身体見てそれなりのリアクションってもんがあるだろうォ…ノリが悪いぞおめェら‼︎」
「敵にノリとか言われたくないんだけど」
バリーをもうすでに馬鹿扱いしている令美は馬鹿に冷たい
「うるせェ!もっとこう…“ギャー”とか“わー‼︎”とか“なんだその身体”とかよォ‼︎」
(かぱ)
「ギャーッ‼︎」
まるでお手本の様なリアクションをバリーはアルの鎧の中身を見てしてくれた
「わー‼︎なんだその身体‼︎変態‼︎」
「ううっ…傷付くなぁ…」
「アンタだって同じじゃない馬鹿」
いちいち叫ぶバリーにアルと令美は敵を前にしているのに呆れ気が抜けてしまう
「なんでェ死刑仲間かよビビらせやがって…」
「ボクは犯罪者じゃなーい‼︎」
何故かアルがバリーの仲間になってる…バリーの考えにアルは全力で拒否をする
「あァ?じゃあなんでそんなナリしてんだよ」
「ちょっと訳ありでね…生身の体が全消失した後にボクの兄が魂を錬成してくれたんだ…」
「(…そこまで言う必要ないと思うけど…)」
アルのご丁寧な説明、令美からすれば言い過ぎだと思った…馬鹿は余計な事しか言わないと知っているから
「…兄貴!げっへっへっへ、そうかい兄貴が‼︎」
下品に笑うバリーに令美の予感は当たってしまう
「何?」
「いや悪ィ悪ィところでおめェ兄貴を信頼してるか?」
「当たり前だよ命がけでボクの魂を錬成してくれたんだもん」
「…」
バリーの質問にアルは当然のように答える…そんなアルにバリーは楽しそうに言った
「おうおう兄弟愛ってのは美しいねェ…たとえ偽りの愛情だとしても…」
「(ほら、やっぱり…馬鹿な事しか言わない…)」
「…どういう意味?」
「おめェらは本当に兄弟なのかって事よ」
バリーの発言がイマイチ分かってないアル、兄弟の性格や身長の違いとかではなく…令美には何となく理解出来た
「…おめェよ…その人格も記憶も兄貴の手によって…人工的に造られた物だとしたら どうする?」
アルはあきらかに動揺した、バリーの言葉など考えた事が無かったから
「そ…そんな事あってたまるか‼︎ボクは間違いなくアルフォンス・エルリックという人間だ‼︎」
「げははははは‼︎“魂”なんて目に見えない不確かな物でどうやってそれを証明する⁉︎」
見て分かるアルの動揺にバリーは下品に笑い攻め立てる
「兄貴も周りの人間も皆しておめェをだましてるかもしれないんだぜ⁉︎そうだ!おめェという人間が確かに存在していた証拠は⁉︎肉体は⁉︎」
「…じゃああんたはどうなんだ⁉︎」
「アル落ち着きなさい、あんな馬鹿の言うことなんて聞かなくて…」
令美の忠告など聞こえないのかアル、しかもバリーの後ろから警備の軍人が銃を構えて現れた
「うっせえよ…」
バリーは容赦なく令美が力を使う前に軍人を斬り殺した
「『じゃああんたはどうなんだ?』だと?簡単な事だ‼︎」
「…最低」
どこの誰が死のうが令美は気にしないが…目の前で人が死ぬのは不快だ、バリーの足元にたまる血や動かなくなった人…人を殺したバリーは愉快に笑った
「オレは生きた人間の肉をぶった斬るのが大好きだ‼︎殺しが好きでたまんねェ‼︎我殺す故に我あり‼︎オレがオレである証明なんざそんだけで充分さァ‼︎‼︎」
言ってることはめちゃくちゃだがバリーの話にアルは放心状態…バリーに負けるはずがないアルがこんな状態ではどうなるか…令美はため息ひとつ…
「(まったくこの兄弟は…兄の方も大変そう…)」
とりあえず、令美はこのうるさく下品に笑う馬鹿を沈めたい…
「ゲハハハハ‼︎」
「…下品に笑わないで、不愉快!」
楽しそうに笑うバリーを令美は黙らせるため顔に蹴りを一発
「ダァ⁉︎なんだテメェ!可愛い顔して斬り殺されてェのか⁉︎」
「何それ意味わかんない、馬鹿の言葉って理解出来ない」
軽く挑発すればバリーは分かりやすく狙いをアルから令美に変えた、手持ちの包丁2本を合わせ音を響かせる
「テメェがその気ならまずはオメェから斬り殺してやるよォ〜」
「馬鹿に殺される訳ないでしょ、この私が」
令美は大振りで振り回すバリーの包丁を避けスキがあればバリーがバランスを崩すよう片足を引っかけたり頭の鎧をずらしたりなどバリーが怒り狂いそうな地味な攻撃をした
「くっそォ〜‼︎調子にのりやがって‼︎チマチマした攻撃しやがって〜‼︎」
「馬鹿相手に本気になるはずないじゃない」
「あァ〜‼︎殺す…お前だけは絶対殺してやる〜‼︎」
怒りのボルテージは最高潮、感情任せの攻撃は単調になり令美は絶対当たらない
「…たから馬鹿だって言ってんのよ、ノロマ」
上からご丁寧に振り下される包丁を回転する様によけ
「ぬゥ⁉︎」
回転の力を加えて令美は回し蹴りをバリーの胸元に当てた
「ガアアアッ‼︎」
完全に防御の油断をしていたバリーは令美の回し蹴りで吹き飛び壁にぶつかり
「少しおとなしくしてて」
「いてェ…ア?」
蹴り飛ばされたとき落としたバリーの包丁で令美は素早くバリーの右腕に飛ばして刺した
「なッ…なんだこれェ⁉︎」
肉体が無いので痛くないが壁に突き刺さった包丁はなかなか抜けない
「ぬ…ねけねェー‼︎バカ力女がァー‼︎」
包丁が抜けずに動けなくなったバリーは騒ぎだす…そんなバリーを無視して令美はアルの元へ向かう
「さっさと正気に戻って…アホ」
「…え…あ…レイミ…さん」
カツン…とアルの胸元を軽く叩いた令美によってアルは正気を取り戻した
「あの馬鹿は黙らせといた…いつ動き出すかわかんないけど…」
「え…」
「ぐおぉぉぉ‼︎ぬけろー‼︎こらァー‼︎」
動けないバリーを見たアルは驚いた…あれを令美がしたのか…まったく覚えてないから
「レイミさんが…やったんですか?」
「動きを止めただけ…なんてことない」
平然と令美は言うが、そんな力があるとは思えない…前に言っていたアリスを使ったのかアルは思考するが覚えてないのだから結論はでない
…それぼと先程の言葉はアルを深く傷つけた…
「…しっかりしなさい、あんな馬鹿の言葉間に受けるんじゃないわよ」
「…」
「…仕方ないから、あのチビ拾ってくるから〜後はまかせた」
「…でもレイミさん‼︎」
驚きと令美を独りで戦わせたことに落ち込んだアルは自然と視線を下に向けていた…でも令美がエドの所へ行くと言い慌てて止めようと顔を上げたが…もう令美はそこにいなかった…
(ガキン)
「‼︎」
令美がいなくなった、すぐ…アルの後ろからバリーが包丁で斬りつけた…アルはなんとか左腕で受けふせいだが…
「あァ〜‼︎あの女逃げやがって‼︎殺したかったのになァ〜…まぁいい…
動きがにぶいテメェを殺してやる…」
「…」
