…キモ



強く…綺麗な、あの炎が好きだった‥

 私はいつからあの炎が嫌いになったのだろう…



「…君が美少女と共にいるとは…明日は雨が降るのか?」
「うっせーな…こっちは色々あって大変だったての…」
東の中央についた令美達は駅でこの男、ロイ・マスタングに足止めをくらっていた、ロイはエドの隣にいる令美に気付くとニヤニヤ笑いエドを茶化す
「…何か事情が?」
「えっ…まぁ、ちょっと…」
ロイの隣の女性もアルに令美の事を聞くが、ハッキリ言って令美との関係をどう説明していいのかエドもアルも分かってない

「ちょっと」
エド達が困ってる中、それはもう太々しい声が空気を読む事なく話しかけた、令美だ
「…なんだよ」
「私、行きたいとこあるから別行動する、それじゃ」
相変わらずの決定事項に文句も言わせぬあっさりとした令美の発言にエド達は怒るより呆れた…
「1人で大丈夫ですか?レイミさん」
「平気、夜には帰るつもり場所も分かるから」

「待ちたまえ…」
令美が帰ってくると言って心配していたアルが少し安心した時、なんかわざとらしい決まった声が令美を止めた
「君のような少女がこの街で1人歩くのは危険だよ…君は“鋼の”の知り合いだろ?一緒に来たまえ」
令美が少女でも“美”少女だからか、エドの時とは違いキラキラな微笑みで令美に口説くように話かける



「…キモ」

…それは…令美の一言はロイに絶大な一撃を与えた、笑顔で固まるロイ、エドは吹き出しそうになった
「じゃ、私行くから」
「…おう」
ロイの存在など無かったように令美は行ってしまった、今だに固まるロイにアルやロイの部下の女性ホークアイ…ましてやエドにまで同情の目で見た

「…なんかイライラする…」


不機嫌な理由が分からぬまま令美は街の中へ


ここは『アメストリス』の東部…

     東部中央都市『イーストシティー』





         ◇◆◇◆◇◆




「随分と…変わった女性のようだな…君らの関係に口出しするつもりは無いが…鋼の、もう少し女性の見る目を変えるべきでは…」
「めちゃめちゃ口出ししてんじゃねーかよ」

東部の軍本部に移動してきてもロイの心はいまだに荒れ模様、令美に言われたあの一言に相当傷ついたようでエドに文句を言う

「…彼女まだ若いわよね…大丈夫なの?色々と」
「…それは」

「俺らと一緒だ…」
ロイの部下リザ・ホークアイがロイの事など気にもせず、令美の心配をする、同じ女性で独りなのはこの世で生きていくのは危険だから…
「そう…」
「あいつ自身まったく気にして無かったけどな…」
エド達の過去を知る彼らはエドの一言で令美も家族がいないことがわかるリザはますます表情を硬くし令美のことを心配してる

「…では彼女が君らと一緒に居る目的は?」
「全く知らねー、あいつ自分の事なんも話さねーし、訳分かんねー奴で…ナマイキで常に上から目線で、文句ばっか言いやがって…!」
「でも…悪い人じゃない、と思います」
彼女が危険人物かどうか、ロイは聞きたかったのだが…エドの愚痴やアルの優しさに危機感が削がれる

「…仕方ない、様子見だな…」



「そんな事より!」
その後、エドは汽車での一件でロイに貸し一つ作ることが出来、人体錬成に詳しい錬金術師を紹介してもらえるよう頼んだ



          ◇◆◇◆◇◆


そしてロイの紹介により合成獣錬成の研究者『綴命(ていめい)の錬金術師』ショウ・タッカーの所へ向かった、彼は2年前、人語を使う合成獣の錬成に成功させ国家錬金術師の資格を取った

エド達は数日タッカーさんの家に通いつめようと思っていた、いや思った…それぼどの錬金術についての本があったから、研究者としてコレを見ない訳にはいかない

「何やってんの?」
読書なんて興味ないと言ってエド達に付き合うことなく令美は毎日街をブラブラしてたのだが…聞き覚えのある叫び声に、一軒家の庭をのぞけば、大型犬に下敷きにされてるエドを発見
「おまっ!…なんで此処にいんだよ…」
「偶然、通っただけ」

今の姿が見られて恥ずかしいのかエドは令美と目を合わせない、犬も退かない
「何?本読むとか言ってたのに、子供だから外で遊んでたの?」
犬が退かないことをいいことに令美が好き放題エドをあざ笑ってる、エドがキャンキャンうるさい中、アルが小さい女の子と一緒にこっちへ来た
「レイミさん‼︎来てたんですね」
「遊んでた」
エドを指さす令美の返事にエドは益々うるさく、アルは苦笑い(してるように見える)

「本読むって言ってなかった?」
「はい、今は休憩中で…ニーナとアレキサンダーに遊んでもらってるんです」
「…そう」
聞いておいてあまり興味がない令美は寝転んでるエドに足で砂をかけてる(容赦ないよ、レイミさん…)

ニーナが気まずそうにアルを触った、令美とお話ししたいのか…それとも怖がってるのか
「レイミさん、彼女はタッカーさんの娘さんのニーナです…ニーナ、彼女はレイミさんボク達と…旅仲間、かな?」
令美とニーナの仲介役をしようとしたアルだが令美との関係をどう言えばいいのか分からずイマイチな説明になってしまった、エドからは“コイツは仲間じゃねー‼︎敵だーー‼︎”と叫ぶ声がきこえる

「…レイミ…おねーちゃん?」
ニーナが勇気をもって令美を呼べば、令美はニーナと目線が合うようにしゃがんだ
「ニーナ、いい子ね…とても強い子」
令美のことだから子供相手でも容赦しないかと思ったエド達、だが令美は優しくニーナの頭を撫でた…ニーナはとても嬉しそうに笑った

「これ、あげる…ニーナお花すきでしょ」
「好き‼︎わぁ…きれーありがとう‼︎レイミおねーちゃん‼︎」
何処からか出したか分からないが令美はニーナに色あざやかなブーケをあげた

「じゃあ私行くから、あいつが暴れる前に…」
「おねーちゃん行っちゃうの?」
確かに令美がニーナに優しくしてる時は物凄く驚いていたエドだが怒りを忘れた訳ではなさそうだ…令美はニーナの頭を撫でた

「…気をつけて」



令美は動けないエドを鼻で笑った、なんとしてでも令美に一発食らわせたいエドは必死にもがくが動けない
「優秀な犬ね、あなたが守ってあげなさい…」
「?」

令美の言ってる事が理解出来ない…と言うかコイツ、アレキサンダーに話かけてんのか?とエドはまた令美の不思議度が上がった
「エド」
ドキリ、とした…名前を呼ばれたからか…

「…タッカーには気をつけた方がいい…」



令美が行ってしまった後アレキサンダーがどいた…あれだけ退かなかったのに、そういえばアレキサンダーは令美には一度も触れてない人懐こい犬なのに…
「あいつ…」
「レイミさん…毎日どこに行ってるんでしょう」
「俺が知るかよ…」

 “なんでタッカーさんを…
        気をつけなきゃいけねーんだ”










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