今日は雨が降るから









その日は朝から曇り…午後には雨が降りそうな天気
「今日も行くの?」
「まだ読んでない本があるからなー」
もう出掛けるエド達を令美は嫌な予感がした…令美は思い出す…あの家を見た時の男の感情を…

「…そう、なら気をつけて行くことね

        今日は雨が降るから…」

「…あぁ…」
令美がエド達に“気をつけて”など言うことなかったのに、戸惑いながらもエド達はタッカーの所へ行った

「(…本当嫌な天気)」


そして、エドとアルはタッカーの家で、タッカーが錬成した“人語を理解する合成獣”を目にする…合成獣は一見普通の犬に見えたが、確かに人の言葉を理解して話した

ニーナとアレキサンダーの姿は無かった

『こんな事が許されると思ってるのか⁉︎

  こんな…人の命をもてあそぶような事が‼︎』

『鋼の錬金術師、君の手足と弟…

それも君が言う“人の命をもてあそんだ”結果だろう⁉︎』

エドはタッカーを殴った

『同じだよ…君も私も』

       『ちがう‼︎』

エドは笑うタッカーを殴った、タッカーとは同じじゃない…タッカーとは違うから…何度も

悲しい顔で

『兄さん…それ以上やったら死んでしまう』
止めたのはアル、タッカーの顔はボロボロで、だけど彼は笑い…
『ははっ…きれいごとだけでやっていけるかよ…』
『…タッカーさん…
  これ以上喋ったら今度はボクがブチ切れる…』

アルは合成獣になってしまった、ニーナとアレキサンダーに近づき…
『ニーナ…ごめんね…』
元に戻すことも、何も出来ないアルは謝る事しか出来なかった…合成獣が“あそぼう”と言い続ける中で…


「やっぱりね…クズだと分かってたけど、ここまでするなんて…本当にクズね」
外は雨が降り始め、タッカーの家にはエド達の姿はなかった
「…君は誰だ…」
合成獣の前に姿を現した令美、タッカーには急に現れたように見え驚いた
「あんた賢い子だったけどね…やっぱり私が殺しとくべきだった…」

「わっ…私を殺すつもりか‼︎」
「あんたなんかもう殺す価値もない」
タッカーが令美に怯えるが、令美はタッカーを見ることすらない

『…おね…ちゃん…』

「安心して、私はあの兄弟のせいでそーゆー事はしないから…元々嫌いだったし」
タッカーは怯えてつづけ合成獣のニーナはおねーちゃんとしか言わない

「…コレは、私の力でも無理ね…」
令美は合成獣の頭に花冠をのせた、ニーナは花が好きで喜んでる
『…おは…な』

「さようなら、ニーナ」

    『…あり…とう…おね…ちゃ…』


雷が落ちた…もう部屋には令美の姿はない






        ◇◆◇◆◇◆









「雨に濡れたくないから早く帰りたいんだけど…」

「…お前…」
雨が降り続ける中、エドとアルは広場の様なとこで座り込んでいた…そこに傘をさした令美が
「雨降ってんのにここにいるってバカ?」
「…うっせぇ…帰りたきゃ1人で帰れよ」
力無くした2人は、令美の辛口にも反応しない…ニーナのことが原因なのは見て分かるが

  「だから言ったじゃん“気をつけて”って」

「っ⁉︎」
令美の一言に、地面を見ていたエドが令美を見た、令美は相変わらず仏頂面
「今、なんていった」
「…あの時、私言ったよね“タッカーには気をつけて”って…忠告したのにあんたがっ…」

令美の傘が地面に落ちた、エドに胸ぐらを掴まれたから…アルが止めようにもエドは離さない

「…お前っ‼︎知ってたのか‼︎ニーナが“ああ”なるって‼︎知っててお前は何もしなかったのか‼︎」

「兄さんっ‼︎」

全ての怒りを令美にぶつけたエド、タッカーへの怒り、令美への怒り、自分の無力さへの怒りを叫び令美を攻めた

「…勘違いしないで、あのクズの考えなんて知る訳ないでしょ…嫌な感じがしたから忠告したの」
「レイミさん…」

「殺さない…約束したから…


    だからエドに任せたんじゃない…」

令美は強い目や言葉にエドは何も言い返せなかった、エドの力は弱まり令美は服装を整えて傘を拾った
「…レイミさん」
「…先に帰る」


次の日令美が起きた時にはエド達の姿はなかった、帰ってきたのかも不明だが

「借り…返さずに終わりかな」
本当はこの数日街を回り興味のあるものを探したが全然ダメ、何にも惹かれなかった…あの兄弟とずっと旅をするつもりはなかったから

「自由ってもの、退屈…」



「帰ったらレイミさんにちゃんと謝ってよ兄さん」
「………分かってるよ」
気まずさMAXなエドは逃げるかのように朝早く宿を出た、令美に八つ当たりし、正論を言われ…しかも令美はエドの言った事を守ってくれていた…完全にエドが悪い

「…ちゃんと謝るよ」

令美から逃げてきたが目的がない訳でもないエドは司令部に行き、タッカーのことをきいた

結論から言うにタッカーと合成獣のニーナは殺された…まるで内部から爆破されたようにバラバラとなって

犯人は特定されていた、

     “傷の男”(スカー)

獲物も目的も不明の額に大きな傷がある男、今年に入って国家錬金術師が、国内で10人も殺された

スカーはタッカーを殺し…今もまだこの街にいる








アカシ-Tsukimi