任せたんじゃない






「雨に濡れたくないから早く帰りたいんだけど…」

「…お前…」
雨が降り続ける中、エドとアルは広場の様なとこで座り込んでいた…そこに傘をさした令美が
「雨降ってんのにここにいるってバカ?」
「…うっせぇ…帰りたきゃ1人で帰れよ」
力無くした2人は、令美の辛口にも反応しない…ニーナのことが原因なのは見て分かるが

  「だから言ったじゃん“気をつけて”って」

「っ⁉︎」
令美の一言に、地面を見ていたエドが令美を見た、令美は相変わらず仏頂面
「今、なんていった」
「…あの時、私言ったよね“タッカーには気をつけて”って…忠告したのにあんたがっ…」

令美の傘が地面に落ちた、エドに胸ぐらを掴まれたから…アルが止めようにもエドは離さない

「…お前っ‼︎知ってたのか‼︎ニーナが“ああ”なるって‼︎知っててお前は何もしなかったのか‼︎」

「兄さんっ‼︎」

全ての怒りを令美にぶつけたエド、タッカーへの怒り、令美への怒り、自分の無力さへの怒りを叫び令美を攻めた

「…勘違いしないで、あのクズの考えなんて知る訳ないでしょ…嫌な感じがしたから忠告したの」
「レイミさん…」

「殺さない…約束したから…


    だからエドに任せたんじゃない…」

令美は強い目や言葉にエドは何も言い返せなかった、エドの力は弱まり令美は服装を整えて傘を拾った
「…レイミさん」
「…先に帰る」


次の日令美が起きた時にはエド達の姿はなかった、帰ってきたのかも不明だが

「借り…返さずに終わりかな」
本当はこの数日街を回り興味のあるものを探したが全然ダメ、何にも惹かれなかった…あの兄弟とずっと旅をするつもりはなかったから

「自由ってもの、退屈…」




◇◆◇◆


「帰ったらレイミさんにちゃんと謝ってよ兄さん」
「………分かってるよ」
気まずさMAXなエドは逃げるかのように朝早く宿を出た、令美に八つ当たりし、正論を言われ…しかも令美はエドの言った事を守ってくれていた…完全にエドが悪い

「…ちゃんと謝るよ」

令美から逃げてきたが目的がない訳でもないエドは司令部に行き、タッカーのことをきいた

結論から言うにタッカーと合成獣のニーナは殺された…まるで内部から爆破されたようにバラバラとなって

犯人は特定されていた、

     “傷の男”(スカー)

獲物も目的も不明の額に大きな傷がある男、今年に入って国家錬金術師が、国内で10人も殺された

スカーはタッカーを殺し…今もまだこの街にいる






「エドワードさん‼︎
       エドワード・エルリックさん‼︎」

大通りの時計台の下、雨がまだ降る中エド達は気持ちの整理をしていた…そこに軍人がエドを呼んだ
「あぁ無事でよかった!捜しましたよ‼︎」
「何?オレに用事?」
「至急本部に戻るようにとの事です…実は連続殺人犯がこの…」
軍人ば最後まで話せなかった、その後ろに背の高い色黒の男がいたから

「…エドワード・エルリック…鋼の錬金術師‼︎」

その男の額には傷があった…





     ◇◆◇◆◇◆


「っ!」

エド達が帰ってくる前に出て行こうか…令美は久々にアリス学園の制服に身を包み準備していた…だけど…
「…なるほど、人助けは“借り”を返すチャンスかもね…見てくれは強そうだしいいじゃない」
宿の中、令美はエド達を“見てた”…傷の男(スカー)のことも知っている、街を回ってる時に“聞いた”ことがある

令美は予定を変更して窓を開けて身を乗り出し外へ出る
「…私が行く前に死んだらあざ笑ってやろ」



        ◇◆◇◆◇◆




「兄さん‼︎」
エドとアルは逃げていたが、結局スカーを相手にしないと、いけなくなり…初めにアルの鎧が壊された…

アルの中身にスカーは少し驚いていたが、スカーの目的はエドで…エドの右腕のオートメイルは…

破壊された

「神に祈る時間をやろう…」
「あいにくだけど祈りたい神サマがいないんでね」
アルも動けず、エドも右腕が無くなり錬成出来ない状態ではスカーに勝つことも、逃げる事もできない
「…あんたが狙ってるのはオレだけか?弟アルも殺す気か?」
「邪魔する者があれば排除するが今、用があるのは鋼の錬金術師…貴様だけだ…」
スカーの言葉で令美の事は知らないようすで、エドは少し安心した
「そうか…じゃあ約束しろ、弟には手を出さないと…」
「兄…」

「約束は守ろう…」

エドはアルをおいて逃げる事は出来なかったら…

「何言ってんだよ…兄さん何してる!逃げろよ‼︎
立って逃げるんだよ…やめろ…やめてくれ…

やめろぉぉぉおおお‼︎‼︎」

アルが叫びエドは動かず…スカーがエドに触れる前に…



「随分とボロボロになってる…でも生きてるね」

「っ‼︎」
「…レイミ…さん」
3人の前に現れた令美は、いつも通り過ぎるぐらい軽く乱入してきた
「…お前…何でここに…」
「“借り”を返しに来たの…違う言い方なら

“助けに来た”ってやつ?」

令美は笑った、エド達が驚き、スカー令美を睨みつけようと
「…邪魔をするのか…」
「その兄弟を殺されると私が一生借りを返せないじゃん、そーゆーの嫌いなんだよね」

「やめろ‼︎」
邪魔する者は殺すと言ったスカーは相手が女でも殺すのだろう、エドは令美を止めたい
「そいつは違う!手を出すな‼︎」
「もう遅い」
スカーはエドの言葉に従わず令美の元は走り出す
「レイミさん‼︎」

「…逃げろ‼︎レイミ‼︎」


「水に圧力を加えると“銃”にもなるのよ
            知ってる?傷男…」

(ブスっ…)
  「⁉︎…なっ…にっ…‼︎」
令美は子供のオモチャである水鉄砲をスカーに向けて、打った…無害な筈のその水鉄砲はスカーの肩を撃ち抜いた

「…なんだ今のは…」
「レイミさん…」




肩を撃たれ動きが止まったスカーもエド達も令美が持っている水鉄砲に驚いている

「殺しはしない…殺されもしないけどね」
肩を撃たれてもピンピンしてるスカーに令美はこちらに来られる前に打つ
「…へぇ…理解もしてないのに避けるなんてね」
「何であれ、邪魔する者は殺す」
何発か撃ってもスカーは全て避けてみせた…化け物みたいだと令美は思った

アリスを見せる気はなかったがスカーは完全に令美を排除しようとしている、少しはエドから気が逸れるのが狙いだ
「(こんな雑魚すぐやっつけれるのに…殺さないのって意外と大変なんだ)」

意外な発見に令美はどうするか考えるが次はスカーが行動をはじめた
「撃たれてるのに、めんど」
素早く動くスカーに令美の水の弾は当たる事なくスカーが近づいてくる

「レイミ‼︎」
「図体デカいくせに、すばしっこい‼︎」
もう一つの水鉄砲を出して一発ではなく数発打ってもスカーは予想してたのか
「フンッ‼︎」
スカーは地面を破壊して、その破片を上手く壁にして自分の身を守った
「…馬鹿力…!」

「…これで、終わりだ」

わざと地面を破壊した時土煙がたつようにしたのだろうスカーは一瞬で令美の背後にまわり、その頭を壊すため右手が触れようとしたが

「…残念」

“カチャ…”と気がつけば目の前に令美はいなくなり、何故かスカーの背後にいて頭に水鉄砲を向けられた
「っ⁉︎」
「はい、おしまい」

   (ドン‼︎)






















アカシ-Tsukimi